妊娠すると、出産まで数ヶ月に及ぶため、その間に体調がよければ飛行機で実家に帰ったり、遠出をしたりしたいと思う方もおられるのでは?
しかし、本当に妊娠中に飛行機に搭乗しても大丈夫なのでしょうか?
日本航空(JAL)のホームページでは、「旅行前に航空機旅行が可能かどうか主治医に相談」「合併症があった場合は、担当の先生に相談」「最も旅行に適しているのは、安定期である妊娠12週から28週頃まで」という記載がありました。
航空会社は上記のように説明していますが、実際に臨床現場にいる産婦人科医はどう考えているのでしょうか?
現役産婦人科医150名に妊娠中の飛行機について詳しく聞いてみました!
※ 本調査は医師専用コミュニティサイト「MedPeer(https://medpeer.jp/)」にて2017年10月25日から同年10月27日にかけて行われ、産婦人科医150名から回答をいただきました。

集計結果では、妊娠期間中でも「主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい」とする意見が最も多く、次に「妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい」が続きました。
一方で、2割近い医師が、「飛行機搭乗はやめたほうがよい」とあり、医師のなかでも見解がわかれるところのようです。
それでは、票数が多かった順に1つ1つコメントを見ていきましょう。
主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい
- 50代女性 産婦人科 主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい
海外の航空会社では主治医の診断書が必要なところがあります。国内では満期の妊婦は原則搭乗できないはずです。満期でなければ状態が落ち着いていること(「安定期」という概念は一般用語で医学的でありません)血栓塞栓のリスクを了解していることを確認しますが、あくまで自己責任で搭乗です。飛行機を予定外に着陸させることはあってはならないので。 - 60代女性 産婦人科 主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい
最終的には航空会社の規定に抵触しなければ、自己判断で搭乗しても問題ないとおもいますが、出来れば主治医の意見を聞いてから決めてもらうとトラブルは少ないと思います。 - 50代女性 産婦人科 主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい
主治医が許可すればよいとは思うが、可能な限り飛行機搭乗は、避けてほしいです。やめたほうがよい、とはいいきれないので、搭乗してもよい、と回答しますが。 - 50代男性 産婦人科 主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい
主治医でも何が起こるか分かりませんが、直前の健診で異常がないかどうか、(切迫)早産の既往がないかなどから主治医が判断すべきだと思います。
最も多かった「主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい」という回答ですが、コメントには「血栓塞栓のリスクを了解していることを確認します」といった妊婦さん側のリスクへの理解や「直前の健診で異常がないかどうか、(切迫)早産の既往がないかなどから主治医が判断」、「満期でなければ」といった経過が順調なことなどの条件が見受けられました。
主治医の許可といえども、医師側が細心の注意を払い、リスクが少ない状態だと判断して許可していることを妊婦さん側も念頭におくことが大事そうです。
妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい
- 40代女性 産婦人科 妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい
切迫早産や前置胎盤などは問題外ですが、そう言った合併症がなければ36週くらいまでは問題ないです。 ただし経産婦は陣痛、破水開始後から分娩までが初産婦に比べて早いので、国内でも34週くらいまででやめておいてもらいたいですね。 - 60代男性 産婦人科 妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい
妊娠後期になると明らかにお腹が大きくなり多くのエアラインは医師の診断書がないと搭乗を認めてくれません。その時期以内であれば特に制限はないと考えます。 - 50代男性 産婦人科 妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい
一般的な陣痛や破水がおこる10ヶ月でなければよいと思います。もちろん10ヶ月前であっても早産の可能性が高いような妊婦には控えてもらいますが。 - 60代男性 産婦人科 妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい
勿論必要性が低ければ、搭乗はやめたほうがいいと思います。しかし、妊娠週数(12週~32週)や正常な経過をとっていればOKと思います。
こちらは、合併症などがなく、出産間近の状況でなければよいとするコメントが多かったように思います。
時期を心配する方は、「妊娠週数(12週~33週)や正常な経過をとっていればOK」や「国内でも34週くらいまででやめておいてもらいたい」などを参考にしてもらうのがよいでしょう。
飛行機搭乗はやめたほうがよい
- 40代女性 産婦人科 飛行機搭乗はやめたほうがよい
はっきりいって機内で何かあっても責任持てないので、自分の観ている妊婦は基本的に時期に関わらず禁止にしています。それでも搭乗する場合は自己責任でと話しています。旅行に適している時期とか記載があるのでしょうか? - 60代女性 産婦人科 飛行機搭乗はやめたほうがよい
駄目な場合はどんなに気を付けてもダメだと思うし、大丈夫な場合はどんなことをしても無事出産となると思います。ただ、上空は放射線を受けるので妊娠時には、長時間はお勧めはしていません。 - 30代女性 産婦人科 飛行機搭乗はやめたほうがよい
だいたいの人は何もないけど、多少は破水のリスクがあります。よく外来でいいですか?と聞かれるけど、今何もないから、乗って何もないとは言えない、自己責任でと伝えています。 - 50代女性 産婦人科 飛行機搭乗はやめたほうがよい
フライト中に何だかのトラブルがあった場合、ほかの乗客に迷惑が掛かるので、不必要な飛行機搭乗はやめたほうがいいと思います。
こちらを回答した医師は、「フライト中に何だかのトラブルがあった場合、ほかの乗客に迷惑が掛かる」、「機内で何かあっても責任持てない」といった、万が一機内で何か起こることを懸念する医師が多くみられました。
確かに他の乗客もいると念頭におくことは大事ですよね。
また、「上空は放射線を受けるので妊娠時には、長時間はお勧めはしていません」とあるように、飛行機は少なからず放射線の影響があるという知識も頭の片隅におくことは大事そうです。
飛行機搭乗に制限はない
- 50代女性 産婦人科 飛行機搭乗に制限はない
飛行機搭乗に大きな問題はないと思いますが長距離移動することが問題だと思います。 - 50代男性 産婦人科 飛行機搭乗に制限はない
トラブルが起こったときは自己責任という注釈付きですが。 - 40代男性 産婦人科 飛行機搭乗に制限はない
飛行機会社の規定でいいと思います。
制限はないと回答した医師でも、「飛行機会社の規定で」や「トラブルが起こったときは自己責任」、「長距離移動することが問題」というように条件付きのコメントがみられました。
飛行機搭乗にOKが出ても、注意点があることは念頭におきましょう。
妊娠中の飛行機は、慎重に検討しましょう
本調査では、妊娠期間中でも「主治医が許可すれば、飛行機に搭乗してもよい」とする意見が最も多く、次に「妊娠の時期に注意すれば、自己判断で飛行機に搭乗してもよい」が続きました。
一方で、2割近い医師が、「飛行機搭乗はやめたほうがよい」とあり、医師のなかでも見解がわかれるところのようです。
全体を通して、妊娠中の飛行機は、いろいろと配慮することがあるため、慎重に検討することが大事そうです。