赤ちゃんの頭にカップをつける吸引分娩のリスク・合併症とは?産婦人科医120名に聞きました

分娩直後の赤ちゃん
吸引分娩で母体におきうる合併症として、膣壁裂傷(ちつへきれっしょう)と会陰裂傷(えいんれっしょう)がほぼ同率で支持を集め、赤ちゃんへの合併症として、頭血腫(とうけっしゅ)・帽状腱膜下出血(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)・産瘤(さんりゅう)が上位という結果になりました。吸引分娩は、一刻を争う場面でリスクよりメリットが上回る時に行うもので、避けられない場面もあることから、心配な方はあらかじめ主治医に確認することをお勧めします。
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皆さんは、出産する際に吸引分娩(きゅういんぶんべん)という方法をとられることがあるって知っていましたか?
日本産科婦人科学会の資料では、以下のように吸引分娩の方法が説明されていました。

胎児頭部に吸引カップを陰圧をかけることにより吸着させ,カップの柄(牽引ハンドル)を牽引することにより胎児を娩出させる.

引用:8.吸引分娩 - 日本産科婦人科学会 

このように出産の際、赤ちゃんの頭に吸引するためのカップをかけて吸着力を利用して引っ張り出す方法のようなのです。
しかし、赤ちゃんを人為的に引っ張り出すということは、リスクや合併症などは大丈夫なのでしょうか?
今回は、吸引分娩のリスク・合併症について産婦人科医122名に聞きました!

※ 本調査は医師専用コミュニティサイト「MedPeer(https://medpeer.jp/)」にて2017年9月21日から同年9月25日にかけて行われ、産婦人科122名から回答をいただきました。

まずは、吸引分娩を行うにあたり、母体にどんなリスク・合併症があるのか聞きました。

吸引分娩で母体に多い合併症は、膣壁裂傷・会陰裂傷

図1
  • 50代男性 産婦人科
    急速に分娩を進めるのであるから、母体や胎児に傷害を与える可能性はあります。それを上回る利益がある場合のみ行うべきです。
  • 60代女性 産婦人科
    吸引分娩が必要なときは結構ざっくり会陰切開を入れることも多く、分娩終了後の縫合が大変なことも多かったです。
  • 40代女性 産婦人科
    会陰裂傷以外は、頻度は低いですが、自然分娩よりも産道裂傷のリスクが上がることは事実です。
  • 60代男性 産婦人科
    重篤な合併症の経験はないのですが、吸引分娩を必要とする状況から会陰切開は必須です。
  • 80代男性 産婦人科
    会陰切開をするので、会陰裂傷は少ないですが、経管や膣壁の裂傷を時に経験します。
  • 50代男性 産婦人科
    骨盤底筋群への侵襲により数年後の骨盤臓器脱や尿失禁が懸念されます。

集計結果では、吸引分娩で母体におきうる合併症として、膣壁裂傷(ちつへきれっしょう)と会陰裂傷(えいんれっしょう)がほぼ同率で支持を集めました。

膣壁裂傷・会陰裂傷とは、日本産科婦人科学会が開示している資料によれば、以下のように説明されていました。

腟・会陰裂傷
分娩時,児頭や躯幹が腟・会陰を通過する際に裂傷が生じるが,会陰裂傷は最も生じやすい裂傷である

引用:10.異常分娩の管理と処置 - 日本産科婦人科学会

つまり、赤ちゃんが生まれてくるためにお母さんの体内を通る過程の中で、膣や会陰といった部分が破れてしまうことを指すようなのです。
「会陰切開(えいんせっかい)をするので、会陰裂傷は少ない」とあるように、そういった破れてしまうことを防ぐ目的で、会陰切開(えいんせっかい)、つまり少し切って赤ちゃんの出口を広げる方法をとることが多いようでした。
ほかに「数年後の骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)や尿失禁(にょうしっきん)」というコメントもありましたが、吸引分娩の合併症として、骨盤のまわりの筋肉が緩み、将来の尿もれなどになる可能性があるようでした。

骨盤臓器脱については、以下の大学サイトの説明を参考にしてください。

骨盤臓器脱とは

女性の骨盤の底には、骨盤底筋群という筋肉がハンモック状に張られていて、骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)が落ちないように支えています。
またこの骨盤底筋群が収縮することによって、尿道や膣そして直腸が締まり尿や便が漏れない仕組みになっています。
しかし、何らかの原因によって骨盤底筋群が傷ついたり緩んだりすると尿や便が漏れてきたり、支えが失われたことで骨盤内臓器が膣をめがけて落ちてきて、膣口から脱出することがあります。
これが骨盤臓器脱です。日本ではまだ正確な頻度は報告されていませんが、お産を経験された女性の約半数が、生涯のうちに何らかの形の骨盤臓器脱を生じるとされるほど多い疾患です。
骨盤臓器脱は性器脱とよばれることもあります。

引用:骨盤臓器脱 | 秋田大学大学院医学系研究科 腎泌尿器科学講座

また、「自然分娩よりも産道裂傷(さんどうれっしょう)のリスクが上がる」というコメントもありましたが、「それを上回る利益がある場合のみ行う」とする医師の意見もあり、医師側も吸引分娩を選ぶなりの理由があるようでした。

次に、吸引分娩の胎児への影響について聞きました。

吸引分娩で胎児に多い合併症は、頭血腫・帽状腱膜下出血・産瘤など

図2
  • 40代女性 産婦人科
    自然分娩と異なり、吸引圧をかけますので、独特の合併症が起こり得るのは事実ですが、自然分娩を待っている余裕がない場合に行う手技ですので、何ともリスクの判断が難しいところがあります。
  • 60代女性 産婦人科
    児頭の変形は、吸引をかける前にすでに起こっていて、吸引はそれを増強していると思います。
  • 50代女性 産婦人科
    産婦人科医ならば誰でも(経験が)あると思いますが、まだ障害の残るような例は自分では経験していません。
  • 80代男性 産婦人科
    産瘤は少し大きくなることはありますが 本人・家族に説明して数日で軽快します。
  • 30代女性 産婦人科
    それよりも、心音が落ちている時にはやく娩出させてあげるメリットの方が勝ります。
  • 40代男性 産婦人科
    やはり血腫もできやすいですが、最終的には児の頭の形とは関係ありません。
  • 40代女性 産婦人科
    児頭に吸引カップを装着するので、血腫や産瘤は増大する可能性があります。
  • 50代男性 産婦人科
    適応、手技、手技の中断基準等を順守することで児合併症の発症はまれです。

こちらの調査では、吸引分娩の赤ちゃんへの合併症として、頭血腫(とうけっしゅ)・帽状腱膜下出血(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)・産瘤(さんりゅう)が上位という結果になりました。
1つ1つの用語に関しては、以下の産婦人科医の方が個人で運営しているブログで後半にわかりやすい説明がありますので、参照してみてください。

<参考>
急速遂娩(きゅうそくすいべん)とは? - ある産婦人科医のひとりごと

医師のコメントでは、「児頭に吸引カップを装着するので、血腫や産瘤は増大する可能性があります」とありましたが、カップで頭を吸うことで、こうした頭血腫や産瘤などができてしまうようでした。

一方で、「まだ障害の残るような例は自分では経験していません」、「本人・家族に説明して数日で軽快します」という医師の意見もあるように、重い合併症にはなりにくいようでした。

ただし、「手技、手技の中断基準」もあるようで、状況によっては全く危なくないわけではなさそうです。

心配な方は、あらかじめ主治医に吸引分娩の合併症や行うメリットについて確認することをお勧めします。

吸引分娩は、一刻を争う場面でリスクに比べてメリットが上回る時に行うもの

本調査によれば、吸引分娩で母体におきうる合併症として、膣壁裂傷(ちつへきれっしょう)と会陰裂傷(えいんれっしょう)がほぼ同率で支持を集め、赤ちゃんへの合併症として、頭血腫(とうけっしゅ)・帽状腱膜下出血(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)・産瘤(さんりゅう)が上位という結果になりました。

吸引分娩は、自然な出産に比べてリスクや合併症が伴うようですが、一刻を争う場面に遭遇したとき、リスクに比べてメリットが上回る時に行うものであり、避けられない場面もあることから、心配な方はあらかじめ主治医に確認することをお勧めします。

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