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高齢者の多剤内服は薬を減らした方がよい 医師3500人にアンケート調査

薬
本調査では、医師の6割強が「薬の種類を減らす」とコメントしました。複数の科、複数の病院に受診していると薬が多くなりやすいようで、まずはポリファーマシーの意識を持つことからはじめることが大事そうです。ご両親や親戚の方の服用している薬が多いと感じたら、担当の医師や薬剤師に相談しましょう。
医療の現場
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あなたは、親戚やご両親がどれくらい薬を飲んでいるか確認したことはありますか?
高齢になってくると病院に受診する回数が増えてきます。
ここで1つ問題になってくるのが、薬があまりにも増えすぎたケースです。
よくあるのは、例えば内科、整形外科、泌尿器科と複数の科を受診し、気づいた時には処方された薬が10種類以上だったという状況です。
こうした現在の病状に比べ、必要以上に多くの薬を内服している状態のことを「ポリファーマシー」と言います。
厳密に定義されているわけではないのですが、一般的には概ね5種類以上の薬を飲んでいて、薬同士がお互いにバッティングしてしまうなど有害事象を起こし、不利益をこうむる可能性が心配される状態のことです。
今回、こうした「ポリファーマシー」と呼ばれる問題について、医師が実際どう対応しているのかアンケート調査を行いました。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2016年3月21日〜3月27日にかけて行われ、医師3587名から回答を頂きました。

医師の6割強が「薬剤の種類を減らす」と回答

本調査では、こうしたポリファーマシー(多剤併用)の対応について、実際の診療でどうしているのかお聞きしました。
医師の方々ご自身の状況と近いものを、以下の選択肢から選んでもらい、コメント欄にはこれまでの経験や考えについて記載してもらいました。

  1. 薬剤の種類を減らす
  2. 投与量を減らす
  3. 投与間隔を延長する
  4. そのまま
  5. その他

※複数選択可

結果が、以下の図になります。

図1

調査からは、6割強の医師が薬剤の種類を減らそうと対応していることがわかりました。

それでは、医師のコメントを見て行きましょう。

  • 50代男性 家庭医療
    入院時には幾つかの医療機関で処方されている薬剤を調べ、必要に応じて内服してもらっていますが、減薬や休薬が必要な場合(重複に近い処方も時にあります)は、内服を中止します。このこと自体かなり面倒ですが、さらに退院時にその旨を記載した診療情報提供書も記載するため、更に事務作業が増加します。医療機関受診時には、患者さん自ら率先して薬剤手帳を活用してほしいものです。
  • 40代女性 リハビリテーション科
    当方回復期リハビリテーション病棟担当です。食事療法・運動療法がほぼ完璧という状況に放り込まれるためでしょう、生活習慣病の類は大抵よくなります。値を見せて「こんなによくなってきたよ〜」と言いながらついでに周囲が困らない範囲で眠剤・抗不安薬なんかも中止していました(それでなくても転倒リスクが高い方々ですので…)。
  • 40代男性 総合診療
    東京大学の秋下教授のデータにもあるように、多剤併用による潜在的副作用は怖いものがあります。無責任に他剤を投与する医師は反省すべきです。積極的に処方薬数・錠数・内服回数を減らしています。減らして文句を言われたこともありますが、「ではどういった根拠で投与していたのか?」とうかがうと、大抵はお答えいただけません。
  • 60代男性 循環器内科
    命に直接かかわらないような薬はなるべく減らします。そういう薬に限って患者さんも飲んでいないことが多く。入院した際に大量に持参することがあり、びっくりします。患者もそれとなく、飲まなくても大したことはないとわかっているような気もします。いわゆる胃薬やメチコバールなどはできるだけ中止しています。
  • 30代男性 総合診療
    効果が期待できない、医療機関の複数受診による重複投与など見つけると極力減らしますしなるべくシンプルにします。
  • 50代男性 一般内科
    意外にも同一病院の複数科に受診しているケースでポリファーマシーが起きやすい印象。在宅療養移行時に一なるべく減らすようにしているが、たいてい何も起こらない。
  • 60代男性 神経内科
    本人と家族に納得の行くまで説明し適宜種類と処方量を減らしています。また、院外処方箋薬局を同一にするように指導します。

本調査で一番多かったのが薬剤の種類を減らすという意見でしたが、特に複数の科、複数の医療機関に受診している方は、飲み薬が増えやすい傾向にあるようです。
コメントのなかには、手間がかかっても熱心に不要な薬を減らそうと取り組んでいる医師の様子も伺えました。
他に「薬だけでお腹いっぱいになりそうな人が多数います」というコメントも見られ、やはり実際の現場で薬が多くなってしまう方はいらっしゃるようです。
薬局に関するコメントもありましたが、成分が重なっていることや、薬が多いことに気づいた薬剤師の方が医師に問い合わせする仕組みがあるようです。
たしかに薬剤師の方々がこうしたポリファーマシーに取り組んでいるという話も聞いたことがあります。

一方で、薬を減らすことを希望しない患者さんもおられるようです。

薬を減らそうとしても本人が希望しないケースも

  • 50代男性 整形外科
    入院したときは内科医と相談して減らすことを考えますが、患者さんが希望しないときがあります。
  • 60代男性 小児科
    患者さんに説明し不要と思われる薬を減らしますが、患者さんから再開を希望される患者さんもみえます。
  • 50代男性 アレルギー科
    薬を減らしたいですが、患者さんの同意を得るのに時間がかかり、外来ではなかなか実現できないのが現状です。

医師が薬の量が多いと判断して減らしたいと思っても、患者さんの方は効果を実感していたり、飲み慣れていたりすると同じ薬を続けたいという場合があるようです。

「そのまま」という意見の裏にかかりつけ医師への配慮が

  • 30代男性 代謝・内分泌科
    もちろんご本人に説明して減らせるなら減らしますが、普段かかりつけでない所でいじると双方の医療機関への不信感にもつながりかねないので、本人が希望しなければそのままでお返しします。自分かかりつけであれば出来るだけ薬剤は減らします。
  • 20代女性 麻酔科
    減らしたいとは思いますが、他の先生が必要と思って投与されているのであれば、状態を正確に把握できるまでは手をつけません。ほとんどが院外処方箋の今お薬手帳に記載もあるのですから、勝手に減薬できないまでも処方医に確認するのも調剤薬局の仕事の一つだと個人的には思っています。
  • 50代男性 消化器内科
    紹介患者の処方はあまりいじりません。減らしたい事も多いのですが、紹介元に遠慮して。
  • 50代男性 一般内科
    他医からの処方は原則そのままです。軽快後、紹介医のところへ戻られるので。

「そのまま」を選んだ医師のコメントからは、もともとのかかりつけ医への配慮から処方を変えることができないという現状が垣間見えました。
「他の科の処方になると専門ではないので手が出せない」というコメントもあり、薬を減らすのも一筋縄ではいかないことが想像されます。

まずは「ポリファーマシー」の意識を持つことからはじめましょう

本調査では、医師の6割強が「薬の種類を減らす」とコメントしました。
複数の科、複数の病院に受診していると薬が多くなりやすいようで、まずは「ポリファーマシー」の意識を持つことからはじめることが大事そうです。
アンケートではこのような結果になりましたが、最終的に患者さんの薬を減らすかどうかは、担当医の考え、病状、患者さんの希望も含めた判断になるかと思います。
ご両親や親戚の方の服用している薬が多いと感じたら、担当の医師や薬剤師に相談しましょう。

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