大人のADHDの受診と治療について精神科・心療内科医230人に聞きました

頭を抱える女性
大人のADHDの受診のきっかけの多くが、「職場・学校のトラブル」でした。家庭では、家事でADHDに気づくのは1つの典型例のようです。ADHDの治療は、色々なアプローチが必要ですが、薬物療法に加えて、職場に理解を求めるといった環境調整や、業務の取り掛かり方の工夫が大事そうです。
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仕事でのうっかりミス、誰しも一度は経験することですよね。
私も先日、大事なお客さんとのアポイントメントを忘れてしまった苦い出来事がありました(なんとかなりましたが…)。
しかし、日常のミスが度を越えて頻繁に起こってしまい、本人が追い詰められてしまうという状況では、ADHD(注意欠如・多動性障害)という病気の可能性があります。
ADHDは、これまで授業でじっとしていられない子供の病気としては一般的にも知られていましたが、近年大人のADHDが注目されるようになりました。

ADHDについては、以下の日本精神神経学会ホームページの説明がわかりやすいかと思います。

ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの略、日本語訳は「注意欠如・多動症」あるいは「注意欠如・多動性障害」、「注意欠陥・多動性障害」など)は、「忘れ物が多い」、「課題が間にあわない」、「うっかりミスが多い」などの「不注意」症状と、「じっとしていられない」、「落ち着かない」、「待つのが苦手」などの「多動性・衝動性」症状がみられる神経発達症(「発達障害」とほぼ同じ意味で使われる言葉)の一つと考えられています。

引用:今村明先生に「ADHD」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会

こうした「不注意」「多動性・衝動性」が大人になってから顕在化し、ADHDの診断に至ることがあるようなのです。
今回は、大人のADHDの受診のきっかけと治療について、精神科・心療内科医にアンケート調査を行いました。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2017年6月6日〜6月8日にかけて行われ、精神科・心療内科医230名から回答を頂きました。

大人のADHD、受診のきっかけは?

まず、大人のADHDで最も多いと感じる受診のきっかけを聞いてみました。

図1
  • 40代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    うっかりミスが多く、そそっかしいと指摘されることで受診されます。最近はネット上でもよく取り上げられている事もあり、自分で疑って受診するケースもあります。
  • 30代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    軽度のASD(自閉症スペクトラム)合併例が多い印象です。仕事が片付かない、間違えるといった一般的なことから、掘り下げると根本は自閉症性の問題であることも多々あります。
  • 50代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    職場や学校での不安・緊張症状が強く、その原因を尋ねてゆくとADHD症状による不適応状態により二次的に症状が出ていることが多い印象です。
  • 60代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    ADHDが原因しているので、生活の工夫や周囲の理解で改善することを説明すると、よくなる方もいます。原因がはっきりするとそれで落ち着く人も多く、ADHDの二次障害による抑うつ、不適応で受診されることが多いです。
  • 60代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    発病要因として、昇進にともなう仕事関係の配慮の負荷、研究室所属による濃密な人間関係における破綻があります。
  • 40代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    上司から指導されてもミスが減らない、本人がどうすればいいか困り果て、上司からの勧めで病院を受診されました。
  • 50代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    仕事場でミスが多くよく上司に注意され、落ち込んでいる患者を経験しています。
  • 20代男性 精神科 「職場・学校のトラブル」
    職場でミスが多い、指示を沢山出されるとフリーズしてしまうなどあります。

このように大人のADHDの受診のきっかけの多くが、「職場・学校のトラブル」のようなのです。
具体的には、仕事が片付かない、ミスが減らない等が起きると本人が困って受診する、上司や周囲に受診を勧められるというパターンのようです。
「二次障害による抑うつ、不適応で受診されることが多いです」というコメントもあり、ADHDの可能性に気づかず受診までの期間を長引いてしまうことで、さらに状況が悪化する恐れもあり、注意が必要です。

また、家庭のトラブルについても、紹介します。

  • 50代男性 精神科 「家庭のトラブル」
    家事ができない妻に嫌気がさした夫が離婚を考慮したが、ネットでADHDを知り受診し、離婚を回避された。
  • 50代男性 精神科 「家庭のトラブル」
    物忘れが多いため、夫から叱責されることが多く、うつ状態となって受診に至った20代女性の症例を担当しました。ADHDの診断告知と疾患説明、およびアトモキセチンの投与により、夫の疾患理解が進み、本人の病状にも改善がみられたため、夫婦関係が修復されました。

このように、妻の家事でADHDに気づくのは1つの典型例のようなのです。

仕事もさながら、掃除・洗濯・炊事など複雑な作業工程のなかでADHDに気づくことがあるということでしょうか。

大人のADHDの治療方法は?

次に、そんな大人のADHDの治療方法についても聞いてみました。

図2
  • 40代男性 精神科 「薬物治療」
    薬物が有効なことが多いため、薬物療法をまず検討します。ついで、モニター横に進捗管理のため付箋を貼ってマルチタスクをこなすこと、優先順位は都度判断し付箋を上下することなど、業務への取り掛かり方のアドバイスを行います。
  • 60代男性 精神科 「薬物治療」
    まずは薬物療法からです。私が担当しているデイケア通所をきっかけとして、説得の上、それまで拒んでいた薬物療法が導入されて復職した人もいます。
  • 30代男性 精神科 「薬物治療」
    生活に支障が出ている場合には、積極的に薬物療法を試します。もちろん生活指導や環境調整は必須ですが。
  • 20代男性 精神科 「生活環境の見直し」
    メモを取るようにし、指示も見直せるように文書で出してもらいます。混乱した時には自分から周りに待ってもらうようにしてもらいます。
  • 40代男性 精神科 「生活環境の見直し」
    環境改善や薬物療法は比較的即効性があり、本人が治療に意味を見出しやすく、動機づけになるからです。
  • 40代女性 精神科 「人間関係の見直し」
    まずは障害特性を本人が把握し、本人に関係する周囲の人も同様にそれについて理解を頂き、環境への配慮や調整が行なわれることで、ある程度生活しやすくなる方が多いと思います。
  • 40代男性 精神科 「人間関係の見直し」
    職場上司に障害の理解と得手不得手から、個性として得手の部分で活躍できる業務を生かさせようにアドバイスし、周囲の理解と協力を仰ぎます。
  • 40代男性 精神科 「生活習慣の見直し」
    寝る前に気になることをネットで調べたついでに関係ないサイトをサーフィンしてしまい、結局寝るのが朝方になるなど、昼夜逆転する傾向がよく見られます。他にも、支度の時間を多くとるため、早めから準備する、そのために早起きするなどを指導しています。

大人のADHDの治療は、薬物治療に加え、人間関係・生活環境・生活習慣の見直しがいずれも大事そうです。
特に上記コメントにあった業務への取り掛かり方のアドバイスは、大変参考になると思いますので、まとめて列挙したいと思います。

  • モニター横に進捗管理のため付箋を貼ってマルチタスクをこなす
  • 優先順位は都度判断し付箋を上下する
  • メモを取るようにし、指示も見直せるように文書で出してもらう
  • 混乱した時には自分から周りに待ってもらう

このように仕事の段取り、忘れない工夫、混乱した時の対処などADHDの方が社会生活をしていく上で大事なポイントがありそうです。
また、ある医師からは、『ブラックジャックによろしく 成人ADHD編』を紹介するコメントがあったのですが、読んでみたところ確かにわかりやすく、短時間でADHDについて学ぶことができました。
以下にリンクを貼りますので、皆さんも一度読んでみては、いかがでしょうか?

<参考>
マンガで分かるADHD「ブラックジャックによろしく」|どんな症状なの?|大人のためのADHDサイト

ADHDは、職場や家庭でのトラブルが発見のきっかけに

本調査によると、大人のADHDの受診のきっかけの多くが、「職場・学校のトラブル」でした。家庭では、家事でADHDに気づくのは1つの典型例のようです。
大人のADHDの治療は、いくつかのアプローチが必要ですが、薬物療法に加えて、職場に理解を求めるといった環境調整や、業務の取り掛かり方の工夫が重要そうです。

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