突然やってくる下痢の症状。
一日に何度もトイレへ駆け込んだことがある方もいるのではないでしょうか。
つらいだけでなく、大事な状況で下痢の症状が出てしまうと参ってしまいますよね。
なかには、下痢の症状に加えて胃の痛みやお腹全体の痛みまで感じてしまう場合もあるようです。この原因は一体何なのでしょうか。
そこで今回は「下痢と胃痛・腹痛を伴う病気」について医師537名に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年4月2日〜4月5日にかけて行われ、一般内科医、消化器内科医の計537名から回答を頂きました。
下痢と胃痛を伴う病気は「感染性胃腸炎」が最多
「下痢と胃痛の両方を伴う病気で多いものは何ですか?」という質問に対し、次の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 感染性胃腸炎
- 急性胃炎
- 過敏性腸症候群
- 胃腸に刺激の強い食べ物
- 炎症性腸疾患
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍
- 冷たい飲料物
- アレルギー性腸炎
- カフェイン
- その他
以下、結果となります。
- 60代男性 一般内科 循環器内科
胃痛と下痢の両方の症状を伴う患者の疾患で多いものは、感染性胃腸炎です。 - 30代男性 一般内科 リウマチ科
下痢を伴う心窩部痛(しんかぶつう)は、まず感染性胃腸炎として治療を行います。 - 50代男性 感染症科 呼吸器内科
胃痛と下痢の両方の症状を伴う患者の疾患は、感染を念頭におきます。 - 50代男性 消化器内科
生活改善しても続く人は過敏性と感染の合併の可能性あります。 - 60代男性 一般内科
胃痛と下痢で単純に胃腸炎を疑います。嘔吐に伴い胃痛が生じ、吐き切れなかった残骸が下痢として排泄されると考えるからです。 - 60代男性 消化器内科 消化器外科
ストレスなどの原因でIBS(過敏性腸症候群)となる場合も多く見かけます。 - 40代男性 一般内科 感染症科
元々下痢気味の人に胃痛があったなど、複数の病態が重なっている方が多いです。 - 50代男性 一般内科 総合診療
胃腸に対する刺激の強い食べ物で胃痛と下痢の両方の症状が見られることがあります。 - 50代男性 一般内科 消化器内科
冷たい飲食物も案外多いです。 - 50代男性 一般内科 腎臓内科
いろいろな原因が考えられるので、問診が重要です。
「下痢と胃痛の両方を伴う病気で多いものは何ですか」という質問に対し、多くの医師からは「感染性胃腸炎」との回答が寄せられる結果となりました。
このように回答した医師からは、下痢と胃痛の症状が見られた際は感染症を疑うような意見が多く挙げられていました。
また、「下痢を伴う心窩部痛(しんかぶつう)はまず感染性胃腸炎として治療を行います」と述べた医師もいらっしゃいました。心窩部とは「みぞおち」にあたる部分です。
胃痛といってもどの部分に痛みを感じるのかが、診察の際に目安となるようですね。
参考:日本心身医学会
次いで、「急性胃炎」「過敏性腸症候群」が多いとの見解が見られました。
それぞれの疾患については、以下のように説明されています。聞いたことがない方はぜひご一読ください。
急性胃炎とは
胃の粘膜が炎症を起こした状態(赤く腫れた、ただれた状態)のことです。このうち、なんらかの原因を受けてから短期間で発症するものを急性胃炎と呼びます。
引用:社会福祉法人恩賜財団済生会 急性胃炎
過敏性腸症候群とは
原因の心当たりがなく、検査をしても炎症や腫瘍などの異常が見つからないのに、下痢や便秘、腹痛などを繰り返す病気です。
引用:過敏性腸症候群 (かびんせいちょうしょうこうぐん) 病名から探す| 社会福祉法人 恩賜財団 済生会
医師のコメントから「ストレスなどの原因でIBS(過敏性腸症候群)となる場合も多く見かけます」と意見があったように、過敏性腸症候群は「ストレス」が原因の一つとして考えられているようです。
「緊張してお腹が痛くなる」という方もなかにはいらっしゃるのではないでしょうか。このような症状も、ストレスのしわざなのかもしれませんね。
また、医師からは「いろいろな原因が考えられるので、問診が重要です」との意見も頂きました。症状がひどい場合は、自己判断せず、医療機関を受診することが好ましいと言えそうです。
続いて、お腹全体の痛み、いわゆる腹痛を伴う下痢の場合は、どんなものが原因となっているのでしょうか。
下痢と腹痛を伴う病気も「感染性」(ウイルス性腸炎および細菌性腸炎)が最多
「腹痛を伴う下痢の原因として多いものは?」という質問に対し、次の選択肢から複数回答で選んでもらい、コメントを頂きました。
- 冷たいものの飲食
- アルコール
- カフェイン入りの飲料
- 香辛料
- 細菌性腸炎
- ウイルス性腸炎
- 過敏性腸症候群
- 炎症性腸疾患
- ストレス
- その他
以下が結果となります。
「腹痛を伴う下痢の原因として多いものは?」という質問に対し、ウイルス性腸炎が最も多い結果となりました。次いで細菌性腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患と疾患が続きました。
こちらも「胃痛を伴う下痢」の原因と一致して、ウイルス性腸炎・細菌性腸炎といった、いわゆる感染性のものが上位でした。
それでは、医師のコメントをみていきましょう。
ウイルス性腸炎、細菌性腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患
- 50代男性 一般内科 呼吸器内科
ウイルス胃腸炎が一番多い印象でしょうか。 - 50代男性 一般内科 消化器内科
ノロウイルスを筆頭としてウイルス性腸炎ではないでしょうか。 - 40代男性 一般内科
ノロウイルスが代表的かと思います。 - 50代女性 一般内科
ウイルス性と思っても細菌性のことがよくあります。 - 50代男性 一般内科 消化器内科
腹痛を伴う場合は細菌性腸炎が多いと思います。 - 60代男性 一般内科
細菌性腸炎が多いかな。時にウイルス。そして、過敏性腸疾患の順番だと思います。 - 40代男性 一般内科
IBS(過敏性腸症候群)は多い疾患と思います。 - 60代男性 一般内科
やはりIBS(過敏性腸症候群)では痛みを伴いやすいです。 - 60代男性 一般内科
過敏性腸症候群は最近増加しているためです。 - 60代男性 一般内科
炎症性腸疾患 では腹痛が強いです。 - 50代男性 一般内科 循環器内科
腹痛まで伴えば、何らかの炎症性疾患等を考えます。
ウイルス性胃腸炎と回答した医師からは「ノロウイルス」が代表的であるとのコメントが複数見られました。
冬場に流行を聞くノロウイルスですが、それが原因でウイルス性腸炎になってしまう方が多いようですね。
しかし、「ウイルス性と思っても細菌性のことがよくあります」との指摘もあり、必ずしもウイルス性腸炎が原因とは限らないようです。
また、過敏性腸症候群と回答した医師からは「過敏性腸症候群は最近増加しているためです」との意見がありました。
続いて挙がっていた炎症性腸疾患ですが、なかでも潰瘍性大腸炎について以下のような説明がありましたので、参考にしてみてください。
炎症性腸疾患とは
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。
引用:難病情報センター 潰瘍性大腸炎(指定難病97)
最後に、上位ではありませんでしたが、その他を選んだ回答や、飲食に関する回答をした医師のコメントもみていきましょう。
その他・冷たいものの飲食、アルコール、カフェイン入りの飲料など
- 40代男性 一般内科
冷たいものは消化によくないです。 - 30代男性 一般内科
冷たい食べ物の摂取が多いです。 - 50代男性 一般内科 循環器内科
おなかが冷えると下痢をします。 - 50代男性 一般内科 消化器内科
よくよく聞くとアルコール摂取後の下痢が意外と多いです。 - 60代男性 一般内科 呼吸器内科
アルコールの大量摂取の翌日は下痢になりやすいです。 - 30代女性 一般内科 呼吸器内科
コーヒーなどが多いです。 - 40代男性 一般内科 神経内科
ストレスや刺激の強い食べ物が多い印象です。 - 30代女性 一般内科
油ものをたくさん食べてもなります。 - 50代男性 一般内科 小児科
食べすぎなども考えられます。焼肉の後が最悪ですね。 - 40代男性 一般内科
腐った食べ物を食べた時など下痢と腹痛を起こします。 - 40代女性 一般内科 神経内科
デトックスティー、ゴボウ茶などでもあり得ます。 - 50代女性 一般内科
下剤飲んでおなかが痛いという患者さんは多いです。 - 50代男性 一般内科
下剤の影響が多いと思います。 - 50代男性 一般内科 消化器内科
高齢者は下剤を飲んでの腹痛や下痢が意外と多いです。
その他、または飲食が原因と考える医師からは、「冷たいものは消化によくないです」とのコメントもあり、冷たい飲食物をたくさん摂取することにより、消化不良が起きると考えられそうですね。
また、アルコールや油物の摂取、食べすぎなどを指摘する声も多く寄せられました。
一方で、「下剤の服用」が複数の医師から挙げられていました。便秘の際に用いる下剤ですが、こちらを服用することによって下痢や腹痛を引き起こす可能性があるようです。
下痢に胃痛や腹痛の症状が重なるときは、感染性が多い
本調査では「下痢と胃痛・腹痛の両方を伴う病気で多いもの」について調査を行いました。
結果、下痢と胃痛・腹痛の両方を伴う病気で多いものは、感染性の胃腸炎または腸炎という結果となりました。
しかし、医師のコメントからはこれらの疾患だけでなく、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、他にも冷たい飲食物の摂りすぎやアルコール、下剤など様々なものが原因で引き起こされることが判明しました。
もし症状がひどい場合には、自己判断で対処しようとせず、医療機関の受診を推奨します。