貧血が原因で下痢になることはある?532名の医師に聞いてみました

下痢の男性
本調査の結果では、貧血が原因で下痢になることは「ない」と80%の医師が回答しました。また、「貧血の原因によるが、一般的な鉄欠乏性貧血ではほとんどない」「下痢によって貧血を起こすことはあっても、その逆はない」との意見が見受けられました。しかし、少数の医師からは潰瘍性大腸炎や大腸癌の場合はあり得るとの指摘を頂いており、場合によっては重篤な病が潜んでいる可能性が判明しました。
下痢
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体がだるい、立ちくらみがする、息切れが激しい…など、さまざまな症状が引き起こるとされる貧血(血液中のヘモグロビン濃度が減少している状態)。
参考:貧血 | 今日の臨床サポート - 診断・処方・エビデンス -

それだけでなく、なかには下痢伴う方もいるようです。
しかし、貧血が原因で下痢を引き起こしているのか、それとも他の原因で下痢になっているのか分からないこともあるのではないでしょうか。

そこで今回は、「貧血が原因で下痢になることはあるか」について医師に聞いてみました。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年4月8日〜4月11日にかけて行われ、一般内科医、消化器内科医の計532名から回答を頂きました。

医師の8割が「貧血が原因で下痢になることはない」と回答

本調査では、「貧血が原因で下痢になることはあるか」について医師にお聞きし、それぞれコメントを頂いています。早速見ていきましょう。

図1

  • 50代男性 一般内科 消化器内科 ほとんどない
    貧血の原因によります。貧血と下痢を同時に起こす疾患でない限り貧血が原因で下痢になることはないと思います。
  • 60代男性 一般内科 循環器内科 ほとんどない
    巨赤芽球性貧血など特殊な貧血の場合は下痢を伴いますが、普通に遭遇する貧血では下痢になることはほとんどないと思います。
  • 50代男性 一般内科 消化器内科 ほとんどない
    一つの疾患が貧血と下痢の両方を引き起こすことはあります。例えば、潰瘍性大腸炎などが挙げられます。
  • 50代男性 一般内科 血液内科 ほとんどない
    消耗性疾患を伴う消化管疾患で貧血が発症するならわかりますが、貧血の患者の大多数が下痢を来しているとは考えられません。
  • 40代男性 一般内科 救急医療科 ほとんどない
    逆はあるかもしれませんが、貧血から下痢になる事はないのではないでしょうか。
  • 60代男性 一般内科 ほとんどない
    下血や栄養不良ならわかりますが、短期間ならありません。
  • 40代男性 一般内科 呼吸器内科 ほとんどない
    下痢の患者に対して、わざわざ貧血を疑いません。
  • 50代男性 一般内科 膠原病科 ほとんどない
    貧血と下痢には関連があったとしても、因果関係はありません。
  • 60代男性 一般内科 血液内科 あまりない
    貧血が合併する人はいますが、それが下痢の原因になる人はいないと思われます。
  • 50代男性 アレルギー科 一般内科 あまりない
    巨赤芽球性貧血なら有り得ますが、一般的な鉄欠乏性貧血ではまず無いでしょう。
  • 40代女性 一般内科 産婦人科 あまりない
    消化管出血でも起こしてない限りは貧血にはなりません。
  • 60代男性 一般内科 循環器内科 あまりない
    貧血と下痢は大腸癌でないと起こりにくいです。
  • 50代男性 消化器内科 あまりない
    血便がなくても慢性に下痢が続けば、理論的にはあると思います。
  • 50代男性 一般内科 血液内科 あまりない
    慢性炎症があれば起こるのかもしれませんが、あまり経験したことがありません。
  • 50代男性 一般内科 消化器内科 あまりない
    下剤を多用して、貧血はよくあります。
  • 50代男性 一般内科 小児科 あまりない
    癌による貧血で下痢する場合はありますが、貧血が原因で下痢は聞いたことがありません。
  • 50代男性 一般内科 感染症科 たまにある
    下痢が続いて吸収不良などになり、貧血になることの方が多い感じがします。
  • 40代男性 一般内科 たまにある
    原因と結果が逆(下痢のため貧血になる)ことも多いと思います。
  • 60代男性 一般内科 消化器内科 たまにある
    下血を伴う場合や、鉄分吸収が低下すれば、貧血になります。
  • 50代男性 一般内科 脳神経外科 たまにある
    下痢で腸に傷がつけば出血も可能性ありますが、かなりひどい下痢の場合です。
  • 40代男性 一般内科 大いにある
    貧血による下痢というのは血流とも関係するので、貧血と下痢が同じ原因で起こっていることもあります。

「貧血が原因で下痢になることはあるか」についての質問に対し、貧血が原因で下痢になることは「ない」と医師の80%が回答しました。ほとんどの医師が否定的な意見を持っていることがうかがえます。

医師からは、「一般的な鉄欠乏性貧血ではまず無いでしょう」というコメントがありました。
鉄欠乏性貧血とは、貧血の約70%を占める最も頻度の高い貧血です。このようなよくある貧血の場合では、貧血が原因で下痢を引き起こすことは考えにくいようですね。
参考:鉄欠乏性貧血 | 今日の臨床サポート - 診断・処方・エビデンス -

一方で、下痢によって貧血を起こすことは少ないながらもある、とした意見も見られました。
例えば、「下痢が続いて吸収不良などになり、貧血になることの方が多い感じがします」と意見する医師もおり、下痢が長引くことで栄養が吸収できず貧血になる可能性はあるようです。

他にも、貧血の原因として、巨赤芽球性貧血、潰瘍性大腸炎、大腸癌などの疾患では、貧血と下痢を同時に引き起こすことはありえるとの意見を頂きました。
貧血が原因で下痢を引き起こす場合は、重篤な疾患が隠れている可能性もあるようです。

ちなみにこれらの疾患ですが、以下のように説明されています。聞いたことがないという方は、ぜひご一読ください。

巨赤芽球性貧血とは

巨赤芽球性貧血とは、種々の原因により骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。
ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏などにより、DNA合成が障害され核の成熟障害をきたし、異常な巨赤芽球が産生される。RNA合成やタンパク合成障害は相対的に軽度であることから、細胞質は成熟し大きくなり、未熟な大きい核と細胞質間の成熟不一致がみられる。巨赤芽球の多くは成熟することができず、骨髄内でアポトーシスにより死滅し無効造血をきたす。DNA合成障害は全身で起こり、貧血以外にも多彩な症状を呈する。
引用:小児慢性特定疾病情報センター 巨赤芽球性貧血

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜(最も内側の層)にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患です。特徴的な症状としては、下血を伴うまたは伴わない下痢とよく起こる腹痛です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります
引用:難病情報センター 潰瘍性大腸炎(指定難病97)

大腸癌とは

早期の癌ではまず自覚症状はありません。
検診として行う便潜血反応(後で詳述)が陽性となり精密検査を行うことで発見されたり、ポリープの検査のために行った大腸内視鏡検査でたまたま発見されたり、他の大腸の病気や大腸切除後の内視鏡検査で見つかったりすることがあります。
ある程度進んだ大腸癌では、癌により腸の内腔が狭くなり便の通りが悪くなることに起因する症状と、癌の部分からの出血による症状が現れます。
すなわち、便秘がちになる、便秘と下痢を繰り返す、下痢便しか出なくなる、などの症状が出てきます。
引用:独立法人国立病院機構大阪医療センター 大腸がん(外科)

貧血で下痢を起こすことはほとんどない。でも、原因によって貧血と下痢を同時に引き起こすことも。

本調査によれば、貧血が原因で下痢を起こすことはほとんどないようです。
しかし、潰瘍性大腸炎や大腸癌などの大きな病の場合は、貧血と下痢が起こることがあり得るのと意見を頂きました。
一般的な鉄欠乏性貧血では下痢を引き起こすことは少ないとはいえ、もしも貧血と下痢が重なっている場合、重篤な病が潜んでいる可能性があります。
症状が続く場合は、何が原因かを確かめるためにも、医療機関を受診するようにしましょう。

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