みなさんは睡眠薬と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
睡眠薬の依存性や、薬の服用を中止する際の離脱症状に不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実際のところ、睡眠薬に依存性はあるのでしょうか。
また、離脱症状にはどのような症状があるのでしょうか。
そこで今回は、睡眠薬の依存性や離脱症状について精神科・心療内科医233名に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年4月13日〜4月16日にかけて行われ、精神科医、心療内科医の計233名から回答を頂きました。
医師の94%が「睡眠薬に依存性はある」と回答
まずは睡眠薬の依存性について医師に聞いてみました。
- 50代男性 精神科 ある
ベンゾジアゼピンは依存性があります。科学的事実です。 - 40代男性 心療内科 精神科 ある
今は依存性が少ない薬剤が増えてきていますし、離脱に成功して治療終了するケースもあります。しかし、非専門医が安易に処方し常用を続けている場合には、依存性のため離脱に難航したり、専門的な治療から脱落することが少なくありません。 - 40代男性 精神科 ある
自分も急にやめてみて、一睡もできなかった時は驚きました。 - 40代女性 精神科 ある
あります。耐性も形成されるので、量を増やさないと眠れなくなります。 - 30代男性 精神科 ある
ベンゾジアゼピン受容体作動薬には依存があります。ただ、患者さんによってかなり異なる印象です。 - 40代男性 精神科 ある
精神的な依存性はありますし、離脱症候群も起こります。 - 50代女性 精神科 多少ある
睡眠薬の種類にもよりますが、少なくとも精神的な依存形成は起こります。 - 50代男性 心療内科 循環器内科 多少ある
30年以上の医療経験から言って内科医として遭遇したのは1、2人です。実際はたいしてありません。 - 40代男性 一般内科 精神科 多少ある
不眠症の治療といえば睡眠薬を使った薬物治療が主流ですが、睡眠薬を使用する治療は再発率が高いとされ、「睡眠薬をいつやめられるのか分からない」「段々と睡眠薬の量が増えてしまうかも」といった不安もつきまといます。 - 50代男性 心療内科 小児科 あまりない
飲まないと眠れないかもという不安があり依存性になることありますが、離脱できると思います。 - 40代女性 精神科 あまりない
正しく使っていれば問題はありません。
今回の調査では、「睡眠薬に依存性はありますか」という質問に対し、94%の医師が「ある」と回答しました。
コメントを見ると、睡眠薬には依存性があり、さらに耐性もあって量を増やさなければ眠れなくなることがある、と考えている医師もいるようです。また、「睡眠薬をいつやめられるのか分からない」といった意見もいただいています。
さらに、「自分も急にやめてみて、一睡もできなかった時は驚きました」と自身の経験を踏まえて回答した医師もいらっしゃいました。
医師のコメントにもあったベンゾジアゼピン系の睡眠薬ですが、福岡県薬剤師会では以下のように説明されています。
ベンゾジアゼピン(BZ)系薬は抗不安作用、催眠・鎮静作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用等を有し、精神科領域を始め各科領域で主に睡眠薬や抗不安薬として広く使用されている。
主な薬としては、トリアゾラム(ハルシオン)、ブロチゾラム(レンドルミン)などがこれにあたります。
さて、このベンゾジアゼピン系の睡眠薬ですが、服用を急に中止した場合、離脱症状は起こるのでしょうか。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の離脱症状は「焦燥感」が最多
「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用を急に中止した場合、現れる離脱症状にはどのようなものが多いですか」という質問に対し、次の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 焦燥感
- 頭痛
- 動悸
- 震え
- その他
- 抑うつ
- 吐き気
- 耳鳴り
- 幻覚
- 不整脈
以下が結果となります。
- 40代男性 精神科
全く寝られず、だるくなる患者が少なくないです。 - 60代男性 精神科
イライラはよく訴えてきます。 - 60代男性 心療内科 精神科
焦燥感が一番多いですが数日で消退します。 - 60代男性 精神科
よほど、長期大量に飲まない限り、出ないと思います。 - 30代男性 精神科
不眠の増悪、不安、イライラ感、焦燥感があります。 - 60代男性 心療内科
急にやめないよう指導しているので、離脱症状で困ったことはありません。 - 60代男性 精神科
不安、不眠を中心としたあらゆる離脱症状が出現する可能性があります。 - 50代男性 心療内科 精神科
中止は難しいです。長時間型に変更し、漸減していきます。 - 40代男性 心療内科 精神科
多彩な症状が出現します。そのため、依存が更に増えていきます。 - 40代男性 精神科
離脱症状を起こさないためにも減量には工夫が必要です。
「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用を急に中止した場合、現れる離脱症状にはどのようなものが多いですか」と質問したところ、「焦燥感」との回答が最も多い結果となりました。次に「頭痛」「動悸」が同数で並びました。
医師のコメントでも、「不眠の増悪、不安、イライラ感、焦燥感」といった離脱症状が挙げられていました。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の離脱症状では多彩な症状が出るため、それがまた依存性を高める、といった医師のコメントもありました。
なかには、「急にやめないよう指導しているので、離脱症状で困ったことはありません」や、「中止は難しいです。長時間型に変更し、漸減していきます」といった医師のコメントも見られました。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用は急に中止せず、医師の指示のもと漸減(次第に減らしていく)していくことが良いと考えていることが分かります。
続いて、Z系の睡眠薬の離脱症状についても聞いてみました。
Z系の睡眠薬は、非ベンゾジアゼピン系の種類の睡眠薬になります。詳細な説明は、以下の病院ホームページの説明を参考にしてください。主な薬では、ゾピクロン(アモバン)、ソルピデム(マイスリー)がこれにあたります。
Z-drugは、筋弛緩作用が緩和されており催眠効果が主たる作用です。 またZ-drugでは、BZDで問題となっていた耐性(長期の服用で薬の効果が減弱すること)や、反跳性不眠(長期服用を中断するとかえって眠れなくなること)が生じにくくなっています。 ゾルピデムは深い睡眠を増やすことが特徴的です。 同じZ-drugでもエスゾピクロンは抗不安作用も併せ持っています。
引用:患者さんへ | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 済生会長崎病院
※Z-drug…非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
※BZD…ベンゾジアゼピン系睡眠薬
Z系睡眠薬の離脱症状も「焦燥感」が多い
「Z系の睡眠薬の服用を急に中止した場合、現れる離脱症状にはどのようなものが多いですか」という質問に対し、次の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 焦燥感
- 頭痛
- 動悸
- 震え
- その他
- 抑うつ
- 吐き気
- 耳鳴り
- 幻覚
- 不整脈
以下が、結果になります。
- 40代男性 一般内科 心療内科
Z系といってもベンゾジアゼピン系となんら変わりなく症状が出現します。 - 60代男性 一般内科 精神科
いずれにしても、急に中止はしないほうがいいでしょう。 - 60代男性 一般内科 心療内科
焦燥感がとても多いように実感しています。 - 50代男性 一般内科 心療内科
不安緊張に伴う症状が出やすいです。 - 30代男性 精神科
Z系でも結合するのはベンゾジアゼピン受容体であり、大きな差異は乏しいと思います。 - 50代男性 精神科
Z系の睡眠薬の中でも違いがあると思います。ゾルピデムは依存性がみられるので、不安や不眠が強くなる傾向があると思います。 - 50代男性 心療内科 精神科
すべてが考えられるが特に精神依存が問題です。 - 50代男性 心療内科 精神科
焦燥感、頭痛が多いです。不安感もあります。 - 30代女性 一般内科 精神科
急な中止は勧められません。主治医と相談するよう指導します。 - 50代男性 一般内科 心療内科
不眠以外にはそれほど問題にはなりません。
「Z系の睡眠薬の服用を急に中止した場合、現れる離脱症状にはどのようなものが多いですか」と質問したところ、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と同じく「焦燥感」との回答が最多となりました。次に「その他」、「頭痛」といった回答がつづきました。
医師のコメントでは、全体的にベンゾジアゼピン系と変わらない意見がみられました。焦燥感、頭痛、不安感が多く、特に精神依存が問題であるという意見を頂いています。さらにZ系の睡眠薬においても急な中止は勧められない、という見解がありました。
Z系の睡眠薬においてもベンゾジアゼピン系の睡眠薬と似た離脱症状があり、急な使用中止はしない方が良く、医師と相談すべきと考えて良さそうです。
睡眠薬を服用の際は、医師と相談しながら依存性や離脱症状も念頭に
本調査の結果、睡眠薬には依存性があると回答した医師が94%と大きく占める結果となりました。
続いて、「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用を急に中止した場合、現れる離脱症状」については、「焦燥感」が多い結果となりました。医師のコメントにあるように、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用は急に中止せず、医師の指示のもと次第に減らしていくことが大切なようです。また、Z系睡眠薬についても離脱症状は、同様に「焦燥感」が最も多く選ばれました。
今回の調査では、睡眠薬に依存性はあると考えている精神科・心療内科医が多くみられましたが、睡眠薬を服用している際は、医師と相談しながら依存性や離脱症状に対し、適切な見解を持って対応をしていくことが大事そうです。