腹痛を伴う吐き気の症状がある時に、何か悪い病気にかかっているのではないかと不安になった経験はありませんか?
吐き気だけでも大変苦しいですし、それに加えて腹痛の症状もあると、何か悪い病気なのではないかと不安になるのも当然です。
そこで今回は、一般内科、総合診療科医518人に、腹痛を伴う吐き気の症状がある場合はどんな病気が考えられるのか聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年4月19日~2018年4月20日にかけて行われ、一般内科、総合診療科医518人から回答を頂きました。
腹痛を伴う吐き気の症状がある時って、どんな病気が多い?
「腹痛を伴う吐き気の症状がある場合に疑われる疾患はなんですか。」という質問に対して、以下の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- 急性胃腸炎
- 急性胃炎・慢性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 急性膵炎・慢性膵炎
- 胆石症
- 胆のう炎
- 虫垂炎
- 胃癌
- 尿路結石
- 肝炎
- その他
以下が調査結果となります。
集計の結果、急性胃腸炎と回答している医師が70%と最も多く、急性胃炎・慢性胃炎が62%とこれに続きました。ここから、胃炎もしくは胃腸炎である可能性が高い場合が多いと分かります。
まずは上位の疾患の概要を解説し、その後医師のコメントを見ていきましょう。
急性胃炎とは
胃炎とは、胃の粘膜が炎症を起こした状態(赤く腫れた、ただれた状態)のことです。このうち、なんらかの原因を受けてから短期間で発症するものを急性胃炎と呼びます。(中略)急性胃炎は原因がはっきりとしていることが多く、原因を回避することが予防につながります。過労やストレスを回避し、規則正しい生活や、刺激の強い飲食物を避けるなどの心がけが大切です。解熱鎮痛薬など、薬の中には胃を荒らしやすいものがあることや、生魚には寄生虫がいる場合もあることなどを知っておくことも役に立つでしょう。
引用:急性胃炎|恩賜財団済生会
慢性胃炎とは
胃粘膜に炎症が慢性的に続くことを慢性胃炎と言います。慢性胃炎には胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎や、粘膜が凹凸になる過形成性胃炎、粘膜が厚くなる肥厚性胃炎などがあります。
胃潰瘍とは
胃潰瘍とは、何らかの理由で胃の粘膜に傷がついた後、胃酸などの攻撃によって穴が開き、傷が粘膜の下にある粘膜下層や筋層などといった深いところまで達して、胃の壁の内側にくぼみ状の病変を生じた状態を言います。
潰瘍をきたす原因としては、幼少時から胃の中に住みつき、持続的に胃の粘膜を障害するピロリ菌や、NSAIDと言われる鎮痛解熱薬などによるものがあります。そのほか、ストレス、刺激物の過剰摂取や暴飲暴食、胃腸炎などに伴う細菌・ウイルス感染、過労などが挙げられます。引用:胃潰瘍|恩賜財団済生会
急性膵炎・慢性膵炎とは
急性膵炎とは、膵臓の急性炎症で、他の臓器にまで影響を及ぼし得るものです。急性膵炎の2大原因は、アルコールと胆石です。急性膵炎の最も多い症状は、上腹部痛ですが、背部まで痛みが広がることもあります。ほか、嘔吐、発熱などの症状や、状態が悪化すると、意識障害やショック状態など重症化することもあります。
慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病期です。慢性膵炎の原因は、男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられます。慢性膵炎では、膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられています。慢性膵炎の初期段階では、膵臓の機能は保たれており(代償期)、腹痛が主な症状です。慢性膵炎が進行すると、次第に膵臓の機能が低下し(移行期)、さらに進行すると、膵臓の機能は著しく低下し(非代償期)、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じます。
胆石症とは
胆石とは、胆管系のどこかに石ができる病気のことをいいます。胆管系とは、肝臓で作られた胆汁を肝臓から腸(正確には十二指腸)に流す管組織の総称です。発生した石の所在部位により、胆のう結石、総胆管結石、肝内結石に分けられますが、なかでも最も頻度が高いのは胆のう結石です。俗に「胆石」と言えば、胆のう結石を表していることが多いです。
石といっても、もちろん道端に転がっている石とは異なり、その成分は胆汁中に含まれるコレステロールやビリルビンなどが沈殿・析出(せきしゅつ)したものです。また、原因として細菌、特に腸内細菌が関与しているものもあります。近年では食生活の欧米化により、以前の日本には少なかったコレステロール結石が増加しています。
肝内結石は全胆石の1~2%と頻度は低いものの、治療方法が確立されていない難病を扱う臨床調査研究分野の対象疾患130疾患の中に入っており治療が難しい病気です。ただし、胆石があっても、無症状であることが少なくありません。これを「無症候性胆石」と呼び、胆のう結石の約5割を占めると言われています
引用:胆石症|恩賜財団済生会
それでは、医師のコメントを見ていきましょう。
腹痛を伴う吐き気は、ウイルス性の胃腸炎が多い
- 50代男性 一般内科 急性胃腸炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎
感染性胃腸炎が多いです。 - 40代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎
感染性かストレス性の胃腸炎が多いです。 - 40代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎
- ウイルス性が多いように思います。
- 50代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎
感染性胃腸炎が多いです。 - 60代男性 一般内科 急性胃腸炎
感染性胃腸炎が最も多いです。 - 40代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎
ウイルス感染だと思います。 - 60代男性 一般内科 急性胃腸炎
感染性胃腸炎が多いように思います。 - 50代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・胆石症
感染性のものの頻度が高いです。 - 40代男性 一般内科 急性胃腸炎
季節性のノロウイルスなどの感染性胃腸炎の遭遇頻度が高い印象です。 - 50代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎
ウイルス性腸炎が圧倒的に多いです。 - 50代男性 一般内科 急性胃腸炎
ノロの吐き気はひどいですね。 - 60代男性 一般内科 急性胃腸炎
感染性胃腸炎が多いでしょう。
医師の回答を見ると感染性・ウイルス性の胃腸炎が多いとのコメントが多く見られました。胃腸炎の原因には、ノロウイルスといった感染性、ウイルス性が原因となるケースが目立つようです。
別の疾患の場合も
- 60代女性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・急性膵炎・慢性膵炎・胆石症・その他
イレウスも含め重大な問題が潜んでいることがあります。 - 50代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・虫垂炎・急性膵炎・慢性膵炎
急性胃炎や膵炎などでしょう。 - 60代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・虫垂炎
虫垂炎も注意が必要です。 - 60代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・急性膵炎・慢性膵炎・胆石症・胆のう炎
急性膵炎は注意して診察します。 - 50代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・急性膵炎・慢性膵炎
膵炎の重篤な方がおられました。 - 40代男性 一般内科 急性胃炎・慢性胃炎・急性胃腸炎・胃癌・虫垂炎・その他
イレウスなどの場合もあります - 30代男性 一般内科 虫垂炎・急性膵炎・慢性膵炎
虫垂炎や急性膵炎は見逃してはいけないですね。
次に医師のコメントで気になったのは、他の重い疾患の可能性もあると強調する声です。選択肢にある疾患だと虫垂炎や膵炎、イレウスの可能性もあるという記載が複数ありました。
イレウスについては、以下のHPで説明がされています。
イレウスとは
日本語では「腸閉塞」と訳しますが、本来は消化管の内容物が流れなくなっている病態を意味しており、閉塞していなくても腸管の通過障害があれば「イレウス」と呼びます。症状としては、腹痛、吐き気・嘔吐、腹部膨隆(ふくぶぼうりゅう/お腹が膨らんでいること)、排便・排ガス停止などが挙げられます。
引用:イレウス|恩賜財団済生会
イレウスの主な症状には、腹部全体の痛み、嘔吐などがあり、大変苦しい疾患と言えます。
このような病気を見逃さないためにも、腹痛を伴う吐き気の症状で病院を受診した際は、具体的に症状の詳細を伝える事が大切と言えそうです。
腹痛を伴う吐き気の場合、胃腸炎・胃炎が多いが、重病の可能性もあり要注意
今回は、腹痛を伴う吐き気がある場合に考えられる病気について調査しました。
調査結果から、急性胃腸炎、急性胃炎・慢性胃炎の可能性が高いということがわかりました。
特に胃腸炎については、感染性、ウイルス性のケースが多いようです。
ただし、中には、膵炎や虫垂炎、イレウスといった重病の可能性もあるので十分な注意が必要との医師の指摘もありました。
腹痛を伴う吐き気の症状に悩まれた際は、あまり無理せず、医療機関に相談することが大事そうです。