「腹痛」といえど、その痛み方や、痛みを感じる箇所は様々だと思います。
また、痛みの表現も「キリキリ」、「しくしく」、「ズキズキ」など、感じ方は人それぞれ異なりますよね。
その中でも、キリキリとお腹が痛む場合にはどのような疾患の可能性があるのでしょうか。
そこで今回は、キリキリする腹痛で考えられる疾患は何かについて、一般内科、消化器内科、消化器外科、総合診療科の医師514名に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年7月22日〜7月25日にかけて行われ、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療科医の計514名から回答を頂きました。
キリキリする腹痛で考えられる疾患は?
「キリキリする腹痛から考えられる疾患で多いものは何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらい、コメントを頂きました。
- 急性胃炎
- 慢性胃炎
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 虫垂炎
- 過敏性腸症候群
- 急性腹膜炎
- 腸閉塞
- 炎症性腸疾患
- 胆石発作
- 急性胆嚢炎・胆管炎
- 急性膵炎
- 狭心症・心筋梗塞
- 急性腎盂腎炎、尿管結石など泌尿器科疾患
- 腹部大動脈瘤破裂など血管系疾患
- 卵巣捻転、子宮内膜症など婦人科疾患
- 圧迫骨折
- その他
以下が結果となります。
調査の結果、約5割の医師が「急性胃炎」、続いて約4割の医師が「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」、約3割の医師が「胆石発作」と回答しました。
それぞれの疾患の症状について確認していきましょう。
急性胃炎
”胃炎とは、胃の粘膜が炎症を起こした状態(赤く腫れた、ただれた状態)のことです。このうち、なんらかの原因を受けてから短期間で発症するものを急性胃炎と呼びます。”
(引用:社会福祉法人 恩賜財団 済生会 急性胃炎)
胃潰瘍
”胃潰瘍とは、何らかの理由で胃の粘膜に傷がついた後、胃酸などの攻撃によって穴が開き、傷が粘膜の下にある粘膜下層や筋層などといった深いところまで達して、胃の壁の内側にくぼみ状の病変を生じた状態を言います。(中略)症状としては、腹部が中心の不快感・違和感などがあります。具体的には、主に上腹部を中心とした腹痛、背部痛、吐き気、もたれ感、腹部膨満感などです。”
(引用:社会福祉法人 恩賜財団 済生会 胃潰瘍)
十二指腸潰瘍
”十二指腸潰瘍とは、強い胃酸が十二指腸粘膜を傷つけ、深い傷となっている病態です。症状としては、上腹部(通称みぞおち部位)の疼痛(とうつう/うずくような痛み)や出血、潰瘍が深い場合には十二指腸に穴があく穿孔(せんこう)などがあり、腹膜炎を起こしてしまう場合もあります。”
(引用:社会福祉法人 恩賜財団 済生会 十二指腸潰瘍)
胆石発作
”胆石発作は胆道仙痛と呼ばれる, 胆嚢の収縮に伴う発症性の疼痛である. 心窩部から右季肋部の疼痛で, 右肩に放散することがある. 食後に発症することが多く, 誘発因子として脂肪食があげられる.”
(引用:日本消化器病学会 胆石診療ガイドライン2016(改訂第2版))
急性胃炎と回答した医師
- 40代男性 一般外科 「急性胃炎」
頻度的に過去、急性胃炎が多い印象です。 - 50代男性 一般内科 「急性胃炎」
間欠的にキリキリ痛むのは消化管の痛みのことが多いです。 - 40代男性 消化器内科 「急性胃炎」
緊急性の高い疾患が多い印象です。 - 50代男性 一般内科 「急性胃炎」
まずは急性胃炎を考慮すべき疾患です。 - 40代男性 一般内科 「急性胃炎」
原因はそれぞれですが、急性胃炎が多いです。 - 60代男性 一般外科 「急性胃炎」
胃炎が多く、それもストレスから来るものが多いと思います。 - 60代男性 一般内科 「急性胃炎」
一般の診療所を受診する患者は軽症例が多いので、ストレス性の胃炎か、下痢、便秘が多いです。 - 40代男性 一般内科 「急性胃炎」
ストレスで胃がキリキリします。 - 30代男性 一般内科 「急性胃炎」
キリキリという痛みは過半数が胃の痛みと考えられます。 - 30代男性 一般内科 「急性胃炎」
胃の炎症性疾患が多いと思います。
「急性胃炎」と回答した医師からは、「過去に見られた頻度として急性胃炎が多い」といった経験をもとにしたコメントや、「まず考慮する疾患の1つとして急性胃炎が考えられる」との見解を示す方もいらっしゃいました。
このように、キリキリした腹痛は胃の痛みであることが多いと考えられているようですが、その原因は「ストレス」であるという意見がいくつか見られます。
このことから、急性胃炎を予防するためにはストレスを蓄積しないことが大事なようですね。
自分に合ったストレス解消法を知り、実践していくと良いかもしれません。
続いて、「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」と回答した医師のコメントを見ていきましょう。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍と回答した医師
- 50代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
重篤な疾患が背景にあるように感じる表現です。 - 40代女性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
胃潰瘍が多いですが、重篤な疾患も考えながら診察します。 - 50代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
胃潰瘍・十二指腸潰瘍が多いと思います。 - 50代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
上腹部限定ですが、消化性潰瘍を挙げます。 - 50代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
消化性潰瘍はずいぶん減りましたが、まだあります。 - 90代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
感染性腸炎や胃潰瘍が考えられるので、すぐに受診することをお勧めいたします。 - 50代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
一般的な消化器疾患で多いものです。 - 40代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
上部消化管潰瘍を第一に考えます。 - 40代男性 一般内科 「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」
胃潰瘍などが典型例でしょうか。
「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」と回答した医師からは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が多い、上腹部限定で消化性潰瘍を考慮するといったコメントが寄せられました。
先に紹介した胃潰瘍の主な症状では、「上腹部を中心とした腹痛、背部痛、吐き気、もたれ感、腹部膨満感など」と記載されています。
このことから、上腹部でキリキリした腹痛が見られる場合は「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」の可能性が考えられそうですね。
また、「キリキリという痛みの表現は重篤な疾患の可能性も考えられる」とのコメントもあり、症状が続くようであれば医療機関の受診を心掛けたほうが良さそうです。
胆石発作と回答した医師
- 50代男性 一般内科 「胆石発作」
胆嚢関係が多い気がしています。 - 40代男性 一般内科 「胆石発作」
やはり胆石による症状が多いでしょうか。 - 70代男性 一般内科 「胆石発作」
胆石、胆道系疾患を鑑別します。 - 50代男性 一般内科 「胆石発作」
キリキリは、重症疾患を懸念します。 - 40代男性 一般内科 「胆石発作」
胆石発作の可能性はあります。 - 40代女性 一般内科 「胆石発作」
胆石発作、急性胆嚢炎、胆管炎などを考慮します。 - 50代男性 一般内科 「胆石発作」
胆石発作が多いと思います。 - 50代男性 消化器内科 「胆石発作」
胆石発作は脂肪の多い食事摂取後に痛みを感じます。 - 50代男性 一般内科 「胆石発作」
痛みの性状から疾患を限定するのは難しいと感じています。 - 50代男性 消化器内科 「胆石発作」
その他に付随する症状も大切なので、素人判断しないほうが良いと思います。
胆石発作の症状は、「食後に発症することが多く、誘発因子として脂肪食があげられる」という説明にある通り、医師のコメントのなかにも「胆石発作は脂肪の多い食事の後に痛みを感じる」といった意見が見られました。
上記のような食事を摂取した後にキリキリした腹痛を感じるようなら、胆石発作を疑っても良いかもしれません。
また「胆石発作」と回答しているものの、痛みの性状から疾患を限定するのは難しい、その他に付随する症状も大切なので素人判断しないほうが良いといった指摘も頂きました。
本記事では、上位3つに回答された急性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胆石発作についてみてきましたが、この他の疾患が原因となっている可能性も考えられます。
安易に自己判断をせず、医師の診察を受け、診断・治療を受けることをおすすめします。
キリキリした腹痛は急性胃炎が最多。でも自己判断はせずに病院へ!
「キリキリする腹痛から考えられる疾患で多いものは何か」について調査したところ、「急性胃炎」が最も多く回答されました。その後を「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」、「胆石発作」が続いています。
医師のコメントによれば、急性胃炎は頻度としては多く、ストレスが原因の1つとして考えられているようです。そのため、ストレスを発散することが予防法として効果的であるとの見解がうかがえます。
また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍については上腹部に痛みが、胆石発作の場合は、脂肪の多い食事を摂取した後に腹痛の症状が出るとの意見があることから、これらは各疾患を判別する目安となりそうです。
しかし、痛みだけで素人が疾患を判別することは難しいといった見解もあり、きちんと医療機関を受診することが大切なようでした。