さまざまな原因によって発生する腹痛。
病院に行くほどでもないな…と思ったときは、薬局やドラッグストアなどで、胃薬や整腸剤などの市販薬を購入し、服用される方も多いと思います。
では、医師自身が腹痛に襲われた際、市販薬を飲んで腹痛を和らげようとすることはあるのでしょうか。気になるところですよね。
そこで今回は、医師自身の腹痛時に胃薬や整腸剤などの市販薬を服用することはあるのか、一般内科、消化器内科、消化器外科、総合診療科の医師、計514名に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年7月22日〜7月25日にかけて行われ、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療科医、計514名から回答を頂きました。
腹痛時に市販薬を飲む医師はどれくらい?
「ご自身の腹痛時に胃薬や整腸剤などの市販薬を服用することはありますか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらい、コメントをいただきました。
- 大いにある
- 多少ある
- あまりない
- ほとんどない
以下が結果となります。
調査の結果、否定的な回答(「ほとんどない」、「あまりない」)が59%、肯定的な回答(「多少ある」、「大いにある」)が41%という結果になりました。
否定的な意見がわずかに上回っていますね。
それでは、このように回答した医師のコメントを見ていきましょう。
約6割の医師が市販薬の服用に否定的
- 60代男性 一般内科 「ほとんどない」
市販薬はほとんど飲みません。 - 50代男性 消化器外科 「ほとんどない」
原因が予想できなければ薬剤では対応できません。 - 60代男性 消化器内科 「ほとんどない」
原因がはっきりしなければ薬を飲んでも効果なしです。 - 50代男性 消化器内科 「ほとんどない」
原因が分からないのに市販薬を飲むことはまずあり得ません。 - 50代男性 一般内科 「ほとんどない」
下痢の時は胃薬を飲みますが、他は病院でもらった方が安心かつ適切です。 - 60代男性 消化器外科 「ほとんどない」
下痢があれば整腸剤を飲むこともありますが、市販薬はほとんど飲んだことがありません。 - 60代男性 消化器外科 「ほとんどない」
消化器の安静がまず優先です。 - 60代男性 一般内科 「ほとんどない」
しばらく飲食しないでお腹を休めます。 - 60代男性 一般内科 「ほとんどない」
絶食にして様子を見ています。 - 40代男性 消化器外科 「ほとんどない」
市販薬で治る程度なら無治療でも治ると思います。 - 50代女性 一般内科 「ほとんどない」
腹痛のときにはあまり飲みませんが、毎日整腸剤は服用しています。 - 50代男性 消化器内科 「あまりない」
薬が必要なほどなら受診をおすすめします。 - 50代男性 総合診療科 「あまりない」
そのまま様子を見ることが多いです。 - 50代男性 総合診療科 「あまりない」
原因が分からないと服用しにくいです。 - 50代男性 消化器内科 「あまりない」
市販薬でも病態にあっていれば悪くはないと思います。
回答した約6割の医師が、腹痛時に市販薬を服用することはないと考えているようです。
コメントを見てみると、「原因が予想できなければ薬剤では対応できない」、「原因がはっきりしなければ薬を飲んでも効果なし」、「原因が分からないと服用しにくい」などの意見が目立ち、腹痛の原因が何なのか不明な状態で薬を服用することに消極的な医師が比較的多くいらっしゃいました。
また、「消化器の安静がまず優先」や「飲食しないでお腹を休める」、「絶食にして様子を見る」など、薬に頼るのではなく、腹痛が止むまでお腹を休めて様子を見るという意見も多く見られました。
その一方で、「下痢の時は胃薬を飲む」や「下痢があれば整腸剤を飲む」などのコメントもいくつか頂きました。
上記の通り、原因が不確かな場合は市販薬を飲まないという方もいる傍ら、”下痢”の状態であれば、市販薬を服用するという医師もいるようです。
中には「薬が必要なら受診を勧める」といったコメントもあり、市販薬に頼るのではなく病院で診てもらうことを推奨する方もいました。
では続いて、「腹痛時に市販薬を服用することはある」と回答した方々のコメントを見てみましょう。
約4割の医師が市販薬の服用に肯定的
- 50代男性 消化器内科 「多少ある」
太田胃散や正露丸を飲むことが多いです。 - 60代男性 一般内科 「多少ある」
時々家にある正露丸を飲みます。 - 40代男性 一般内科 「多少ある」
整腸剤でビオフェルミンなどを内服します。 - 40代男性 消化器内科 「多少ある」
飲みすぎ、食べ過ぎが明らかな場合は市販薬を飲みます。 - 50代男性 一般内科 「多少ある」
食べ過ぎで痛むときには、消化薬を飲むことがあります。 - 60代男性 一般内科 「多少ある」
急性の場合には服薬で改善することが多いです。 - 60代男性 消化器内科 「多少ある」
どうしても痛い時には飲みます。 - 60代男性 一般内科 「多少ある」
改善がないようであれば受診してください。 - 60代男性 一般内科 「大いにある」
取り敢えず正露丸を摂取します。 - 60代男性 総合診療科 「大いにある」
下痢の時は整腸剤を服用します。これで治ることが多いです。
回答した医師のおよそ4割が、腹痛時に市販薬を服用することがあるとの見解を示し、否定的な意見を述べた方々と比べると少し下回る結果となりました。
医師のコメントでも目立ったのが「正露丸」を推す声。日本の家庭薬としては、ロングセラーで私たちも馴染みのある名前ですが、複数の医師が具体的に挙げていることを考えると、良い薬なのかもしれません。
また、食べ過ぎ・飲み過ぎの場合や緊急性が高い場合などには、市販薬を服用し改善を試みるという声もいくつか寄せられました。
先に紹介した否定的な意見の中にもありましたが、「下痢の時は整腸剤を服用する」との声もあり、今回の調査で回答していただいた医師の方々の中には、整腸剤で下痢を和らげるという方が何人かいました。
しかし、「改善がないようであれば受診」とのコメントも頂いており、市販薬を服用しても改善が見られなければ、医師の診察を受けるようにしましょう。
医師の間では、腹痛時の市販薬を「飲まない」派が上回る結果に
本調査の結果、「ご自身の腹痛時に胃薬や整腸剤などの市販薬を服用することはありますか」という質問に対し、「ほとんどない」、「あまりない」と回答した医師が全体の約6割、「多少ある」、「大いにある」と回答した医師が全体のおよそ4割という結果になりました。
どちらの回答でも、下痢だとわかっている場合は整腸剤などの市販薬を服用するといったコメントもありましたが、原因が分からないまま市販薬を飲んでも効果は期待できないといった医師の声も多くみられました。
我々が思っている以上に、医師のなかでは腹痛の際の市販薬の使用には消極的なようですね。正露丸や太田胃散などを推す声も見られましたが、腹痛の原因がわからず、症状がつづく場合は、むやみに市販薬に頼るのではなく、医師の診断をあおぐことも大事そうです。