食後お腹がいたくなってしまった経験のある方は多いのではないでしょうか。
食べたものが悪かったのか、食べ過ぎたのか?と考えを巡らせることもあるかと思いますが、本当のところ、どのようなことが原因で腹痛が起きているのか気になりませんか?
そこで今回は、医師526名に「食後に腹痛が起こる原因で多いものは何か」について聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年7月25日〜7月26日にかけて行われ、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療医の526名から回答を頂きました。
食後に腹痛が起こる原因として考えられるものとは?
「食後に腹痛が起こる原因で多いものは何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
- 機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
- 過敏性腸症候群
- 炎症性腸疾患
- 胆石症
- 急性胆のう炎・胆管炎
- 急性膵炎
- ストレス
- 食中毒
- 食べ過ぎ
- ピロリ菌感染
- 免疫異常
- 加齢
- その他
以下が結果となります。
集計の結果、食後に腹痛が起こる原因で多いものは「食べ過ぎ」と「胃潰瘍」との回答が同数で最多となり、次に「胆石症」が続きました。
それでは、上位3つの医師のコメントを見ていきましょう。
食べ過ぎは胃腸に負担をかける
- 50代男性 総合診療科 「食べ過ぎ」
消化に負担がかかると起きやすいと思います。 - 50代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
食事にある程度時間をかけると、腹痛は減ります。 - 60代男性 消化器内科 「食べ過ぎ」
胃腸機能が弱いことが基礎にあると思います。 - 50代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
消化吸収が追いつかないことが原因である場合が多いと思います。 - 60代男性 消化器外科 「食べ過ぎ」
食後に腸管蠕動が亢進して痛くなる場合があり、排便を促します。 - 40代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
薬を内服する以前に、排便をすると症状が治まるため食べ過ぎかと思います。 - 60代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
食後であれば食べ過ぎが最も考えられると思います。 - 50代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
自身の経験では食べ過ぎだけです。 - 50代男性 一般内科 「食べ過ぎ」
頻度からすれば、食べ過ぎが最も多くなるでしょう。 - 50代男性 消化器内科 「食べ過ぎ」
空腹時の腹痛は胃潰瘍、食後の腹痛は十二指腸潰瘍と習いました。もちろん、急性胆嚢炎もありますが。
「食べ過ぎ」が原因だと考える医師では、「消化吸収が追いつかない」、「消化に負担がかかる」との意見や、「食後に腸管蠕動が亢進して痛くなる場合がある」との声が見られました。
食べ過ぎによって腹痛が起こる理由として、こういったことが考えられているようです。
ほかにも、胃腸機能が弱いことが挙げられたことから、たびたび食後にお腹を壊す方は胃腸機能が低下している可能性も考えられます。
また、「食事にある程度時間をかけると腹痛は減る」とのアドバイスも寄せられています。
食べ過ぎによる腹痛では、もちろん食べすぎないようにすることも大切です。
しかし、ゆっくりと食べることで症状の頻度が減るケースもあるようですので、食事をする際はこのようなことに気をつけてみることをおすすめします。
続いて、「胃潰瘍」と回答した医師のコメントを見ていきましょう。
食べ過ぎでないときは胃潰瘍の可能性も
- 40代男性 一般内科 「胃潰瘍」
食べ過ぎで痛くなる以外は胃潰瘍などが多いです。 - 60代男性 消化器内科 「胃潰瘍」
胃潰瘍は食後の痛みが古典的です。 - 40代男性 消化器外科 「胃潰瘍」
胃酸分泌増量により胃潰瘍は増悪します。 - 40代女性 一般内科 「胃潰瘍」
様々な疾患が想像できますが、胃潰瘍が多い気がします。 - 60代男性 一般内科 「胃潰瘍」
通常、食後の腹痛があるときは、まず胃潰瘍を念頭に置きます。 - 40代男性 総合診療科 「胃潰瘍」
潰瘍は食物の刺激があると思います。 - 30代女性 消化器外科 「胃潰瘍」
潰瘍性病変には注意する必要があると思います。 - 40代男性 一般内科 「胃潰瘍」
胃酸分泌などに問題があるケースをちらほら見かけます。
「胃潰瘍」との回答では、胃酸の分泌について指摘するコメントがいくつか見られました。
「胃酸分泌増量により胃潰瘍は増悪します。」とコメントした医師もいらっしゃり、胃酸が増えることにより胃潰瘍がひどくなる可能性もあるようです。
さらに、「食べ過ぎで痛くなること以外は胃潰瘍などが多い」との見解もありました。明らかに食べすぎではないとわかる場合、何かしらの疾患を疑うようです。
また、「潰瘍性病変には注意する必要がある」との指摘も頂いており、食後の腹痛が続く場合は、病院を受診するなどして早めに対処するようにしましょう。
胃潰瘍については、以下のように説明されています。ぜひご一読ください。
胃潰瘍
“胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つき、痛みを感じたり出血を起こす病気のことです。胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称して消化性潰瘍とも呼びます。”
(引用 :胃潰瘍 | e-ヘルスネット 厚生労働省)
最後に、「胆石症」と回答した医師のコメントを見ていきましょう。
胆石症と回答した医師
- 30代男性 消化器内科 「胆石症」
臨床では胆石発作が多い印象です。 - 60代男性 一般内科 「胆石症」
脂っぽいものを食べたら、胆石かもしれません。 - 50代男性 一般内科 「胆石症」
胆石発作(油物を食べた後)が要注意です。 - 60代男性 消化器内科 「胆石症」
基礎疾患で胆石などあれば、油物の摂取で胆石発作が出ると思います。 - 50代男性 一般内科 「胆石症」
胆石症では食後の腹痛がよくあります。 - 40代 消化器外科 「胆石症」
胆石は非常に多いと感じます。 - 70代男性 消化器内科 「胆石症」
常に起こるのなら胆石か潰瘍かと思われます。 - 50代男性 消化器外科 「胆石症」
特に、脂質の過食は良くありません。
胆石症と考える医師では、「胆石発作(油ものを食べた後)が要注意」、「基礎疾患で胆石などあれば、油物の摂取で胆石発作が出る」とのコメントが見られたことから、油物を摂取して症状が出た場合は胆石症の可能性も考えられるようです。
脂質の過食は良くないと考える医師もいらっしゃり、普段の食事で脂質摂取の多い方は、自身の食生活を見直すのが大事そうですね。
胆石症については、以下のように説明されています。ご存じないという方は、ぜひご一読ください。
胆石症
“胆石症は,胆嚢内に1つまたは複数の結石(胆石)が存在する病態である。先進国では,成人の約10%と65歳以上の高齢者の20%で胆石がみられる。胆石は無症状のことが多い。最もよくみられる症状は胆道仙痛であり,胆石によって消化不良や高脂肪食に対する不耐症が生じることはない。”
食後に腹痛が起こる原因は、食べ過ぎ・胃潰瘍・胆石症が多い
本調査によれば、食後に腹痛が起こる原因で多いものは、「食べ過ぎ」、「胃潰瘍」、「胆石症」が上位を占めるという結果になりました。
「食べ過ぎ」が原因の場合には、消化に負担がかかることや、食後に腸管蠕動が亢進して痛くなる場合があることなどが理由として挙げられていました。
この場合は、食べる量を減らすほかに、時間をかけて食べると症状緩和に良いと考えられているようです。
一方で「胃潰瘍」は、胃酸の分泌が関係しているようです。潰瘍性病変には注意する必要があるとの懸念の声もあり、食べ過ぎではなく食後に腹痛が起こった場合は、胃潰瘍の可能性が考えられるため、医師の診察を受けた方が良さそうです。
また、油物を摂取して腹痛になった場合は胆石症の可能性もあるようでした。
食後の腹痛が続く場合、胃潰瘍や胆石症をはじめ疾患が隠れているかもしれませんので、自己判断せず一度病院を受診してみても良いかもしれません。