なんだか目の見え方に違和感がある。視野に白いモヤがかかってしまうけれど、一体どうすればいいんだろう。
そんな突然の目の不調に、戸惑う方もおられるのではないでしょうか。何か病気にかかってしまったのではないか、病院を受診した方がいいかなど、気になることも多いと思います。
そこで今回は、眼科医133人に、目に白いモヤがかかる症状がある場合に考えられる病気は何か、他にどんな症状がある場合は病院を受診するべきかについて聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年9月2日~2018年9月3日にかけて行われ、眼科医133人から回答を頂きました。
視野に白いモヤがかかる時ってどんな病気が考えられる?
まずは、「視野に白いモヤがかかる症状がある場合、よく見られる疾患として当てはまるものは何ですか。」という質問に対して、次の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- 白内障
- ぶどう膜炎
- 網膜剥離
- ドライアイ
- 緑内障
- 視神経炎
- 糖尿病網膜症
- 網膜静脈閉塞症
- 中心性漿液性網脈絡膜症
- 加齢黄斑変性症
- 眼精疲労
- 片頭痛(閃輝暗点症含む)
- 脳腫瘍
- 屈折異常
- 脳梗塞・脳出血(くも膜下出血含む)
- 一過性黒内障
- その他
以下のグラフが結果となります。
集計結果では、「白内障」との回答が85%と一番多く、次に「ぶどう膜炎」、「網膜剥離」が続きました。
上位2つの「白内障」と「ぶどう膜炎」への医師からの支持はどちらも7割を超えており、視野に白いモヤがかかる際にはこれらの病気を原因として疑ってみてもよさそうです。
まずは上位の病気の概要をおさえた後に、医師のコメントを見ていきましょう。
白内障とは
白内障はカメラのレンズに相当する目の中の水晶体が濁ってくる病気です。老化現象の一種で、ほとんどの人は年をとるとこの病気になります。水晶体には見たものを目の底(網膜)に映し出す働きがありますが、白内障になると映りが悪くなり、かすんで見えるようになります。他の症状として、光をまぶしく感じたり、二重に見えたりすることもあります。進行して最終的に真っ白に濁ると何も見えなくなります。
引用:白内障|土浦市医師会
ぶどう膜炎とは
ぶどう膜は血管や色素が豊富な組織で、前方にある虹彩(茶色目の部分)、毛様体、眼底の奥にある脈絡膜から成り立っています。何らかの原因で、これらの組織に起きた炎症を「ぶどう膜炎」といいますが、ぶどう膜に接する網膜(カメラのフィルムに該当)や強膜(白目)に炎症が起きた場合も含みます。
引用:ぶどう膜炎|徳島県医師会
網膜剥離とは
網膜は光を感じてそれを伝える神経網膜と、その土台になっている網膜色素上皮の二層に分かれていて、神経網膜がその下の色素上皮から剥がれるのが網膜剥離です。
引用:網膜剥離|日本眼科医会
目に白いモヤがかかる場合、白内障が多い
- 20代男性 眼科 「白内障」
時間経過や視野異常の場所によって、詳しい疾患は判断します。 - 40代男性 眼科 「白内障」・「ドライアイ」
上記疾患は、いずれも可能性としてあるので念頭におく必要があります。頻度としては、白内障とドライアイが圧倒的に多いです。 - 50代男性 眼科 「白内障」
白く見えるにも色々な可能性があると思います。 - 50代男性 眼科 「白内障」
よくみられるのは、白内障で、濁っているので白く見えます。 - 50代男性 眼科 「白内障」
白内障の絶対数が多いです。 - 30代男性 眼科 「白内障」
人によって症状の言い方がまちまちな印象です。 - 40代男性 眼科 「白内障」
診断には眼底検査のみならずOCTも必要です。 - 20代女性 眼科 「白内障」・「ドライアイ」
白内障もしくは角膜疾患が考えられます。
医師の回答を見ると、「白内障」との声が多数挙がっていました。
視野に白いモヤがかかるという症状もよく当てはまり、患者数としても「白内障」が多いようです。
ほかには、診断にあたって眼科での眼底検査やOCT(光干渉断層計)といった検査の必要性を強調するコメントもありました。
また症状の時間経過や視野異常の発生場所によっても、考えられる病気は変わるようです。
病院の受診をするのであれば、自身の目の症状は詳しくチェックして、正しく医師に伝えるようにしましょう。
ぶどう膜炎も考えられるが、判断には検査が必要
- 50代女性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」・「網膜剥離」・「ドライアイ」・「一過性黒内障」
白いモヤがかかるというだけでは、症例を絞り込むのは難しいです。 - 40代男性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」・「ドライアイ」
頻度として多いのは白内障・ドライアイです。ぶどう膜炎も時々あります。 - 50代女性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」・「網膜静脈閉塞症」・「糖尿病網膜症」・「加齢黄斑変性症」・「網膜剥離」・「ドライアイ」・「一過性黒内障」
眼科の診療では、患者の訴えで決めつけないで全ての所見をとるようにしています。先入観は禁物です。 - 40代男性 眼科 「ぶどう膜炎」・「視神経炎」・「白内障」・「眼精疲労」
モヤが動くかどうかで鑑別が変わります。 - 30代女性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」
白内障、ぶどう膜炎でモヤがかかった症状がでます。 - 30代男性 眼科 「ブドウ膜炎」・「網膜剥離」
白いモヤでも、いつ頃にその症状は起きたか、今はどうなっているかによって判断は変わるので、もう少し情報が必要です。 - 40代男性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」・「緑内障」・「ドライアイ」
モヤがかかる程度で視力低下でない訴えをされる患者さんは、たいてい白内障やドライアイなどのあまり深刻ではない原因が多いです。しかし中にはぶどう膜炎や視野欠損がある緑内障が含まれていることがあるので、慎重に対応する必要があります。 - 30代女性 眼科 「ぶどう膜炎」・「白内障」・「網膜静脈閉塞症」・「糖尿病網膜症」・「加齢黄斑変性症」・「網膜剥離」・「ドライアイ」・「眼精疲労」
かなり進行した視力低下であっても、片眼の場合気づかない場合もあります。また、患者さんの表現と所見が一致しない場合もあるため、上記のどの疾患でも起こりうると思います。 - 50代男性 眼科 「ぶどう膜炎」
眼内炎による混濁がモヤになります。
次にコメントで多かったのは、「ぶどう膜炎」との意見です。
先に記載した概要説明にもあるように、「ぶどう膜炎」は目の中の炎症が原因で混濁が起こり、それが白いモヤとなって症状に現れます。
医師のコメントでは、白内障やドライアイに比べ発生頻度は低いものの、より深刻な病気なので、慎重な対応が必要とありました。
また視野に白いモヤがかかるという症状のみから、具体的な病名を判断するのは難しいとの医師の意見がありました。
気になるようであれば、病院を受診し、診察の際はいつ頃から症状が起き、どのように変化したかなど、詳細も伝えられるように準備しましょう。
併せてどんな症状があったら急いで受診した方がいいの?
続いて、「視野に白いモヤがかかる症状がある場合、どのような随伴症状があれば受診を急ぐべきですか。」という質問に対して、次の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- 視野の歪み
- 飛蚊症
- 目の充血
- 目の奥の痛み
- 羞明
- 異物感
- 目のかゆみ
- その他
- 特になし
以下のグラフが結果となります。
こちらの調査では、「視野の歪み」と回答している医師が62%と一番多く、次に「飛蚊症」、「目の充血」が続きました。
「視野の歪み」と「飛蚊症」はどちらも過半数を占める医師の支持があり、これらの随伴症状は特に注意が必要といえそうです。
それでは、医師のコメントを見ていきましょう。
視野の歪みは、網膜剥離や加齢黄斑変性症の可能性あり
- 40代男性 眼科 「視野の歪み」
網膜剥離などの器質的異常は早い受診が必要です。 - 50代男性 眼科 「視野の歪み」
網膜剥離は急ぐべきです。 - 50代男性 眼科 「視野の歪み」
歪みがあれば、網膜剥離の可能性もあります。 - 50代男性 眼科 「視野の歪み」
眼底疾患は緊急性の高い疾患があります。 - 40代女性 眼科 「視野の歪み」
症状が続く場合は要注意です。屈折異常、眼精疲労の場合は症状が出ない時間もあります。 - 40代男性 眼科 「視野の歪み」
加齢黄斑変性症は早期の対応が必要です。 - 40代男性 眼科「視野の歪み」
黄斑部の疾患を疑います。 - 40代男性 眼科 「視野の歪み」
急激な視力低下を伴う場合は、なるべく早い受診が望ましいです。 - 50代女性 眼科 「視野の歪み」
網膜の異常なら早めの治療が有効です。
一番多く見られたコメントは、「視野の歪み」というものでした。
考えられる病気として医師のコメントで名前が挙がっていたのは、「網膜剥離」と「加齢黄斑変性症」です。「加齢黄斑変性症」の概要もおさえておきましょう。
加齢黄斑変性症とは
加齢黄斑変性症は、人や物を見分けるのに戸惑ったり、文字が読みにくかったりなどが特徴の目の病気です。眼底の網膜の中央にある黄斑部が傷害されるもので、網膜はフィルムに例えられますが、場所によって見え方が異なり、一番良く見えるのが眼底の中央にある黄斑部です。年を取って黄斑部の障害が起き、ゆがみ・視力低下を生じるのが加齢黄斑変性症で最近増加しています。
「網膜剥離」も「加齢黄斑変性症」も早期の治療が必要な病気なようです。
医師のコメントによれば、特に歪みの症状が続く場合や、急激な視力低下を伴う場合は病院での早期の対応が望ましいとのことでした。
視野に白いモヤに加えて歪みが続く際や急激な視力低下を伴う際には、眼科でしっかり検査を受けていただき、症状の原因を特定しましょう。
飛蚊症もある場合は、網膜剥離やブドウ膜炎の可能性も
- 40代男性 眼科 「飛蚊症」・「視野の歪み」
痛みを伴う場合は眼圧上昇の可能性があります。視野の歪みや飛蚊症があれば網膜疾患の可能性があります。いずれにしても受診を急ぐべきです。 - 50代男性 眼科 「飛蚊症」・「羞明」・「目の充血」
普段は自覚しない症状が出現したのならば、いずれにせよ早めに受診した方が良いと思います。ぶどう膜炎などを疑わせる羞明、目の充血、飛蚊症などがあれば早めの受診が必要です。 - 50代男性 眼科 「飛蚊症」・「視野の歪み」
網膜剥離の場合、出血を伴う事が多いため、上記の症状が出ることがあります。 - 40代男性 眼科 「飛蚊症」・「目の充血」
目の充血はぶどう膜炎、飛蚊症はぶどう膜炎や、網膜剥離の場合があります。 - 30代男性 眼科 「飛蚊症」
飛蚊症を伴う場合は網膜剥離の可能性があり、早期の対応が必要です。 - 50代男性 眼科 「飛蚊症」・「視野の歪み」・「目の充血」
飛蚊症は細かい粒がたくさん見えるようなら要注意です。 - 50代女性 眼科 「飛蚊症」・「目の充血」
随伴症状が揃っていると診断しやすいが、そうでない場合が多いです。
次にコメントで多かったのは、「飛蚊症」とする意見です。まず「飛蚊症」という言葉をおさえましょう。
飛蚊症とは
「目の前に虫が飛ぶ」状態を飛蚊症(ひぶんしょう)と言います。飛んでいるものは蚊や虫であったり、糸くずや丸い輪であったりします。色も透明なものから黒いものまでさまざまで、数も1個から数個、あるいは多数のこともあります。目を動かすと一緒についてきます。手で払っても無くならず何ともうっとうしいものです。飛蚊症は明るく背景がコントラストのない均一な場所で強くなります。
引用:飛蚊症|兵庫県医師会
飛蚊症の見え方は人によって異なるみたいですが、医師のコメントによれば、細かい粒がたくさん見える際に注意が必要とありました。
また、これらの症状から考えられる病気には、「網膜剥離」と「ぶどう膜炎」が挙がっていました。
医師のコメントによれば、「網膜剥離」の場合は出血も伴うことが多いため、これらの症状が出るようです。「ぶどう膜炎」の場合は目の充血や羞明(眩しさ)なども症状に出ることがあるようです。
一方で、上記のような疾患は、先に挙げた随伴症状が揃っていない場合でも発症していることがあるようです。気になる症状が1つでもある場合は、眼科での検査を検討しましょう。
白内障の可能性もあり。視野の歪みもある場合は、眼科の受診も検討しよう
本調査によると、視野に白いモヤがかかる症状がある場合、よく見られる疾患として当てはまるものは、「白内障」との回答が一番多く、次に「ぶどう膜炎」、「網膜剥離」が続きました。
白いモヤという症状の特徴は、「白内障」に良くあてはまるようです。
また、視野に白いモヤがかかる症状がある場合、どのような随伴症状があれば受診を急ぐべきですかという質問については、「視野の歪み」と回答している医師が一番多く、次に「飛蚊症」、「目の充血」が続きました。
「視野の歪み」や「飛蚊症」がある場合は、目の病気として網膜剥離やぶどう膜炎などが疑われる症状のようです。
早期の対応が求められる病気のようなので、これらの随伴症状が出てしまった際には優先して眼科の受診を検討しましょう。
今回は、視野に白いモヤがかかる症状がある場合の考えられる病気は何か、他にどんな症状がある場合は病院を受診するべきかについてみてきました。
見えるのが当たり前だった視野に異変が出ると、誰でも不安になり焦ってしまうと思います。
眼科に行けば各種検査も受けられ、その後の対応策も指示してもらえると思います。一人で抱え込まずに、なるべく専門医に相談するようにしましょう。