腹痛に見舞われ、苦しい思いをしたことがある方は多いのではないでしょうか。
そのような状況の中、追い打ちをかけるように高熱まで出ることがあるようです。腹痛の原因疾患によって高熱まで生じることはあるのでしょうか。
もしあるのならば、それはどのような疾患なのか、またどの診療科を受診すれば良いのかも併せて知っておいた方が安心ですよね。
そこで今回は、腹痛を起こす病気によって高熱が出ることはあるか、腹痛と高熱を同時に引き起こす疾患で多いものは何か、腹痛と高熱が出ている場合に行くべき診療科目は何かについて、一般内科、消化器内科、消化器外科、総合診療科、計523名の医師に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https:/ /medpeer.jp/)にて、2018年9月4日に行われ、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療科医の計523名から回答を頂きました。
腹痛を引き起こす病気で、高熱が出ることはある?
まずは、「腹痛を起こす病気によって高熱が出ることはありますか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 大いにある
- ときどきある
- あまりない
- ほとんどない
以下が結果となります。
- 50代男性 一般内科 「ときどきある」
イレウスなどの場合は高率にあるように思います。 - 60代男性 消化器内科 「ときどきある」
腹膜炎を起こしているときは、細菌感染がひどければ高熱を発生することが多いです。 - 60代男性 消化器外科 「ときどきある」
炎症疾患の可能性が高く、腹膜炎の診断が大事です。 - 50代男性 一般内科 「ときどきある」
虫垂炎は発熱しますし、胃腸炎もウイルスだと熱が出ます。 - 50代男性 消化器外科 「ときどきある」
炎症性疾患で感染を伴うものは高熱が出ます。 - 40代男性 一般内科 「大いにある」
消化器に炎症があれば、発熱は起こりえます。 - 30代男性 消化器内科 「大いにある」
感染や炎症が強いときは起こります。 - 50代男性 一般内科 「あまりない」
高熱よりも微熱のことが多いです。 - 50代男性 消化器内科 「ほとんどない」
基本あまりありません。
今回の調査では、腹痛を引き起こす病気によって高熱が出ることは「ある」と回答した医師が84%(「ときどきある)64%、「大いにある」20%を合わせて)となりました。
医師のコメントによれば、細菌感染や炎症疾患がある場合、腹痛に加えて高熱が出るとのコメントが寄せられました。
その代表的な疾患として、イレウス、腹膜炎、虫垂炎、胃腸炎が挙げられています。
このような病気にかかったときは腹痛と高熱を引き起こす可能性が高いようです。
また、「消化器に炎症があれば、発熱は起こりえる」との意見も見られたことから、消化器にトラブルが発生しているときに発熱しやすいのかもしれません。
さらに、微熱の場合もあるとの意見も寄せられており、高熱ではないからと油断しないほうがよさそうです。
腹痛と高熱を引き起こす疾患とは?
続いて、「腹痛と高熱を同時に引き起こす疾患で多いものは何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 感冒
- 感染性胃腸炎、食中毒
- 急性虫垂炎
- 急性膵炎
- 急性胆嚢炎、胆管炎
- 腎盂腎炎
- 悪性腫瘍
- 大腸憩室炎
- 炎症性腸疾患
- 腸閉塞
- その他
以下が結果となります。
- 60代男性 消化器内科 「感染性胃腸炎、食中毒」
サルモネラなど感染性胃腸炎で多かった気がします。 - 60代男性 一般内科 「感染性胃腸炎、食中毒」
腸には大腸菌がいるので、細菌感染を併発もするからです。 - 60代男性 消化器内科 「感染性胃腸炎、食中毒」
感染症を合併すれば当然ながら高熱が出ます。 - 30代男性 総合診療科 「感染性胃腸炎、食中毒」
頻度としては感染症ですが、炎症を起こすものはなんでもありえます。炎症でなくても熱は出ていることが多いです。 - 60代男性 消化器内科 「急性胆嚢炎、胆管炎」
最も重篤なのは急性胆嚢炎、胆管炎です。 - 60代男性 一般内科 「急性胆嚢炎、胆管炎」
胆道系の感染が多いですね。 - 50代男性 消化器外科 「急性胆嚢炎、胆管炎」
たぶん入院が必要となる場合が多いと思います。 - 60代男性 一般内科 「急性虫垂炎」
虫垂炎を疑いますが、急性腸炎だったこともあります。緊急疾患は必ず除外が必要です。 - 60代男性 一般内科 「急性虫垂炎」
とくに虫垂炎や腎盂腎炎では生じやすいです。 - 40代男性 一般内科 「急性虫垂炎」
急性虫垂炎に注意が必要です。
集計の結果、腹痛と高熱を同時に引き起こす疾患で多いものは、「感染性胃腸炎、食中毒」と考える医師が最も多く、次に「急性膵炎」、「急性虫垂炎」が続きました。
医師のコメントからは、サルモネラなどの感染性胃腸炎が頻度として多いとの意見が見られ、「腸には大腸菌がいるため細菌感染を併発する」とのコメントも寄せられました。
一つ目の質問で触れられていた通り、細菌感染で腹痛と高熱を引き起こすケースは多いようですね。
また急性胆嚢炎、胆管炎との回答では、「入院が必要となる場合が多い」、「最も重篤なのは急性胆嚢炎、胆管炎です」との声が挙げられ、緊急性が高そうです。
虫垂炎と考える医師からは、「虫垂炎を疑いますが急性腸炎だったこともあり緊急疾患は必ず除外が必要です」との意見が寄せられました。
腹痛と高熱を同時に引き起こす疾患で多いものは調査の結果通りであるものの、実際は異なる可能性もあるため、きちんと病院で診断してもらうことが大切なことがわかります。
腹痛と高熱が出ているとき、行くべき診療科目は?
最後に「腹痛と高熱が出ている場合に行くべき診療科目は何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 一般内科、総合診療科
- 消化器内科
- 消化器外科
- 救急科
- その他
以下が結果となります。
- 50代男性 消化器内科 「消化器内科」
消化器内科での原因精査が必要です。 - 40代男性 一般内科 「消化器内科」
消化器内科が他領域の疾患の鑑別含めて適切だと思います。 - 40代男性 消化器外科 「消化器内科」
消化器内科で診断を行い、必要な場合に外科に紹介します。 - 30代男性 一般内科 「消化器内科」
感染性胃腸炎のことが多いためです。 - 50代男性 一般内科 「一般内科、総合診療科」
必ずしも消化器疾患ではないので、総合診療の鑑別後かなと思います。 - 50代男性 総合診療科 「一般内科、総合診療科」
原因特定のためには多方面からの検査が重要です。 - 40代女性 消化器内科 「一般内科、総合診療科」
まずは問診、理学所見、ついて採血、画像検査です。 - 50代男性 消化器外科 「消化器外科」
オペの判断も含めて消化器外科が良いと思います。 - 60代男性 一般内科 「救急科」
外科的対応と内科的対応のどちらが必要かの見極めが必要でしょう。 - 40代男性 一般内科 「その他」
病状によると思います。
本調査では、腹痛と高熱が出ている場合に行くべき診療科は、「消化器内科」と回答した医師が49%と最も多く、そのあとを「一般内科、総合診療科」が35%、「消化器外科」が9%と続きました。
約半数を占めた「消化器内科」と回答した医師からは、理由として他領域の疾患の鑑別を含めて適切であり、必要な場合に外科に紹介するといった見解が得られました。また、感染性胃腸炎のことが多いからとの声も。
次に回答が多かった「一般内科、総合診療科」と回答した医師からは、原因特定のためには多方面からの検査が重要であり、必ずしも消化器疾患ではないことが挙げられました。
以上を踏まえると、まずは多方面から疾患の鑑別を行ない、必要に応じて他科へ紹介すると良いと考えている医師が多いことがわかります。
腹痛と高熱の症状があり、どの診療科を受診すべきか迷っている方は、この調査結果も参考にしていただけたらと思います。
腹痛と高熱を伴う際は、消化器内科、一般内科などへ受診を
本調査によれば、腹痛を起こす病気によって高熱が出ることは「ある」との回答が大きな割合を占めました。
理由として、細菌感染や炎症疾患がある場合はあるとのコメントが寄せられました。
さらに、「消化器に炎症があれば、発熱は起こりえる」との意見も見られたことから、消化器にトラブルが発生しているときに発熱しやすいのかもしれません。
続いて、腹痛と高熱を同時に引き起こす疾患で多いものは「感染性胃腸炎、食中毒」と考える医師が最も多く、次に「急性膵炎」、「急性虫垂炎」が続きました。
しかし、実際には異なる疾患である可能性を指摘したコメントもみられており、やはりきちんと病院で診断してもらうことが大切なようです。
最後に、腹痛と高熱が出ている場合に行くべき診療科について聞いてみたところ、「消化器内科」、次に「一般内科、総合診療科」が良いと考える医師が多いことがわかりました。
まずは消化器内科や一般内科で多方面から疾患の鑑別を行ない、必要に応じて他科へ紹介すると良いとのこと。現在、腹痛と高熱の症状があり、どの診療科を受診すべきか迷っている方は、この調査結果も参考にしていただけたらと思います。