腹痛を経験したとき、お腹のどの辺りが痛んだか覚えている方はいらっしゃいますか?
インターネットで検索してみると、腹痛と言っても痛む箇所によって原因疾患が異なることがあるようです。
では、左下腹部が痛むような場合にはどのような疾患が考えられるのでしょうか。
そこで今回は、左下腹部に痛みを感じる場合に疑われる病気で多いものは何か、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療科医の計523名の医師に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https:/ /medpeer.jp/)にて、2018年9月4日に行われ、一般内科医、消化器内科医、消化器外科医、総合診療科医の523名から回答を頂きました。
左下腹部が痛むときに、疑われる病気とは?
「左下腹部に痛みを感じる場合に疑われる病気で多いものは何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらいコメントを頂きました。
- 便秘症
- 急性腸炎
- 急性虫垂炎
- 大腸憩室炎
- 炎症性腸疾患
- 過敏性腸症候群
- 腸閉塞
- 腸ねん転
- 急性膵炎
- 腎盂腎炎
- 尿路感染(尿道炎、膀胱炎など)
- 膀胱腫瘍
- 尿路結石
- 尿閉
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 卵巣出血など卵巣・卵管の病気
- 大動脈瘤・大動脈解離など血管の病気
- その他
以下が結果となります。
集計の結果、「便秘症」との回答が群を抜いて最も多く回答され、そのあとを「大腸憩室炎」、「急性腸炎」が続きました。
まずは、上位3つの疾患についておさえておきましょう。
便秘症
“便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、または排便後に直腸が完全に空になっていない感覚(残便感)がある状態です。”
大腸憩室炎
“憩室炎(けいしつえん)は、1つ以上の風船状の袋(憩室)に炎症または感染症が起きた状態です。
・通常、憩室炎は結腸に起こります。
・左下腹部の痛み、圧痛、発熱は、典型的な憩室炎の症状です。”
急性腸炎
“ 腸の中には,食べ物(人にとっては異物)や細菌などが存在し,それに対して人の体はいろいろな細胞(リンパ球や白血球など)や抗体をつくり,異物や細菌か ら体を守ろうとする働きを持っています.このような働きのバランスがくずれて,腸の一部または全体に炎症,出血,壊死(細胞が部分的に死ぬこと)などがお こることを腸炎といいます.”
(引用:腸炎 — 日本小児外科学会)
では、それぞれ医師のコメントを見ていきましょう。
便秘症と回答した医師
- 30代男性 一般内科 「便秘症」
小児だと便秘症の頻度が多いです。 - 40代男性 一般内科 「便秘症」
便秘が多い印象ですね。 - 60代男性 一般内科 「便秘症」
頻度として多いのは腸管疾患、特に便秘ではありますが、重篤な疾患の鑑別が重要であると思います。 - 60代男性 消化器内科 「便秘症」
左側はほとんどが便秘性か女性であれば生殖器を疑います。 - 40代男性 一般内科 「便秘症」
便秘や腸炎や炎症性腸疾患や尿路感染等を考えます。 - 40代男性 一般内科 「便秘症」
便秘や憩室炎、下腸間膜動脈領域の虚血性腸炎などが経験的には多い印象です。 - 60代男性 一般内科 「便秘症」
高齢者は便秘が多いと思います。 - 50代男性 消化器内科 「便秘症」
下剤を飲んで便が出る時も左下が痛むことが多いです。 - 40代男性 一般内科 「便秘症」
浣腸でよくなることが多いですので。 - 30代男性 消化器内科 「便秘症」
消化器、泌尿器を考えます。婦人科は除外疾患ですね。
便秘症と回答した医師からは、便秘症だけでなく憩室炎や虚血性腸炎などの腸疾患、尿路感染症といった疾患もコメントで挙げられました。
特に便秘は小児、高齢者に多いというコメントもあり、年齢によっては便秘が多い傾向があるようです。
さらに、女性であれば生殖器を疑うとの見解もあり、年齢だけでなく性別によっても便秘以外の可能性を考慮しなければならないことがわかります。
また、「頻度として多いのは腸管疾患、特に便秘ではありますが、重篤な疾患の鑑別が重要であると思います。」とコメントしていた医師もおられたことから、頻度が高いからといって便秘だろうと決めつけず、まずはコメントで挙げられたような重篤な疾患を鑑別することが大事だと考えられているようです。
続いて、大腸憩室炎と回答した医師のコメントを見ていきましょう。
大腸憩室炎と回答した医師
- 40代男性 消化器外科 「大腸憩室炎」
高齢者については特に危険性があります。 - 40代男性 消化器外科 「大腸憩室炎」
左下腹部は憩室炎のことが多いと思います。 - 50代男性 一般内科 「大腸憩室炎」
憩室炎で穴があくことがあります。 - 30代男性 消化器内科 「大腸憩室炎」
左下腹部に痛みを感じる場合に疑われる病気で多いものは、やはり腸かと思われます。 - 50代男性 一般内科 「大腸憩室炎」
痛みの強さや性状、随伴症状にも注意が必要です。
続いて大腸憩室炎と回答した医師からは、「高齢者については特に危険性があります。」とのコメントをいただきました。
便秘症のときもそうでしたが、高齢者の場合はこのような疾患に注意が必要となるようです。
また、「痛みの強さや性状、随伴症状にも注意が必要」との見解もありました。痛む箇所だけでなく、その痛み方や他の随伴症状にも気を配った方が良いのかもしれませんね。
なかには、「憩室炎で穴があくこともある」との意見もみられたことから、大事になる前に早めに病院を受診した方が良さそうです。
最後に、急性腸炎と回答した医師のコメントをみていきましょう。
急性腸炎と回答した医師
- 30代男性 一般内科 「急性腸炎」
夏場、冬場の急性腸炎による腹痛は多いです。 - 60代男性 一般内科 「急性腸炎」
頻度が高いのは腸炎だと思います。 - 40代男性 消化器内科 「急性腸炎」
左側になる臓器由来を考えます。 - 60代男性 一般内科 「急性腸炎」
開業医なので、絶対数では腸炎が多いように思います。 - 30代男性 消化器内科 「急性腸炎」
左下腹部に痛みを感じる場合に疑われる病気で多いものは、やはり腸かと思います。
急性腸炎と回答した医師のコメントを見ると、左下腹部に痛みを感じる場合は腸に原因疾患があるとした意見が見られました。
他の回答にもあった通り、やはり腸に原因がある可能性が高そうです。
また、なかには、「夏場、冬場の急性腸炎による腹痛は多い」と述べた医師もいらっしゃいました。このことから、季節にも関係することがうかがえますね。
左下腹部が痛む場合は便秘症、大腸憩室炎、急性腸炎の可能性が高い
本調査によれば、左下腹部に痛みを感じる場合に疑われる病気は「便秘症」が最も多くの支持を集め、次に「大腸憩室炎」、「急性腸炎」と考えている医師が多いことがわかりました。
「便秘症」との回答からは、高齢者や小児に多いとのコメントがありました。
また、女性の場合は生殖器に関係している可能性も指摘されています。性別によって危惧される疾患が異なることもあるようです。
続いて「大腸憩室炎」との回答では、便秘症と同じく高齢者への危険性が懸念されました。
ほかにも、性状や随伴症状によってはより気を配った方が良いとのコメントも見られました。
なかには、「憩室炎で穴があくこともある」との意見をあることから、大事になる前に早めに病院を受診した方が良さそうです。
最後に「急性腸炎」と回答した医師のコメントでは、左下腹部に痛みを感じる場合は腸に原因疾患があるとした意見が見られました。他の回答にもあった通り、やはり腸に原因がある可能性が高そうです。
左下腹部の痛みでお悩みの方は、本記事を参考にしてみてください。