ちょっとしたことでイライラや不安を感じたり、涙が止まらなくなってしまったり、怒りっぽくなってしまう…。
それはもしかしたら、情緒不安定の始まりかもしれません。
しかし、それが一時的な感情の起伏なのか、何かの精神疾患にかかってしまっているのかはわからないですよね。
一体、情緒不安定の人の中で、どれくらいの割合の方が精神的な病にかかってしまっているのでしょうか。また、原因は何なのでしょうか。
そこで今回は、情緒不安定で精神疾患を患っている割合とその原因について精神科医、心療内科210名に聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2018年4月28日〜5月1日にかけて行われ、精神科医、心療内科医の計210名から回答を頂きました。
情緒不安定の人のなかで、何かしらの精神疾患を抱えている割合
まずは、「情緒不安定で病院を受診する患者さんのうち、何らかの精神疾患が原因の人の割合」について、以下の選択肢から選んでもらい、コメントも併せていただきました。
- 0%~20%
- 20%~40%
- 40%~60%
- 60%~80%
- 80%以上
わからない
以下のグラフが結果となります。
- 40代男性 精神科 「20%~40%」
情緒不安定の程度も様々です。 - 40代女性 精神科 「20%~40%」
適応障害を病気と考えればもう少し上回ります。 - 50代男性 精神科 「20%~40%」
人格障害の方が多い印象ですが、気分障害もみえます。 - 60代女性 精神科 「40%~60%」
自身で感情がコントロールできなくなっている患者の多くは精神疾患を発症しています。 - 60代男性 精神科 「40%~60%」
約半数が適応障害を有していました。 - 40代男性 精神科 「40%~60%」
環境要因も多いですが、精神疾患も少なくないです。 - 40代男性 心療内科 「80%以上」
広めに適応障害をとれば、ほとんどの方が精神障害にあたることになると思います。 - 60代男性 精神科 「80%以上」
精神科を標榜している病院であり、当然高い確率で背景に精神障害があります。 - 30代女性 精神科 「わからない」
程度の差があるので、わかりませんが、かなり多いと思います。 - 50代男性 心療内科 「60%~80%」
きちんと問診に時間をかけてすると、何らかの疾患や障害が隠れていることが多いと思います。 - 50代女性 精神科 「0%~20%」
はっきりと診断がつく方は少ないように思います。
集計では、情緒不安定が主訴で病院を受診する患者さんについて、「20%~40%」との回答が最も多く、次に「40%~60%」、「80%以上」が続きました。
回答した医師のコメントを見ると、しっかりと問診に時間をかけると、何らかの疾患や障害が隠れている場合もあると考える医師もおられるようです。
また、自分で感情がコントロールできなくなっている患者の多くは精神疾患を発症し、約半数が適応障害との声もありました。
一方で、「0%~20%」と回答した医師のコメントでは、はっきりと診断が付く方は少ないといったほか、「わからない」と回答した医師のコメントからは、情緒不安定といっても程度は様々という見方が見受けられました。
では、そもそも、情緒不安定の原因で多い病気はいったい何なのでしょうか。
情緒不安定の症状で来院した患者の中でよく見られる原因は?
続いて、「情緒不安定の症状で来院した患者の中で、多い原因は何ですか」という質問に対し、以下の選択肢から選んでもらい、コメントを頂きました。
- パーソナリティー障害
- 双極性障害
- ストレス
- 適応障害
- うつ病
- 更年期障害
- アルコール依存症
- 自律神経失調症
- 不眠症
- その他
以下が結果となります。
- 50代男性 精神科
家庭環境、生い立ちが複雑な人が情緒不安定になりやすいですね。 - 40代男性 一般内科 精神科
情緒不安定は幅広い症状であり、認知症にも認められます。 - 30代男性 心療内科
家庭環境、親の教育がいたらない場合も多いです。 - 40代男性 精神科
最近は、発達障害をベースにした不適応とかも多いです。 - 30代男性 精神科
抑うつ状態が多いと思われます。 - 60代男性 心療内科
主訴がそれでも、いろんな病気が隠れています。 - 60代男性 精神科
これは広い意味でのパーソナリティー障害です。 - 40代男性 精神科
本人の性格の影響が大きいです。 - 30代男性 精神科
適応障害は増えていますね。 - 40代男性 精神科
診察しないと判断は難しいです。
「情緒不安定の症状で来院した患者の中でよく見られる原因は何ですか」という質問では、「パーソナリティー障害」との回答が最多でした。その後を「双極性障害」「ストレス」が続く結果となっています。
回答が最も多かった「パーソナリティー障害」とは何なのでしょうか。日本精神神経学会では以下のように説明されています。
パーソナリティー障害とは
“パーソナリティー障害の基本的な特徴は、認知・行動特性の著しい偏りです。従来からその特性は、一般的な特性(平均値)からの違いが著しいもの、言い換えるなら、一般の人々との間に本質的な違いはないけれども、程度の差が特に大きいという性質のものだと理解されています。”
(引用:公益社団法人 日本精神神経学会)
医師のコメントによれば、情緒不安定の症状で来院した患者には、家庭環境、発達障害、本人の性格、抑うつ状態など、さまざまな背景が考えられるようです。
診察しないと判断が難しいというコメントがありましたが、これだけ色々な原因があると、もっともかもしれませんね。
最後に、情緒不安定という理由で病院を受診しても良いのか聞いてみました。
情緒不安定という理由で病院を受診してよい?
- 40代男性 精神科 「生活に支障が出ているならば受診していい」
生活に支障が生じ、本人や周囲が困難と感じているのであれば受診して構わないと思います。 - 40代男性 精神科 「生活に支障が出ているならば受診していい」
ホルモンの分泌など体質的によって起こるものや、社会などの外的要因から起こるもの、内的要因から起こるものなど、大抵はそれぞれが絡み合って複合的におこります。 - 40代男性 心療内科 「生活に支障が出ているならば受診していい」
病気によるものであれは治療により改善する可能性がありますので。 - 30代女性 精神科 「生活に支障が出ているならば受診していい」
生活が問題なく送れているのであれば不要です。 - 40代男性 精神科 「生活に支障が出ているならば受診していい」
困りごとがあれば受診可能と思います。 - 50代男性 心療内科 「受診していい」
受診していいかどうかを決めるのは患者本人です。 - 60代男性 精神科 「受診していい」
受診を考えるからには、相応の生活上の困難が生じていると考えるので、当然治療の対象になります。 - 50代男性 心療内科 「受診していい」
悩んでいるなら、受診していただいた方がいいに決まっています。 - 70代女性 心療内科 「あまり受診しない方がいい」
単にその症状だけでは、できれば来ないでほしいです。時間ばかりかかってしまうので。しかし彼や彼女らの話を聞いてあげるのは私たちだけかもしれません。 - 40代男性 精神科 「受診しなくてよい」
性格的要素や家族間問題が主因のことがほとんどだからです。
集計結果では、「生活に支障が出ているならば受診していい」と回答した医師が56%でした。続いて36%の医師が「受診していい」と回答しています。
上記2つを合わせると条件はあっても「受診していい」との意思を示した医師が92%いました。
医師のコメントを見ると、生活に支障が生じていて、本人や周囲が困難を感じているのであれば受診してよいとの見解が目立ちました。
困っているならば病院を受診してよいという考え方の医師もいるようですね。
一方で受診しなくてよいと回答した医師のコメントでは、性格的要素や家族間の問題がほとんどのためとの指摘をいただきました。
しかし、なかには「彼や彼女らの話を聞いてあげるのは私たちだけかもしれません」という、精神的な悩みなどを打ち明けて話せる場が少ないと感じている声もありました。
情緒不安定で病気のことはある。生活に支障があれば受診を
本調査によれば、情緒不安定が主訴で病院を受診する患者さんの割合は、「20%~40%」と回答した医師が最も多く、次に「40%~60%」、「80%以上」が続きました。
医師のコメントによれば、しっかりと問診に時間をかけると、何らかの疾患や障害が隠れている場合もあるといった声が聞かれました。
続いて、情緒不安定の症状で来院した患者の中で考えられる原因としては、「パーソナリティー障害」との回答が最多で、次に「双極性障害」「ストレス」が多いようです。
家庭環境や生い立ちの複雑な人が情緒不安定になりやすいと感じている医師もいるようですが、やはり診察しないと判断は難しいとの声もありました。
また、9割以上の医師が情緒不安定という理由で病院を受診しても良いと回答しました。
ただし、「生活に支障が生じていて、本人や周囲が困難を感じているのであれば」というコメントが見られました。
調査を踏まえると、情緒不安定で病気のことはあるようなので、生活に支障があれば受診を検討する方がよさそうです。