近年、「骨密度」という言葉を耳にすることが多くなりました。
骨密度が低いと、転んだだけで骨折をしてしまうなど、骨の弱さからくる怪我や病気に繋がりやすくなります。骨を強くするためには、カルシウムを多く含む食品を、積極的に摂った方が良いということは一般的に知られていることですよね。さらに、カルシウムと相性の良い栄養素を同時に摂取することで、カルシウムの吸収率を上げられる可能性があります。
では、どの栄養素が、カルシウムとの相性が良いのでしょうか。
そこで今回は、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人に、カルシウムの吸収率を良くする栄養素は何か聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2019年4月24日~2019年4月26日にかけて行われ、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人から回答を頂きました。
カルシウムの吸収率を良くする栄養素は何?
「カルシウムの吸収率を良くする栄養素は何ですか?」という質問に対して、次の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- ビタミンD
- マグネシウム
- タンパク質
- ビタミンC
- 有機酸
- イソフラボン
- 特にない
- わからない
- その他
以下のグラフが結果となります。
集計結果では、「ビタミンD」との回答の割合が49%と一番高く、次に「わからない」28%、「マグネシウム」13%が続きました。
「ビタミンD」との回答が半数近くを占める結果となりました。カルシウムを多く含む食品にはビタミンDを多く含む食品を合わせると、カルシウムを効果的に体内に入れることができるのかもしれません。
それでは医師のコメントを見ていきましょう。
カルシウムとビタミンDを一緒に摂取することで腸管からの吸収を促進する
- 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDは、有効と思います。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDは、確実に効果があります。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
併用が有効なことは、医学的なエビデンスがあります。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
活性型ビタミンD3が有効でしょう。 - 60代男性 一般内科 「ビタミンD」・「マグネシウム」
ビタミンDは必要不可欠です。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDは、相乗効果があるのではないでしょうか。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
カルシウム代謝にビタミンDは必要です。 - 40代男性 一般内科 「ビタミンD」
やはりビタミンDだと思います。ビタミンDは、腸管からの吸収を促進します。 - 60代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDと同時に摂取するように指導されました。 - 60代男性 一般内科 「ビタミンD」
カルシウムとビタミンDは、一緒に摂取した方が良いでしょう。 - 70代男性 健診・予防医学 「ビタミンD」
ビタミンD欠乏では、カルシウムが十分に吸収されません。 - 50代男性 代謝・内分泌科 「ビタミンD」
普通ビタミンD不足が、カルシウム欠乏の原因となります。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
今の日本の栄養状況で、よほどの偏食でなければビタミンD欠乏は起きないでしょう。 - 40代男性 一般内科 「ビタミンD」
治療でビタミンD製剤を使うこともあるくらいです。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDを処方することがあります。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
骨粗鬆症治療には、活性型ビタミンD3製剤を併用しています。 - 50代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDを内服すると便秘になりやすいです。 - 20代男性 一般内科 「ビタミンD」
ビタミンDで高カルシウム血症に陥るのがいつも怖いです。 - 30代男性 総合診療 「ビタミンD」・「マグネシウム」・「タンパク質」
バランス良くとることが大切かなと思います。
まず、コメントに出てきた言葉の概要をおさえてから、医師のコメントに触れていきましょう。
活性化ビタミンD3とは
活性型ビタミンD3は、生体内の標的臓器にあるビタミンD受容体を介し作用して、生体内の標的臓器(小腸、副甲状腺、腎臓、骨)で作用する。活性型ビタミンD3製剤は、小腸ではカルシウム、リンの吸収を促し、副甲状腺に作用して副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制する。
引用:活性化ビタミンD3|公益財団法人 日本医療機能評価機構
高カルシウム血症とは
カルシウム血症とは、血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか、または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、癌などがある。臨床的特徴には多尿、便秘、筋力低下、錯乱、昏睡がある。
引用:高カルシウム血症|MSDマニュアル プロフェッショナル版
骨粗鬆症とは
骨の代謝バランスが崩れ、もろくなった状態のことです。
骨は骨芽細胞によって骨形成されると同時に破骨細胞によって骨吸収され、常に新しく作り直されるという新陳代謝(リモデリング)を繰り返しています。通常は骨吸収と新たな骨形成のバランスが保たれていますが、これが崩れて骨吸収が上回った状態が続くと骨量が減少してしまいます。その結果骨がもろくなり、容易に骨折するような状態になるのが、骨粗鬆症です。
引用:骨粗鬆症|厚生労働省
一番多く回答を集めたのは、「ビタミンD」との意見でした。
医師のコメントによると、カルシウムとビタミンDを併用するとカルシウムの吸収率が上がることは、医学的なエビデンスがあり、有効だそうです。他にもカルシウムの代謝にはビタミンDが必要不可欠という声が聞かれ、それらを同時に摂取することで、腸管からの吸収が促進されると言われています。また、骨粗鬆症の治療では、活性型ビタミンD3 製剤を使用することもあるそうなので、効果があるというのも頷けるところです。
一方で、ビタミンDが不足するとカルシウムが十分に吸収されず、カルシウム欠乏に陥ってしまう可能性があるそうです。しかし、今の日本の栄養状況では、よほどの偏食でなければビタミンD欠乏は起きないと言われており、医師のコメントにもありましたが、バランスの良い食生活を送ることを心がけることが大事なのかもしれません。
ビタミンDとマグネシウムの相乗効果によってカルシウムの吸収を促進する
- 40代女性 一般内科 「マグネシウム」
マグネシウム以外、思いつきません。 - 60代男性 一般内科 「マグネシウム」
マグネシム は、関係あるでしょう。 - 60代男性 一般内科 「マグネシウム」・「ビタミンC」
マグネシウムが一番効果的でしょう。 - 60代男性 一般内科 「マグネシウム」・「ビタミンD」
マグネシウム、ビタミンDは、吸収率を高めると思います。 - 50代男性 代謝・内分泌科 「マグネシウム」
マグネシウムは有名ですが、実感はありません。 - 50代男性 一般内科 「マグネシウム」・「ビタミンD」
ビタミンDがマグネシウムや紫外線によって活性化され、カルシウムの吸収を促進します。 - 30代男性 一般内科 「マグネシウム」・「ビタミンD」
電解質の適切な摂取は大事ですね。 - 60代男性 一般内科 「マグネシウム」
適度なマグネシウム摂取は有効です。 - 50代男性 一般内科 「マグネシウム」
海藻には、ミネラルが含まれています。
次に回答で多かったのは、「マグネシウム」との意見でした。
医師のコメントによると、カルシウムの吸収率を上げるためには、マグネシウムを摂ることが効果的だそうです。特に海藻は、ミネラルが含まれているらしく、医師も勧める食材のようでした。
カルシウム・ビタミンD・マグネシウムを一緒に摂取しよう
本調査では、カルシウムの吸収率を良くする栄養素は何か聞いたところ、「ビタミンD」との回答が一番多く、次に「わからない」、「マグネシウム」が続きました。
カルシウムとビタミンDを一緒に摂取することで、カルシウムの腸管からの吸収が促進されると言われています。
また、マグネシウムを摂るのも効果的なようで、特に海藻は、ミネラルが含まれていて推奨する声が聞かれました。
本調査を参考に、日頃から骨を強くするためにはどんな栄養素を摂ればいいのか考えるきっかけにしてもらえればと思います。