「カルシウムを上手に摂りましょう」
そんな広告宣伝を見かけることも多いかと思います。確かにカルシウムを摂ることで背を伸ばしたり、骨粗鬆症の予防だったりができることは容易に想像できます。
一方で、そんなカルシウムが不足すると、体内でどんなことが起きるのでしょうか。何か自覚症状が出ることはあるのか、気になるところでもあります。
そこで今回は、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人に、カルシウムが不足した際にみられる自覚症状は何か聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2019年4月24日~2019年4月26日にかけて行われ、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人から回答を頂きました。
カルシウムが不足した際にみられる自覚症状は何?
「カルシウムが不足した際にみられる自覚症状は何ですか?」という質問に対して、次の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- イライラ
- 足の攣り
- まぶたがピクピクと痙攣する
- 集中力低下
- 手足の痺れ
- 物忘れ
- 腰・背中の痛み
- 血が止まりにくい
- 特にない
- わからない
- その他
以下のグラフが結果となります。
集計結果では、「イライラ」との回答が33%と一番高く、次に「足の攣り」32%、「まぶたがピクピクと痙攣する」25%が続きました。
全体的に意見が分かれる結果となりましたが、体内のカルシウムが不足すると、様々な症状が生じるのかもしれません。
それでは医師のコメントを見ていきましょう。
イライラだけでなく他の精神症状も出現する
- 60代男性 一般内科 「イライラ」・「物忘れ」・「集中力低下」・「腰・背中の痛み」
「著しく」症状が出るわけではありません。また、特徴的な症状でもありませんが、割と多い印象があります。 - 60代男性 一般内科 「イライラ」・「物忘れ」・「集中力低下」
精神面の影響が大きいです。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」
低カルシウムでイライラが生じるようです。 - 40代男性 一般内科 「イライラ」・「足の攣り」
やはり、イライラすることが多いと思います。 - 40代女性 一般内科 「イライラ」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「集中力低下」
イライラすることが最も多いです。 - 40代男性 一般内科 「イライラ」・「足の攣り」
イライラなど精神症状も出ます。 - 30代男性 総合診療 「イライラ」・「集中力低下」
精神症状は出やすいですね。 - 40代女性 一般内科 「イライラ」・「集中力低下」
精神的に不安定になります。 - 60代男性 一般内科 「イライラ」・「集中力低下」
イライラしたり怒りっぽくなったりすると聞いています。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」・「足の攣り」・「集中力低下」
落ち着きがないと感じます。 - 70代男性 一般内科 「イライラ」・「集中力低下」・「手足の痺れ」
情緒不安定の原因になると思います。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」・「まぶたがピクピクと痙攣する」
不眠や不安、神経過敏、イライラなどの精神症状が挙げられます。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」・「集中力低下」
更年期以降の女性では要注意です。 - 60代男性 一般内科 「イライラ」・「足の攣り」
特に降圧薬を服用していると実感します。 - 40代男性 一般内科 「イライラ」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」・「集中力低下」
実際に上記を自覚するようならば、病状として相当深刻な状態でしょう。しかし、私は経験がありません。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」・「物忘れ」・「集中力低下」・「血が止まりにくい」・「手足の痺れ」・「腰・背中の痛み」
上記症状すべて生じます。 - 50代男性 一般内科 「イライラ」・「集中力低下」
カルシウム摂取は、様々な点において重要です。
まずは、新しく出てきた薬の概要をおさえてから医師のコメントに触れていきましょう。
降圧薬とは
血圧を下げるために飲む薬を降圧剤といいます。
引用:降圧薬|一般社団法人 小金井市医師会
一番多く回答を集めたのは、「イライラ」との意見でした。
医師のコメントによると、体内のカルシウムが不足すると精神面に大きく影響を与え、イライラしてしまうことが多いそうです。
さらに、精神的に不安定になることで、以下のような症状が現れる可能性もあると言われています。
- 怒りっぽくなる
- 情緒不安定になる
- 不眠になる
- 神経過敏になる
- 不安を抱く
また、更年期以降の女性や、降圧薬を服用している人は、特に注意が必要と言われています。ほかにもカルシウム不足は、イライラなどの精神症状だけではなく、身体症状も出現する可能性があるそうです。
カルシウムの摂取は、様々な点において重要であると考えられており、食生活の中に、カルシウムを多く含む食品を積極的に取り入れた方が良いのかもしれません。
筋肉性の症状が出現する
- 60代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「イライラ」・「手足の痺れ」
身体的にも精神的にも影響があると思います。 - 60代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「イライラ」・「腰・背中の痛み」
足の攣りは、良く認める症状です。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「集中力低下」・「イライラ」
足の攣りは、よく経験します - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」
筋肉性の症状が出ますね。 - 40代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」
こむら返りなど各種の筋異常をきたす可能性があります。 - 60代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」
筋肉の痙攣や硬直などがあります。 - 60代男性 健診・予防医学 「足の攣り」
多くの人は、足の攣りで気付いています。 - 70代男性 健診・予防医学 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「腰・背中の痛み」
筋収縮の安定性がカルシウムの重要な作用だからでしょう。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「イライラ」
体内のカルシウムが不足するのは特殊な病態であり、症状は、血中カルシウムイオンの減少により変わります。 - 50代男性 代謝・内分泌科 「足の攣り」
通常、摂取不足でカルシウムが欠乏することは、ほとんどありません。 - 20代男性 一般内科 「足の攣り」・「イライラ」
内科的疾患として気づかれにくい傾向にあるのが、カルシウムの低下だと思います。デフォルトで血液検査に入っていないこともあり、意識することが必要だと思います。 - 60代男性 一般内科 「足の攣り」
全身のこむら返りではカルシウム不足を考慮します。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「物忘れ」・「集中力低下」・「イライラ」・「血が止まりにくい」
筋力低下の高齢者に多いです。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」
カルシウムが不足したのは、副甲状腺機能低下症によるものが多かったです。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」
透析患者さんで良く経験します。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「手足の痺れ」
アルコール多飲の方で時々みられます。 - 60代女性 一般内科 「足の攣り」・「集中力低下」・「イライラ」
ジャンクフードが多い人は良くないでしょう。 - 50代男性 一般内科 「足の攣り」・「まぶたがピクピクと痙攣する」・「物忘れ」
基本1日1本牛乳を飲むように推奨しています。
まず、新しく出てきた言葉の概要をおさえてから、医師のコメントに触れていきましょう。
副甲状腺機能低下症とは
副甲状腺からは、血液中カルシウム濃度の維持に欠かせない副甲状腺ホルモンが分泌されます。副甲状腺機能低下症は、この副甲状腺ホルモンの分泌が低下することにより、副甲状腺ホルモンの作用が低下し、血中のカルシウム濃度の低下やリン濃度の上昇などがもたらされる疾患の総称です
引用:副甲状腺機能低下症|公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター
透析とは
腎臓の働きがとうとう10%以下にまで低下すると、自分の腎臓では自分のからだを浄化しきれなくなり、老廃物が蓄積して倦怠感、食欲低下、悪心、嘔吐、頭痛などの尿毒症状が出現したり、体液のバランスがとれなくなり、心不全や肺水腫を起こし、息切れや呼吸苦が出現しやすくなります。放っておけば命にかかわってしまいます。不本意だとは思いますが、命をつないでいくために、ご自身の腎臓をあきらめて、代わりに透析療法で血液を浄化する必要がでてきます。
引用:透析|東邦大学医療センター 大森病院 腎センター
次に回答で多かったのは、「足の攣り」との意見でした。
カルシウム不足は、身体的にも精神的にも影響を与えるとしていて、特に身体的な影響としては、筋肉性の症状が起きると言われています。その中でも、よく認める症状として挙げられているのが足の攣りのようです。
さらにカルシウムは、筋収縮に関係している栄養素と言われていて、体内のカルシウムが不足すると、筋肉の痙攣や硬直などが起こると考えられています。
しかし、体内のカルシウムが不足している人は特殊な病態であるという意見がみられ、具体的には以下のような人が、カルシウム不足になる可能性が高いと言われています。
- 筋力が低下した高齢者
- 副甲状腺機能低下症の人
- 透析患者さん
- アルコール多飲の人
- ジャンクフードが多い人
1日1本牛乳を飲むように推奨しているというコメントもあり、カルシウム不足かもと思っている方は意識するのも大事かもしれません。
まぶたの痙攣やテタニー症状が出現する可能性がある
- 50代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」
因果関係は、はっきり知りません。そういうのを聞いたことがあるだけです。 - 40代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」・「集中力低下」・「イライラ」
筋肉の痙攣が起こりやすくなります。 - 50代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」
カルシウムを測定しないと分かりませんが、テタニー症状が出る可能性があると思います。 - 60代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」
まぶたがピクピクと痙攣します。 - 40代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」・「物忘れ」・「集中力低下」・「イライラ」・「手足の痺れ」
神経症状は出やすいと思います。 - 60代男性 総合診療 「まぶたがピクピクと痙攣する」・「足の攣り」・「手足の痺れ」
症状がある低カルシウム血症は、甲状腺術後のみかと思います。 - 50代男性 一般内科 「まぶたがピクピクと痙攣する」
乳製品でカルシウム補給しましょう。
まず、新しく出てきた言葉の概要をおさえてから、医師のコメントに触れていきましょう。
テタニーとは
テタニーとは、血液中のカルシウム濃度が低下して、末梢神経の興奮性が高まり、筋肉の持続的な硬直をきたすものです。
引用:テタニー|公益社団法人 鳥取県医師会
低カルシウム血症とは
低カルシウム血症とは、血漿タンパク濃度が正常範囲内にある場合に血清総カルシウム濃度が8.8mg/dL(2.20mmol/L)未満であること、または血清イオン化カルシウム濃度が4.7mg/dL(1.17mmol/L)未満となった状態である。原因には、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、および腎疾患がある。症状としては、錯感覚、テタニーのほか、重度であれば痙攣、脳症、心不全などがある。
引用:低カルシウム血症|MSDマニュアル プロフェッショナル版
次に回答で多かったのは、「まぶたがピクピクと痙攣する」との意見でした。
医師のコメントによると、因果関係がはっきりしないものの、カルシウム不足で筋肉の痙攣や神経症状が生じやすくなると言われています。その結果、まぶたの痙攣やテタニー症状が生じてしまう可能性があるそうです。
特に、症状がみられる低カルシウム血症は甲状腺手術後の人に多いようです。手術を経験した人は、注意が必要かもしれません。
カルシウム不足になるとイライラ、足の攣りが出る可能性あり
本調査では、カルシウムが不足した際にみられる自覚症状は何かという質問をしたところ、「イライラ」との回答の割合が一番多く、次に「足の攣り」、「まぶたがピクピクと痙攣する」が続きました。
カルシウムは、様々な点において重要な栄養素とされ、体内のカルシウムが不足すると、精神的にも身体的にも影響を与えてしまうようです。
まず、精神的な影響としては、イライラする、怒りっぽくなる、情緒不安定になる、不眠になる、などが挙げられています。
次に、身体的な影響として、筋肉の硬直や痙攣などが起きることで、足の攣りや、まぶたがピクピクと痙攣する症状が出現し、テタニー症状が生じる可能性も高まるそうです。更年期以降の女性、降圧薬を服用している人、甲状腺手術後の人、透析患者さんなどは、カルシウム不足に陥りやすいようです。
本記事を参考までに、カルシウムについて理解を深めてもらえればと思います。