カルシウムが骨を強くするということは、多くの人がご存知かと思います。
また、骨の病気の予防になる可能性もあることから、積極的に摂取していきたいと考えている人もいるかもしれません。確かにカルシウムをより多く摂取することで、健康的な骨へと導くことができそうですよね。
しかし、骨の健康に繋がるからと言って、カルシウムを過剰に摂取してしまった場合に考えられるリスクはないのでしょうか。もし、危険な病気を発症してしまう可能性があるのであれば、摂取量に気をつける必要があるかもしれません。
そこで今回は、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人に、カルシウムの過剰摂取で生じる病気は何か聞いてみました。
※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2019年4月24日~2019年4月26日にかけて行われ、一般内科,総合診療,代謝・内分泌科,健診・予防医学医526人から回答を頂きました。
カルシウムの過剰摂取で生じる病気は何?
「カルシウムの過剰摂取で生じる病気は何ですか?」という質問に対して、次の選択肢から選んでもらい、その理由をコメントしてもらいました。
- 高カルシウム血症
- 腎臓結石
- 血管・軟組織の石灰化
- 高カルシウム尿症
- 腎不全
- 便秘症
- 前立腺癌
- 特にない
- わからない
- その他
以下のグラフが結果となります。
集計結果では、「高カルシウム血症」との回答が48%と一番高く、次に「腎臓結石」40%、「血管・軟組織の石灰化」21%が続きました。
カルシウムを摂り過ぎてしまうと、高カルシウム血症や腎臓結石になってしまう可能性が高くなるのかもしれません。
それでは、医師のコメントをみていきましょう。
カルシウムやビタミンDを過剰に摂取してしまうと高カルシウム血症になる可能性が高まる
- 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
カルシウムの過剰摂取により、血中濃度の上昇が起きます。 - 40代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症になると思います。 - 40代男性 総合診療 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症は、時々みます。 - 50代女性 一般内科 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症の患者さんを診察した経験があります。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「便秘症」・「血管・軟組織の石灰化」・「腎臓結石」
高カルシウム血症を起こすようであれば、いろいろな弊害も出るでしょう。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症による意識障害が生じます。 - 30代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「便秘症」・「高カルシウム尿症」
脱水や意識障害は、高カルシウム血症で起きていました。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「腎臓結石」・「腎不全」
高齢者で高カルシウム血症での腎不全は、良くみられます。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
悪性腫瘍の患者さんで認められたことがありました。 - 50代男性 健診・予防医学 「高カルシウム血症」・「その他(せん妄)」
肺癌、特に扁平上皮癌で、しばしば高カルシウム血症を経験しました。 - 60代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
腎不全の患者さんで経験した事があります。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症は、危険です。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
高カルシウム血症には、注意が必要です。 - 40代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
腎機能などが正常であれば、必要ない分は捨てられると思います。 - 30代女性 一般内科 「高カルシウム血症」・「腎臓結石」
高カルシウム血症になると思いますが、そこまで摂取することは稀だと思います。 - 60代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「腎不全」
経口摂取では相当量を摂らないと、高カルシウム血症まではならないと思います。 - 60代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「血管・軟組織の石灰化」・「腎臓結石」
食事だけで過剰症になることは、滅多にないと思います。 - 50代女性 一般内科 「高カルシウム血症」・「便秘症」・「その他(意識低下)」
副甲状腺摘出後にカルシウム・ビタミンD服用中の人が食欲不振で薬のみ飲んでいた際に、高カルシウム血症(脱水もあり)の意識低下で搬送されたことがあります。また、整形外科でカルシウム・ビタミンD服用中にも関わらず、サプリメントでも服用していた老人が便秘で来院したとき、血清カルシウムが高く、ビタミンD中毒にもなっていました。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「腎臓結石」・「腎不全」
ビタミンD製剤の使いすぎで高カルシウム血症になり、腎不全まで進行します。 - 50代男性 一般内科 「高カルシウム血症」
ビタミンD摂取時は、気を付けなければなりません。 - 60代男性 総合診療 「高カルシウム血症」・「便秘症」・「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム尿症」・「腎臓結石」・「腎不全」・「前立腺癌」
サプリの服用で、カルシウム値が高い患者がいます。 - 60代男性 一般内科 「高カルシウム血症」・「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム尿症」・「腎臓結石」・「腎不全」
カルシウムも過剰摂取は有害です。 - 40代女性 一般内科 「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」・「腎臓結石」
適切な摂取が大変重要です。
まず、新しく出てきた言葉の概要をおさえてから、医師のコメントに触れていきましょう。
高カルシウム血症とは
高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態である。主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,癌などがある。臨床的特徴には多尿,便秘,筋力低下,錯乱,昏睡がある。
引用:高カルシウム血症|MSDマニュアル プロフェッショナル版
腎臓結石とは
腎臓結石とは、尿の中に含まれているカルシウムなどの濃度が高くなって結晶ができ、それが大きくなったものです。腎臓内にあるうちは、通常、これといった症状が見られません。
引用:腎臓結石|一般社団法人 大阪府医師会
一番多く回答を集めたのは、「高カルシウム血症」との意見でした。
医師のコメントによると、カルシウムの過剰摂取によって、血中カルシウム濃度が上昇し、高カルシウム血症に陥ってしまうと言われています。高カルシウム血症を起こしてしまうと、意識障害・脱水などの問題が生じ、最悪の場合、腎不全まで進行してしまうこともあるそうです。
また、既に腎不全の人や肺癌(特に扁平上皮癌)などの悪性腫瘍がある人、高齢者などでは、高カルシウム血症になってしまう可能性が高くなると言われています。
一方、腎機能が正常な人では、必要ない分は捨てられると考えられているため、経口摂取だけでカルシウムの過剰摂取に陥ってしまうことは稀という意見もありました。
しかし、カルシウムやビタミンDを摂り過ぎてしまうと血中のカルシウム値が高くなってしまう恐れがあるというコメントも頂いています。カルシウムは、骨を健康に保つために必要な栄養素ですが、体に良いからと言って摂り過ぎてしまうと有害になってしまうようなので、医師の指示を仰ぎながら適切な摂取を心掛けましょう。
泌尿器系の結石の原因となり得る
- 60代男性 一般内科 「腎臓結石」・「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム血症」
腎結石が代表的な病気と思います。 - 50代女性 一般内科 「腎臓結石」
直接目にしたのは腎臓結石だけです。 - 40代男性 一般内科 「腎臓結石」
摂取量だけでなく、腎機能障害やホルモンバランスなどの絡みもあるかと思います。 - 70代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」
高カルシウム血症による腎結石でしょうか。 - 50代男性 一般内科 「腎臓結石」
腎機能が低下していると腎結石のリスクが高まると思います。 - 40代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム尿症」
カルシウム結石が増えると思われます。 - 70代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」
腎結石は、確実に増えるでしょう。 - 50代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」
結石の原因になると思います。 - 40代男性 一般内科 「腎臓結石」
結石はできやすくなると思います。 - 60代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」・「腎不全」
泌尿器の結石が多いです。 - 40代女性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」
尿路系の結石の原因になり得ます。 - 70代男性 一般内科 「腎臓結石」
腎臓結石・尿管結石・膀胱結石あたりが考えられます。 - 70代男性 一般内科 「腎臓結石」
尿管結石は多いと思っています。 - 50代男性 一般内科 「腎臓結石」・「便秘症」・「高カルシウム血症」
高齢者で腎機能が悪い患者様には要注意です。 - 50代男性 一般内科 「腎臓結石」・「高カルシウム血症」
摂りすぎは良くないと思います。
次に回答で多かったのは、「腎臓結石」との意見でした。
カルシウムの過剰摂取による代表的な病気として、腎臓結石が挙げられるようで、実際に直面した経験を持つ医師もいました。
医師のコメントによれば、高カルシウム血症に陥っている人や、腎機能が低下している人は、腎結石のリスクが高まるそうです。それだけでなく、カルシウムを過剰摂取してしまうと、結石そのものができやすくなるため、尿管結石や膀胱結石などの泌尿器系の結石が生じるリスクも高まるようでした。
特に、高齢者で腎機能が悪い人は生じやすいようなので、該当する場合は、日々のカルシウムの摂取量に気を使う必要がありそうです。
動脈の石灰化に影響を与える可能性がある
- 50代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」
血管・軟組織の石灰化が起きるでしょう。 - 30代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」
異所性石灰化には大いに関係あります。 - 40代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」
過剰摂取は、カルシウム沈着の可能性があります。 - 50代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム血症」・「腎結石」
異所性石灰化や結石の原因になり得ます。 - 50代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」・「腎結石」
異所性石灰化など、カルシウムの蓄積に伴う症状です。 - 40代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」
血管の石灰化が起きそうです。 - 60代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」・「腎結石」
ある程度、動脈の石灰化に影響するかも知れません。 - 60代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「高カルシウム血症」・「腎結石」
時に脳内に石灰化を見ることがあります。 - 30代女性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「便秘症」
市販のカルシウム製剤で血管が石灰化すると聞きました。 - 50代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「便秘症」・「高カルシウム血症」・「腎結石」
異所性石灰化は怖いと思います。 - 60代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「腎結石」
異所性石灰化には注意が必要です。 - 40代男性 一般内科 「血管・軟組織の石灰化」・「便秘症」・「高カルシウム血症」・「高カルシウム尿症」・「腎結石」
摂り過ぎは良くないです。
まず、コメントに新しく出てきた言葉の概要をおさえてから、医師のコメントに触れていきましょう。
異所性石灰化とは
異所性石灰化は血管、関節周囲、心臓などの 軟部組織にみられ、CKD の重要な合併症の一つである。特に血管石灰化は心血管疾患が CKD 患者の最大の死因であることからもわかる通り、CKD 患者の予後を左右する重要な因子である。血管石灰化には内膜プラークに起こるアテローム硬化型石灰化と中膜平滑筋層にみられるメンケベルグ型石灰化がある。メンケベルグ型石灰化は透析患者や糖尿病に特徴的で、 大動脈から細動脈までほとんどすべての血管に認められる。
引用:異所性石灰化|沖縄県医師会
次に回答で多かったのは、「血管・軟組織の石灰化」との意見でした。
カルシウムを過剰に摂取してしまうと、カルシウム沈着が生じ、血管や軟組織が石灰化してしまう異所性石灰化の原因になり得るそうです。特に、異所性石灰化の中でも、動脈や脳内の石灰化に影響を与える可能性があると言われています。
加えて、市販のカルシウム製剤を摂取することによって血管が石灰化してしまう可能性もあるそうなので、カルシウム製剤が必要な治療を行う際は、医師の指導の下で服用するのが大事そうです。
リスクの高い人がカルシウムを過剰摂取してしまうと病気を発症する可能性も
本調査では、カルシウムの過剰摂取で生じる病気は何か聞いたところ、「高カルシウム血症」との回答が一番多く、次に「腎臓結石」、「血管・軟組織の石灰化」が続きました。
カルシウムの過剰摂取は、体に影響を与えるようで、高カルシウム血症や腎臓結石、血管や軟組織の石灰化などの原因となってしまうようです。
まず、高カルシウム血症は、腎不全の人、扁平上皮癌などの悪性腫瘍がある人、高齢者が陥りやすいようです。仮に高カルシウム血症を起こしてしまうと、意識障害や脱水などの問題も発生してしまうと言われています。
次に、カルシウムの過剰摂取によって、結石ができやすい状態に至ることで、泌尿器系の結石が生じるリスクが高まってしまうようです。特に、腎機能が悪い高齢者は、カルシウムの摂取量に注意する必要がありそうです。
最後に、カルシウムを過剰に摂取してしまうと、異所性石灰化の原因になり得るようです。動脈や脳内の石灰化に影響を与えるといった医師のコメントもみられたことから、こちらも注意すべきことのようです。
他にもカルシウムを摂りすぎてしまう例として、サプリメントや市販のカルシウム製剤などの摂取も挙げられていました。
意識的にカルシウムを摂取したいと思っているけど心配がある…という方は、医師に相談するのも1つかもしれません。