医師の半数、遠隔医療に消極的?

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医療の現場
イシコメ運営事務局 佐賀 健

「進むが参画したいとは思わず」

 遠隔医療は進むだろうが、自ら参画したいとは思わない―。医師の半数弱がそのように考えていることが、MedPeer会員を対象とした調査で分かりました。消極的である理由として、実際に患者さんを診ないと正しい診断はできないとの声や、責任の所在が不明確であることが指摘されました。ただ、すでに保険診療となっている遠隔画像診断や遠隔病理診断など、特定の条件においては有用性を支持する意見がありました。

「進む」との回答は9割に上る

 調査は今年3月、MedPeerサイト上で行いました。法令・通知による規制や診療報酬などを勘案し、今後の遠隔医療の展開をお聞きしました。

 その結果、4041件の回答のうち、「進む(参画したい)」が37.0%であったのに対して、「進む(参画したいとは思わない)」が50.9%となりました(図1)。「進まない」は12.1%でした。

図1 全体(n=4,041)
遠隔医療に参画したいのか医師へのアンケートを取った結果

 「進む」の2つの回答を合わせると87.9%になります。つまり、大方は遠隔医療が進むことは認めつつも、積極的には参画する意向には至っていないことがうかがえます。

 年代別では、20代では「参画したい」が半数弱を占めますが、年代が上昇するにつれてその割合が減少し、「参画したいとは思わない」が増加する傾向が認められました(図2)。

図2 年代別にみた回答の割合

年代別の回答割合

「直接、診察しないと自信がない」

 コメントで多く見られたのは、「患者さんを直接診察しないと正しい診断や治療に結びつける自信がありません」(40代、一般内科)、「患者との信頼が、はたして確実に得られるか」(30代、一般内科)というものです。

 一方、すでに遠隔医療として保険収載されている行為や過疎地の医療、あるいは皮膚科や眼科といった特定領域の診断・治療の支援など、必要性が想定される事例もあり、機器の進歩や規制の緩和も相まって、遠隔医療は進む方向にあると言えます。

 そのため、「限られた機材と人的資材を有効活用する上で必要な方法なのではないでしょうか」(40代、腎臓内科・透析)、「限定的なことを依頼して限定的な回答が返ってくるものとわきまえています」(40代、一般内科)とのスタンスもあるようです。

課題は「責任」「診療報酬」「インフラ整備」…

 遠隔医療の課題として多く指摘されていたのが、「見落としのような過誤が発生した際の責任の所在」(30代、一般内科)です。「トラブルがおきたとき、その『尻拭い』をするのは、遠隔医療を受けた患者さんが最初に受診した医師である」(50代、一般外科)ことも危惧されます。

 あるいは「診療報酬に反映されなければ発展しないでしょう」(30代、一般内科)とのコメントのように、経済的な問題を解決する必要性も指摘されました。

 さらには、「遠隔医療を行わなければいけないところは人口が少なく、タブレットなどのハードの準備ができません」(50代、整形外科・スポーツ医学)、「インフラ整備の費用負担をどうするのか。診療行為の報酬分担をどうするのか」(50代、小児科)といったように、費用負担に関する問題提起もありました。

放射線科、病理は積極派が多数

 いくつかの診療科をピックアップして解析すると、「参画したい」との回答が多かったのは、放射線科(n=59)と病理(n=14)で、放射線科では61.0%、病理では57.1%が選択しました(図3)。救急医療(n=9)でも44.4%が「参画したい」と答えました。

図3 診療科別にみた回答の割合(一部抜粋)
診療科別にみた回答の割合

 対照的に、一般内科(n=1566)では「参画したい」は36.3%に、皮膚科(n=56)では28.6%にとどまりました。特に皮膚科では「参画したいとは思わない」が58.9%に達しました。

 皮膚科を専門としない医師の中に皮膚疾患の診断・治療支援のニーズはあると見られますが、相談先との間にギャップがあるのは興味深いところです。「臨床写真を見れば(分かる)と思われるかもしれませんが、触診や患者さん全体の一般的診察が必須の場合も多い。真菌鏡検等も遠隔では難しい」(50代、皮膚科)ことが理由の1つかもしれません。

 その点では、「神経診察などは実際に触れないとできないので、神経内科領域では難しい面もある」(30代、一般内科)、「処置が多いので遠隔医療はなじみません」(50代、耳鼻咽喉科)とのコメントから分かるように、診療科によっては遠隔医療になじまない場合もあるでしょう。

テレビ電話で言語リハビリ

 反対に、遠隔医療が有用と思われるケースとしては、次のような事例が挙がりました。

  • 中規模病院で、内科系は循環器内科医、外科系は整形外科医が当直している夜に、急性腹症の患者さんが搬送されてきた場合。放射線科医によるCTの読影があればどれだけ心強いことか!(50代、一般内科)
  • 脳卒中後の失語などです。言語訓練なら、テレビ電話を駆使すれば(対面にはかなわないかもしれませんが)ある程度やれそうな気がするのですが! (30代、リハビリテーション科)
  • 友人が外眼部写真を添付画像で送ってきて診察のアドバイスをしたことや、眼底写真をネットで送ったことがある。(50代、眼科)
  • 精神科病院で精神科医しかいませんので、遠隔診療で身体的治療のアドバイスが得られると大変助かります。(60代、精神科)

「遠隔」医療は国境も越える!?

 「遠隔」という意味では、導出と導入のそれぞれで、国境を越えた視点の書き込みがありました。より大きなうねりがあるのでしょうか。

  • 日本でというよりも、発展途上国の方がseriousです。日本で遠隔医療の大枠を作って走らせてみて、パッケージで外国に持っていってほしい。(40代、耳鼻咽喉科)
  • 海外からの参画(時差を利用した24時間、しかも安価に)は進むでしょうね。(40代、老年内科)

参考サイト

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医師のコメント

  • 井上 雅博
    脳神経センター大田記念病院 一般内科
     個人的には、病院に通うのがだんだん辛くなってきた慢性疾患の患者さんにも使えそうだし、検査などがないのなら徐々にシフトしてくと思います。むしろ待ち時間とかの節約になるなら患者さんはどんどんシフトしそうですね。
    投稿日時:
    なるほど

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    医師
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    一般
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  • 石見 陽
    メドピア株式会社 一般内科
    いよいよMedPeer独自の記事が外部公開です!

    放射線科・病理が積極的、というのは納得です。既に放射線診断は遠隔で実施されていますし、保険点数もついているので。病理は現状を知りませんが、画像(デジタル情報)である以上、遠隔診療が活躍するでしょう。

    先日勉強会に参加して思ったのですが、遠隔診療は二つに分けて考える必要があります。「医療サービスが届かないような僻地向け」と「クリニックに行く暇がない忙しい人向け」。僻地型と都市型とも言えると思いますが、それぞれにどのようなビジネスモデルを確立するかが大事だと考えています。
    投稿日時:
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    医師
    3
    一般
    5
  • 網代 洋一
    横浜医療センター 一般内科
    循環器におけるデバイス管理の一つとして遠隔モニタリングがあります。私の病院では地域医療の一環としてですが、遠隔医療としても有用であることが報告されてます。予後改善も報告されクラス1となり、保険点数も改訂されました。しかしながら、医師単独では負担が多く、デバイスナースなど複数名でのチームで行う事が理想です。やはり行政の介入により、ハード・ソフトともに整えていく事で参画する医療者も増え、良い方向に状況が整っていくように思います。本来望ましく、望まれている医療だと思いますので。
    投稿日時:
    なるほど

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    医師
    3
    一般
    4
  • 川村 優希
    一般内科
    自身が遠隔医療に参画することには消極的な医師が多いのですね。医師は自分の診断、治療方針に責任を負っており、訴訟やクレームリスクを極力避けるような診療の姿勢が染み付いています。遠隔医療だけではカバーしきれない部分からトラブルが生じる未知のリスクへの懸念が強いのかもしれません。
    その一方で、対面診療と同等なレベルの医療が行えそうな分野では遠隔医療は早いスピードで発展していくと思います。今後、医療の効率化や患者サービスの向上を考えるうえで遠隔医療をいかに活用できるかというのは大事な鍵になりますね。
    投稿日時:
    なるほど

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    医師
    2
    一般
    4
  • 八幡 勝也
    一般内科
    遠隔情報通信による健康相談は、昨年厚生労働省から、長時間勤務者およびストレスチェックにて認められる方向になった。
    診療に使うには、全体の支払や薬剤のことを考えると、個別の医療機関中心ではなく、保険者が調整して運営するほうがスムーズに行く。
    窓口支払、保険証の確認、が医療機関でも調剤薬局でも発生し、電子処方箋。薬剤の輸送などを考えると全体の運用を責任をもって管理できるところとなる。
    投稿日時:
    なるほど

    7

    医師
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    一般
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