今日はハロウィンですが、もともとハロウィンは秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すという意味合いのある行事です。
ここで突然ですが、あなたは金縛りになったことがありますか?
ある調査によると、日本人のおよそ4割弱の人が金縛りを体験したことがあるそうです。
金縛りは悪霊の仕業として語られることもありますが、実はすでに医学的に説明できる現象です。
今回は金縛りの仕組みや対策法などについてまとめました。
金縛りとは?

金縛りとは、主に就寝中に目が覚めたのに身体を動かせず、締め付けられるような感覚におそわれることをいいます。
幻聴や幻覚をともなうことも多く、昔から超常現象や霊体験としてとらえられていました。
金縛りってどんな状態?
経験したことのある方はご存知だと思いますが、金縛りにかかるとこのような状態に陥ります。
- 意識はあるのに自由に身体を動かせない
- 「ジーン」「ザワワ」というような幻聴(主に金縛りになる直前)
- 声を出せない
- 誰かが乗っているような、身体が締め付けられる感覚
- 息ができない、もしくはしづらい
- 霊や人などの幻覚
- 誰かにさわられているような感覚
一人で暗い中こんなことになったら怖いに決まってますね!
金縛りの語源
ちなみに「金縛り」の語源はご存知ですか?
金縛りは古来より世界各地で報告され、それぞれ言い伝えが残っています。
やはり魔物や霊、悪魔の仕業と考えられ、名前も各地でさまざまなものがあります。
日本の場合、「金縛り」の語源は仏教用語からきているそうです。
真言宗など多くの宗派で信仰されている不動明王は、「金縛法」という敵を身動きできなくする術を持っているとされています。
金縛りの状態が不動明王に金縛法をかけられたかのような状態であることから、その名がついたといわれています。
半分近くの人が一度は経験するって本当?
まさに「心霊現象!」って感じの金縛りですが、どのくらい体験している方がいるのでしょうか?
ヒトのデータ.com(株式会社コンプリートロジック)様が2015年にアンケート調査を行ったようです。
その調査によると、
- 経験なし:60.7 %
- 経験あり:39.3 %
となり、およそ4割弱の方が金縛りを経験しているとのことです。
さらにそのうちの半数近くが11歳~18歳の間に体験しており、思春期の頃に経験することが多いようです。
引用・参考:ヒトのデータ.com「金縛りになった年齢 アンケート結果 統計」
しかし、世界的なデータとってみると金縛りを長期間頻繁に繰り返す人は全体の3~6%と、非常に少なくなるそうです。
わたしも中学生の頃に数回金縛りを経験しましたが、大人になってからは一度も起こっていません。
金縛りの仕組み

このように多くの方が怖い思いをし、古くから心霊現象として認識されている金縛りですが、現在は科学的に解明されています。
金縛りは睡眠障害の一種の「睡眠麻痺」という状態であるということが分かっています。
金縛りはどのように起こるのか、睡眠麻痺の説明をしながら解説していきたいと思います。
レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2つに分けられます。
この言葉は聞いたことがある方も多いかもしれませんね!
レム睡眠の特徴
- 眠りが浅い
- 脳が比較的活動している
- 身体は休んでいるが、心拍・体温はノンレム睡眠より上昇している
- 複雑な夢を見ることが多く、起きたあとも覚えている
ノンレム睡眠の特徴
- 眠りが深い
- 脳は休んでいる
- 身体は少し緊張しているが、心拍や体温は低下している
- 夢を見ることはあるが、目覚めた時には覚えていない
レム睡眠とノンレム睡眠は90分毎に交互に繰り返される

眠りはじめるとまずはノンレム睡眠が始まります。
おおよそ5分から20分程度で最も眠りが深くなり、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと入っていきます。
このレム睡眠とノンレム睡眠の切り替えは約90分感覚で目が覚めるまで続きます。
起きるまでに4~5回、これを繰り返します。
朝に近づくにつれ徐々にノンレム睡眠が浅くなっていくことで、スッキリとした感覚で自然に起床できます。
これが正しい睡眠のリズムです。
ノンレム睡眠が不足すると、疲労回復に必要な成長ホルモンが分泌されにくくなります。
寝ても疲れが取れないときはレム睡眠とノンレム睡眠のバランスが崩れてしまってるかもしれません。
金縛りはレム睡眠中に意識が覚醒することで起きる
何らかのはずみでレム睡眠の最中に意識が覚醒してしまうことがあります。
普段の睡眠のリズムが崩れていると、よりレム睡眠中に覚醒しやすいようです。
レム睡眠中は脳がある程度起きている状態です。
しかしそこで身体を動かそうとしても、身体は寝ているので動かせません。
このように、自分では目覚めているつもりなのに身体が動かせないという状態がいわゆる金縛りとして認識されているのです。
金縛りの前兆
金縛りになる前には前兆があるといわれています。
多くは耳鳴りと強い圧迫感を感じるようです。
その数秒〜数分後に身体が動かせなくなる金縛り特有の症状が現れます。
耳鳴りは「キーン」という高い音から、「ジージー」「ザワザワ」という低い音まで、人やそのときによって感じる音は様々です。
一度この前兆が現れると、金縛りがおさまったあとも数度にわたり前兆と金縛りが繰り返されることがあります。
幻聴や錯覚が生じる仕組み
金縛りは前述したようにレム睡眠中に起こります。
レム睡眠の特徴でも紹介しましたが、レム睡眠中はリアルで複雑な夢を見ることがあります。
そこにいない人の声が聞こえたり、霊や悪魔などの幻覚や錯覚が見えたりするのは全て夢です。
ただし脳は目覚めていると思っているので、それを現実に起こっていることだと錯覚してしまいます。
実際に金縛りを体験すると、幻覚・幻聴がリアルで恐怖を感じてしまいますよね。
しかしパニックになればなるほど、恐怖イメージが膨らんでしまいます。
とにかく「これは夢だ!」と落ち着くようにしましょう。
金縛りになる5つの原因

では金縛りが起こる原因は何なのでしょうか?
① 睡眠不足・生活リズムの乱れ
睡眠不足や生活リズムが乱れは、睡眠のリズムを崩してしまいがちです。
- 休みの日中に寝だめ
- 夜間、仕事の合間に仮眠
こういったときは金縛りが起こりやすくなります。
② 環境の変化や時差ボケ
旅行にいって環境が変わったり、海外旅行で時差ボケになったりすると金縛りにあいやすくなります。
身体は疲れていても脳が興奮しているため、スムーズに睡眠に入っていくことができないためです。
③ ストレスがある、精神的に不安定
心に強いストレスがかかると、不眠や過眠など睡眠バランスが崩れがちです。
精神的に不安定なときも、安定した睡眠を取ることができなくなり、金縛りにあいやすくなります。
金縛りを体験するのが思春期に多いのは、精神的に不安定になりやすく、身体と心の変化が大きい時期であることが原因と考えられます。
④ 睡眠の姿勢
寝具が重すぎたり、寝ているときにペットが上にのっていたりすると、リラックスして眠れなくなります。
とくに仰向けで寝ていると胸部への圧迫が大きくなり、金縛りが起きやすくなります。
⑤ ナルコレプシーの症状
ナルコレプシーという病気の症状である可能性があります。
ナルコレプシーになると、寝入り際に頻繁に金縛りにあいやすくなります。
また日中にすごい眠気に襲われ居眠りしてしまうようになります。
ナルコレプシーは睡眠障害の一種です。
この病気になると、入眠してすぐにレム睡眠に入ってしまうため、入眠時に金縛りが起こることが多くなります。
詳しくは 「ナルコレプシーの原因と症状」を参考にしてください。
金縛りの解き方
金縛りにあうと恐怖のあまり、一刻も早く金縛りを解きたいと身体を何とか動かそうとしますよね。
これは逆効果です。
金縛りを解くためには、まずはリラックスしなければなりません。
自分が金縛りであるということを自覚し、身体を無理矢理動かさずリラックスしてください。
深呼吸をするなどし、呼吸を整えるといいでしょう。
次につま先や指先などが少しでも動かせないか確認してください。
もし動くようであれば、一瞬でもいいので動かしてみましょう。
身体の一部を少しでも動かせると、脳がそれを理解して身体が目覚めます。
身体が目覚めれば普通に動かせるようになり、金縛りが解けていきます。
気にならなければ寝ちゃうべき
ただし、金縛りを解くために指先などを動かそうとし続けると、身体が疲労してしまいます。
もしリラックスした時点でまた眠りにつけそうであれば、そのまま寝てしまったほうが良いです。
5つの金縛り予防法

睡眠は身体と心の休息になくてはならないものです。
良い睡眠を取るためにも、できれば金縛りにはなりたくないですよね。
金縛りにならないためにはどうすればいいのでしょうか?
① 規則正しい生活をする
金縛りの予防には睡眠リズムを整えることが一番大切です。
夜更かしをしたり、昼過ぎまで寝ていたりすると睡眠バランスが崩れてしまいます。
休みの日であっても寝だめなどはせず、出来るだけ毎日同じ時間に就寝、起床をするようにしてください。
朝起きたら陽の光を浴びてしっかり朝食をとることも重要です。
② 良い睡眠を取れるように心がける
寝る前にスマホをいじったり、テレビを見たりすると脳が興奮してしまい眠りにつきにくくなります。
寝る前にはゆっくりお風呂に入ったり、好きなアロマなどを使ったり、身体と心をリラックスさせることが必要です。
またパジャマや寝間着はゆったりとしたものを着て、身体を締めつけないようにしましょう。
枕は自分に合ったものを使うなど、睡眠環境を整えることも効果的です。
③ 寝る前のカフェインやアルコールを控える
カフェインに覚醒作用があることは有名ですよね。
夜の摂取は控えるようにしましょう。
また、『寝酒』といって睡眠前にアルコールの接種を習慣化してしまうと、お酒を飲まないと眠れなくなってしまいます。
たしかにアルコールをとると眠りに入りやすくなります。
しかしそれは浅い眠りで、夜中に目が覚めてしまい、睡眠リズムが崩れてしまう原因です。
④ ストレスを溜めないようにする
ストレスがたまってしまうと身体が疲れていてもよく眠ることができません。
また睡眠不足がさらにストレスを増長させてしまいます。
ストレスの根源をすぐに絶つのは難しいかもしれません。
それでもできるだけ良い睡眠を取れるように生活習慣を整え、きちんと眠れるように意識しましょう。
それがストレス自体の軽減にもつながります。
⑤ 睡眠外来などを受診する
金縛りが頻繁に起こり睡眠がよく取れない場合は、ナルコレプシーなどの睡眠障害が疑われます。
ひどいとき場合は睡眠外来を受診し、専門医に相談してみましょう。
落ち着いて対応、長く繰り返すなら病院へ
金縛りは4割近くの人が体験します。
わたしが中学生のころ金縛りを体験したときは、耳鳴りがして急に身体が動かせなくなり、冷や汗が出るほど恐怖を感じました。
「はじめて霊体験をしてしまった……」
と思ったものです。
けれど金縛りは脳の勘違いなので、もし金縛りにあっても慌てずに対応するようにしてくださいね。
ただし、もし金縛りが繰り返し起こるようであれば、疲れがたまっているなど何らかの身体からのSOSである場合もあります。
生活習慣に気をつけ、睡眠リズムを整えるようにしましょう。
それでも続く場合は睡眠障害の危険性があります。
早めに睡眠外来などを受診するようにしてください。