妊婦の麻疹による死亡率は通常の6倍!? 赤ちゃんへの影響と予防方法、ワクチンについて

麻疹に感染したかも?と不安になる妊婦
妊婦が麻疹にかかった場合、通常の6倍まで死亡率が高まります。ワクチンを打つこともできないので、妊娠の希望がある場合は自前にワクチンを摂取しておくことが大切です。
医療の現場
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2016年8月24日、独立行政法人 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター(http://dcc-ncgm.jp/)から麻疹に関する注意喚起が出されました。

8月14日に千葉県で開催されたコンサートに参加された男性が麻疹と診断され、多くの方が麻疹に感染した可能性が危惧されています。

「自分はコンサートに行っていないから関係ない」

と考える方もいるかと思いますが、そんなことはありません。
赤ちゃんを身ごもっている方は特に注意が必要です。

【9/2追記】関西国際空港でも職員の方や関係者16名の集団感染が確認されました。

 

今回は、あまり身近じゃないけど怖い病気である麻疹と、妊娠との関係についてご紹介したいと思います。

そもそも麻疹(はしか・麻しん)って?

そもそも、麻疹とは何なんでしょうか。

麻疹とは

麻疹(measles)は感染症法に基づく5類感染症全数把握疾患である。
また、学校保健法に基づく第2種の感染症に 属し、登校基準としては、「発疹に伴う発熱が解熱した後3日を経過するまで出席停止とする」と述べられている。感染性は非常に高く、感受性のある人(免疫抗体を持たない人)が暴露を受けると90%以上が感染する。

引用元:麻疹とは(国立感染症研究所)

学生であれば、感染の事実がわかった時点で出席停止、発熱が収まってからも3日間は学校に行くことができなくなります。

しかも免疫がなければ90%以上が感染してしまうという、非常に強い感染力を持った病気です。

今回は、麻疹に感染した男性が大人数が集まるコンサートに参加していたことで、余計に感染の拡大が危惧されています。

麻疹には治療法が存在しない

やっかいなことに、麻疹そのものを治す根本的な治療方法が存在しません

インフルエンザなどと同様、高熱に対しては「解熱剤」、せきには「咳止め薬」など、対症療法をおこなうことになります。

身体の抵抗力で体内の菌をやっつけることになりますので、体力のない子どもや高齢者が特に発症しやすいといえます。

麻疹からの唯一の防衛手段、ワクチンについて

麻疹にはワクチンがあり、これによる予防が唯一の防衛手段です。

麻疹ワクチンの予防接種は1978年に任意での摂取が始まったのが最初です。
比較的歴史が浅いことを覚えておいてください。

ワクチンには有効期間がある

ワクチンによる免疫の持続期間は10年程度と考えられています。

引用元:東京都感染症情報センター 麻しんQ&A II ワクチン関連

ワクチンは現在のものでも10年しか効果がないと考えられています。

小学生の時に打っていたとしても、現在20歳以上の方であればもう効果は薄くなっていると考えていただきたいです。

今回の場合、麻疹に感染した男性がコンサートという大人数が集まる場所に行ったことが重要です。
非常に多くの方が感染したことが危惧されていますので、もし該当のコンサートに行った方などは、不安であれば症状がなくても一度医療機関に相談してみることをおすすめします。

妊婦は特に注意が必要

妊婦が感染した場合、死亡率が6倍以上

妊婦が麻疹にかかった場合、肺炎の発症は2.6倍、死亡率は6.4倍と高くなります。成人が麻疹にかかると子供に比べて重症化する事が知られていますが、妊婦では免疫能の低下のためにさらに重症化します。

大阪府立母子保健総合医療センター産科部長 末原 則幸(平成13年9月10日)

引用元:麻疹流行とその対策(公益社団法人 日本産婦人科医会)

妊婦は通常よりも抵抗力が低下しています。

ワクチンの効果が切れ、免疫なくなった妊婦が麻疹にかかると非常に重い症状が出ることがあるので特に注意が必要です。

感染した場合、赤ちゃんへの影響は?

麻疹と混同されがちな風疹という病気があります。
妊娠中に風疹になると、お腹の赤ちゃんに先天性の奇形が生じることがあります。

風疹と違い、麻疹の場合はお腹の赤ちゃんに先天性の奇形が生じる可能性は低いと言われています。

しかし

  1. 妊婦が麻疹にかかると非妊娠女性に比べて重症化しやすい。
  2. 妊婦が麻疹にかかると流早産しやすい
    3割が流早産し、しかも90%は母体発疹出現から2週以内に流早産になります
  3. 妊娠中に麻疹に罹患した場合、風疹のように先天奇形を生じる率は低い.
  4. 抗体のない母親から生まれた新生児が1・2歳までに罹患すると重症化することが多い。
  5. 1978年前後にうまれた人のワクチン接種率が低いことがわかっています。

大阪府立母子保健総合医療センター産科部長 末原 則幸(平成13年9月10日)

引用元:麻疹流行とその対策(公益社団法人 日本産婦人科医会)

ここにあるように、妊娠中に麻疹にかかると流産・早産の可能性が高まってしまうので注意が必要です。

体調に異変を感じたら、すぐに医師や助産師さんに相談してください。

妊娠中はワクチンを打てない

麻疹のワクチンは「生ワクチン」といわれ、毒性を弱めた麻疹の菌を体内に入れて麻疹にかかった状態を人工的につくることで免疫力をつけるものです。

弱めているとはいえ菌を体に入れるため、赤ちゃんへの影響を考慮して妊娠中はワクチンの接種はできません

ただし、妊婦がいても家族はワクチンを打つことができます。

麻しんおよび風しん予防接種では、接種を受けた人から周囲の人にワクチンウイルスが感染することはないと考えられるので、妊婦のいる家庭の家族が接種をしても心配はありません。

引用元:東京都感染症情報センター 麻しんQ&A II ワクチン関連
 

家庭内での流行を避けるためにも、家族に妊娠している女性がいる場合は積極的にワクチンを打つことをおすすめします。

授乳時にワクチンは打てるの?

授乳しているときにワクチンを打つと、ワクチン内のウイルスが母乳にでている可能性もあると考えられています(明確にはわかっていません)。

ただし麻疹は上気道感染(鼻腔などを通して感染すること)のため、唾液によって感染力を失うので赤ちゃんへの影響は無いとされています。

ただし、ワクチンの摂取を考える場合は医師によく相談してください。

麻疹にかかったことがあれば心配しなくていい

麻疹にかかったことがある方もいると思います。
そういった方は、ワクチンを打つ必要はありません

ですが、麻疹と思っていた病気が実は違う病気だったり、記憶違いだったりすることもあります。

その場合、当然免疫力はないのでワクチンを打たなければなりません。

母子手帳などで確認したり、免疫力の有無を医療機関で検査する予定がないのであれば、ワクチン接種を検討することをおすすめします。

麻疹にかかったことがある方がワクチンを打っても、何ら問題ありません。

妊娠前にワクチンを打つことが最も有効

麻疹は根本的な治療法がなく、感染力が非常に強い病気です。
予防するにもワクチンしか手段がありませんが、妊娠すると摂取することができません。

万が一妊娠中に麻疹に感染すると、通常よりも非常に重い症状が出る上、流産などのリスクも高まります。

一番いいのは、事前にワクチンを摂取しておくことです。

「いつか子どもを」
とお考えの方は、ぜひこの機会に麻疹のワクチンを受けてみてはいかがでしょうか。

予防接種と抗体検査はお住まいの自治体・保健所にて実施されています。

子供の頃に予防接種しても、大人になって抗体が弱まっていることもありますので、保健所のホームページ等でご確認してみてください。

 

医師のコメント

  • 横山 俊之
    妊娠は「子宮内で胎児(免疫学的非自己)を育てる」ことです。「妊娠継続」のため「母体が胎児に拒絶反応を起こさぬように免疫抑制状態に移行」し、「感染症に対する抵抗力」も低下します。 一方、麻疹は「ウイルスが白血球、特に『リンパ球』に感染し、急性期の血液白血球数が減少します。白血球には「既感染の病原体に対する免疫を担うリンパ球」も含まれ、「感染症に対する抵抗力が低下」します。結核菌に対する抵抗力(免疫)の目安である「ツベルクリン反応も陰性化」することがあります。このように、標的に『免疫担当細胞』が含まれる麻疹では「約4週間に渡って免疫抑制状態」となります。 麻疹の免疫は妊娠前に獲得して下さい!
    投稿日時:
  • 杉原 桂
    まずは、ご自身の母子手帳を押入れからだしてきてもらおう。 はしかになったかどうか、あるいはワクチンをうってあるか、確認しよう。
    投稿日時:
  • 石見 陽
    麻疹・水痘は、感染者(潜伏期間中の患者を含む)と接触後、72時間以内であれば、緊急予防接種が有効といわれています。抗体がある人が接種する必要はありませんが、抗体がすでにある人が予防接種を受けても、副反応が強く出ることはありません。 専門外なので引用にて。吉田まゆみ内科様のHPからです。妊婦の方は残念ながらワクチンは打てませんが、それ以外の方にご参考まで。 http://yoshida-mayumi.sphn.jp/article/13178887.html
    投稿日時:
  • 石川 陽平
    麻疹は海外では撲滅されている地域も多く、日本でも「排除状態」と昨年3月に認定されました。しかし、今回の記事のように、まだちらほらと見られます。麻疹は感染性が強いので、再び広まってしまうことはなんとしても避けなければいけません。 具体的には、10日程度の潜伏期ののち、身体に小さい皮疹が出てくることが特徴です。もし、発熱と身体に小さい皮疹が現れたら、まず医療機関に事前に連絡の上、受診されるようにしてください。
    投稿日時:
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