ストレスチェック制度は「効果なし」? 医師の6割が否定的意見

ストレスチェック制度は無意味?
医師の6割がストレスチェック制度の効果に否定的な意見を述べています。しかし、メンタルヘルスの問題に対する意識の高まりには寄与するだろうとする意見が多く、一定の価値がありそうです。わたしたち自身のメンタルヘルスに関して、普段から意識するきっかけになるといいですね。
メンタルの悩み
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みなさん、ストレス、感じていますか?

ネットワークやスマホなどの端末の進化が進み、今はどこでも・誰とでも簡単に連絡が取れる時代です。
それだけに、「いつも気が休まらない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省によると、平成27年の自殺者数は2万4025人で、前年より約6%減少しているものの、依然として2万人を超えている状況です。
また平成27年の自殺者のうち、うつ病を原因とする自殺者は5080人で、全体の2割強を占めています。
さらに職場の人間関係など、勤務問題が原因とされる自殺者は2159人いました。
これらのことからも、職場におけるメンタルヘルスの課題解決はすぐにでも改善すべきものであることは間違いありません

参考:自殺の統計:各年の状況 |厚生労働省

そこで平成27年12月から開始されたのが、ストレスチェック制度です。

これは50名以上の従業員を抱える会社に実施が義務付けられています。
2016年11月末までに初回を行うことが決められているので、社員が50人以上いる会社にいる方はほとんどの方がすでに一度ストレスチェックを受けているかと思います。
(もちろんわたしも昨年受けましたよ!)

ただ、この制度は「本当に効果があるのか?」といった検証も不十分なままに実施されたという指摘をよくされています。

そこで、メドピアの10万人以上いる医師会員にむけ、アンケート調査を実施しました。
その結果、4031人から回答を得ることが出来ましたので、今回はそれをご紹介したいと思います。

※ 本調査は2016年8月3日から同年8月9日にかけて、医師専用サイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて全診療科の医師を対象に行われました。

医師の6割は「効果なし」

ストレスチェック制度について、

  • かなり効果がある
  • どちらかと言えば効果がある
  • どちらかと言えば効果はない
  • まったく効果はない

のどれが当てはまるかを選んでもらった結果が下記の図1です。

図1_ストレスチェック制度はほんとうに効果はありますか?

「全く効果はない」と「どちらかと言えば効果はない」とを合わせると、なんと62%の医師がストレスチェック制度には効果がないと考えていることが分かりました。

ちなみに、図2に示す通り、心療内科もしくは精神科の医師に絞った回答のみを見ても、結果は全体とほぼ同様でした。
(今回の調査には、心療内科もしくは精神科を標榜する医師が377名含まれていました。)

図2_心療内科と精神科の医師のみでの結果

効果がないとする医師のコメント

それでは、医師はどういった意見を持って効果がないと考えているのでしょうか。
医師から届いたコメントをいくつかご紹介します。

  • 50代男性 総合診療医(産業医)
    現場のメンタルヘルスの状況を知っている者ならば、このような施策は出さなかったと考えます。検討研究班のメンツをみても、企業側の代表者のメンバーがほとんど入っていません。いかにも「官僚が机上で一生懸命考えました」といった印象です。この制度は時間と手間の無駄としか言えません。
  • 50代男性 一般内科医
    まだ数名しか面談した経験がありませんが、本当にうつ状態で悩んでいる人は、面談を申し出ると職場に周知されることを心配し、チェックの結果が高点数であっても申し出しません。申し出をした人の中には、日ごろの会社への不満や腹立ちを長時間のわたって話す人がいます。これらの訴えを聞くことはしていますが、本来のストレスチェックの趣旨と違うように思います。
  • 50代男性 心療内科医
    ストレスが多少なりとあるのは、人間として当たり前のことです。高ストレス者を医師に面談させたところで、その人がその後メンタル不調になるかどうかは専門家でも予測できません。ブラック企業の経営陣の責任を免責し、そのかわりに産業医に責任を負わせるなど、全く無意味な制度です。
  • 40代男性 一般内科医(産業医)
    ある企業の専属で産業医を行っています。実際、ストレスチェック後の面談も行いました。しかし面談時点では改善していたりと有効な部分が少ないです。また、職場へ不満がある人がハイリスクになる印象があり、ややメンタル不調と主旨がずれていると思います
  • 50代男性 心療内科医
    きちんと回答するはずがありません。本当にうつ症状のある大変な人はあえて良いようにチェックするし、会社に不要な怠け者・サボり魔に悪い傾向が出やすいです。

年齢が高いほど「効果がある」と考える医師の割合が高まる

このように医師の6割近くが「効果がない」と考えているストレスチェック制度ですが、回答した医師の年齢別に見てみると、高齢層になるほど「効果がある」と回答する医師の割合が高くなることが分かりました。

図3_年齢が高まるほど「効果あり」の回答が増える

「かなり効果がある」、「どちらかと言えば効果がある」と回答した医師の合計が、20代はたった34%であるのに対し、70代以上では50%と半数が「効果がある」と考えるようになります。
図2に示したように、年代が上がる毎に効果があるとこたえる割合が上がっていくことがわかります。

ここで、効果があるとする医師のコメントをご紹介します。

  • 60代男性 精神科医(産業医)
    このような仕組みを国が実施したことで、メンタルヘルスへの関心が薄い職員や管理職等々の意識を変えることはある程度できるかもしれません。私が産業医としてかかわっている事業所では、高ストレスと判定された職員からの医師との面談希望が予想よりもずっと多く、ストレスチェックの担当者がびっくりしています。
  • 50代男性 精神科医
    かなり効果があるはずです。セルフチェックで客観的にメンタルヘルスについて把握でき、それをもとに早めに産業医への相談もできます。それにより、うつなどを発症する前に対応できることもあるのではないかと思います。なにより、こういったことが周知されていくことが、メンタルヘルスの啓発、普及になると思います。
  • 60代男性 消化器外科
    ある程度の効果を認めると思います。労働者の昇進などに与えうる不利益を無くす努力も企業側でなされています。
  • 50代男性 循環器内科医(産業医)
    セルフチェック結果のコメント欄を分析し、面談しなくてもセルフケアができる方の方が多くいました。もちろん面談も必要ですが。医師に話すことで楽になったと言われています。
  • 40代男性 心療内科医(産業医)
    この制度はストレスチェック自体の効果ではなく、ストレスチェックを行うことでの本人自身や管理者に対する啓蒙を促す効果を期待できるものと認識しています。

数年間の実績を見なくては確定的に「効果がある」とは判断できないものの、現時点で無意味とは言えないのではないかとする意見が大勢を占めました。

またこの制度によって、ストレスチェックそのものよりも、メンタルヘルスに対する意識の高まりの効果が大きいとする医師が非常に多かったです。

まずはメンタルヘルスに気を配るようにすることから

残念ながら、今回の調査ではストレスチェック制度には効果がないとする医師が6割という結果になってしまいました。

しかし、効果の有無についての意見によらず、「メンタルヘルスへの意識の高まりには寄与するのではないか」とする声が非常に多く見られました。

メンタルヘルスの問題により、毎年多くの自殺者が出ていることは事実です。
わたしたち一人ひとりが、ストレスチェック制度を通して自分のメンタルの状態を意識していくことから始めることがまずは重要なのかもしれません。

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