治療を拒否されたらどうする? 医師2700人にアンケート調査

死生観に基づいて治療を拒否する患者がいる
8割近くの医師が治療を拒否する患者の担当をしたことがあると分かりました。医師や患者の家族から説明・説得は行いますが、最終的には患者本人の医師が尊重されることが多いようです。もし自分が病気になったら、医師の説明をよくきいて、家族ともよく話し合った上でどうするかを決める必要があります。
医療の現場
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突然ですが、あなたは医師の治療を拒否したことがありますか?

記憶の限りわたしはありませんが、「粉薬を拒否して錠剤にしてもらった」くらいであれば、医師の治療方針を断ったことがある方もいるのではないでしょうか。

しかし、もしそれががんなどの命にかかわる重大な病気であればどうでしょうか?
医師に「必要だ」といわれた治療を、拒否しますか?

わたしの父は肺がんで亡くなったのですが、末期になると入院を拒否して、通院による治療を受けることにしました。

このように、本人の生き方や考え方によって、命に関わる病であっても必要な治療を拒否する患者がいます。

今回は、2700名の医師が回答したアンケート調査を元に、治療拒否する患者について、医師が考えていることをご紹介したいと思います。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイト「MedPeer(https://medpeer.jp/)」にて2012年3月30日から同年4月5日にかけて行われ、2676名から回答をいただきました。

8割の医師が「治療拒否する患者」を経験

この調査は、「治療を拒否する患者さんを担当したことがあるか?」「また、拒否された場合はどのような対応を行っているか?」と質問をし、

1. 【担当したことがある】治療を受けるよう説得する
2. 【担当したことがある】家族を通して説得する
3. 【担当したことがある】本人の意思を尊重する
4. 【担当したことがない】治療を受けるよう説得する
5. 【担当したことがない】家族を通して説得する
6. 【担当したことがない】本人の意思を尊重する
7. その他

の中から、自身の経験と考えにもっとも近いものを選んでいただく形式で行われました。

この結果、まず治療を拒否する患者を担当したことがある医師は全体の約8割にのぼることがわかりました。

図1 治療を拒否する患者を担当したことがありますか?

それだけ、何かしらの理由で医師の治療を拒否する方がいるということですね。

また、担当した経験の有無ごとに、拒否された場合にどうするかをまとめたグラフが下記の図2です。

図2 治療を拒否されたらどうしますか?

実際の経験の有無を問わず、約半数の医師が「本人の意思を尊重する」と回答しました。

このアンケート調査には、多くの医師からいつにもまして熱のこもったコメントが届きましたので、回答別に一部をご紹介したいと思います。

「本人の意志を尊重する」と回答した医師のコメント

50代男性 アレルギー科医

研修医2年目の時、70代の女性を担当しました。
23年ほど前のことです。

偶然早期の胃癌が見つかり、当然、治癒も期待でき、十分説明して手術をお勧めしました。
ところが「手術は、いやだ」と泣いて訴えられました。
家族から説得しても、家族立ち会いのもと私が説得しても、耳を貸しません。
逆に家族から「手術のことでノイローゼになっているので手術はしないでほしい」と頼まれてしまいました。

その後転勤となってしまい、経過はわかりません。
現在であれば、丁寧に心療内科やカウンセリングを受診してもらい、手術を受け入れる可能性を探る方法もあるのかもしれません。

40代男性 麻酔科医

私は麻酔科医ですが、このような場面に遭遇する非主治医としての立場でコメントさせていただきます。

私の勤務する現在の病院では、外科医はやや手術をやりたがる傾向がうかがわれるせいか、家族に説得させることで、患者の意思よりも手術などの治療が優先されることが多々あります。

しかし「家族に納得させられたところで、果たして患者本人が幸せかどうか?」ということをいつも家族に言っております。

家族にとっては、いつまでも生きてほしいという気持ちを理解できなくはないのですが、患者にもプライドがあります。
そして死生観というものもあります。
痛い治療をし、様々な管を挿入されることが本当に幸せなのか。

アメリカでも働いたことがありますが、アメリカに比べ、日本は患者よりも患者の家族を重視する傾向があるような気がします。
例えば、癌の告知は、まずは家族に伝えてから、患者に伝える風潮があるのがその良い例ではないかと思います。

患者がはっきりと治療の拒否の意思を示す場合は、結果がどうあれ、患者自身の意思を尊重すべきだと私は考えます。

40代男性 一般内科医

何名か(治療拒否する患者さんを)担当した経験があります。
いずれも手術可能な早期の状態で発見されたにもかかわらず、外科的切除を拒否した方々です。
ご本人が病状を理解できないような場合(認知症など)は除いています。

きちんと全てを理解した上で拒否している場合には、周囲の人間(つまり家族)の理解が得られるかどうかだと思います。
ご本人に了承を得て、ご家族へも現状を説明しました。
その上で、ご本人とご家族で相談してもらい、本人の意志を尊重する形でよいのか、それとも翻意して手術を受けるのか、時間をかけてでも相談して頂いています。

その結果、周囲の人間も含めて手術をしないことに納得するのであれば、いかに治癒する見込みがある治療法があっても実施し得ないと思っています。
また、実際にそのまま経過をみている、あるいは化学療法のみを行っている方が現在もいます。

医師としてどこまで踏み込めるのか、毎回悩んでいます。
しかしご本人が病状を理解した上で主張している意志を、むげにはできないのではないでしょうか。

「家族を通して説得する」と回答した医師のコメント

50代男性 小児科医

基本的には、治療を受けるよう家族および本人に説明・説得します。
それでもやはり治療はしないという方もいます。
個別な対応にならざるを得ません。

理解できることもあれば、理解できず、公的機関へ対応依頼することもあります。

重要なのは、詳細な情報の提供と、その理解を深めていただくことであると思います。
回数を重ねることにより、誤解が解け、治療に積極的になっていただけると思います。
医療関係者以外の医学に関する知識不足は、否定できません。
それに対する対応策は医師側からも積極的な行動が必要です。

60代男性 一般内科医

このような患者さんとは何回も遭遇します。

本人とだけで処理すると後あとトラブルになりますので、必ず家族にも説明します。
家族の前でご本人からの意思を言ってもらいます。
家族は大方患者さんに対して怒りますが、話の中で本人の意向もわかりますのでだんだん落ち着いてきます。

わたしたち医療側としては、一番のおすすめのち療法を提示しているわけですが、ダメな場合は次善策を提示します。
患者本人とだけで話をせずに、第3者的な立場の人を入れるのが大切と思います。

40代男性 アレルギー科医

本人及び家族に、本当にしっかりとしたインフォームドコンセントを行わないと危険です。

本人がちゃんと理解しておっしゃっているならいいんですが、ワガママで言っている人も多いですから。
そういう人は、残念ながら後になって「やっぱり治療してくれ」ということが非常に多いです。

下手すると訴訟にだってなりかねません。

「治療を受けるよう説得する」と回答した医師のコメント

30代男性 精神科医

手術をすることとしないことを比較し、明らかに予後が変わる場合は、極力説得を試みます。
それでも拒否されるようなら断念します。

精神科特有の問題として難しいのは、本人の価値観・人生観で治療を拒否するというより、妄想に基づいて拒否される場合の方が多いことです。
これは私が精神保健指定医を申請するときの講習会でもシンポジウムのテーマになっていました。

このときは法曹関係者、厚労省の担当者などからの意見がありましたが、結局は「仮に手術拒否の理由が妄想に基づくものであり、家族が強く手術を望んだとしても、本人が拒否している以上はしない方がよい」という結論になったように記憶しています。

しかし、その理論でいくと、肺炎で抗生剤などの点滴を行うときでも、認知症やその他の精神疾患などにより、本人がその必要性を理解できずに拒否する場合は、例えば拘束を行ってまでしない方がよいとも考えられます。
実際にはそのようなケースの場合、診療科を問わず無理にでも点滴を行い、改善を図るケースが多いでしょう。

本人が必要性を理解できず、協力を得られない身体面での治療をどこまですべきなのか、あるいはしない方がよいのかを線引きするのは今でも悩みます。

50代男性 一般内科医

良好なQOLで、5年間も寿命が延びるのならば、本人を必死で説得します。

治療を拒否するのには、「もう長く生きたのでもう死んでもいい」という理由だけでなく、その様に考える何らかの理由が別に有るはずです。
その理由を本人自信も気付いていない可能性も含め、本人とじっくり話し合い、本人が「もういい」と考える心理的背景をじっくりと分析し、説得の材料として利用します。

家族からの説得も利用しますが、あくまでも本人の納得のいく形で、治療拒否の心理を翻したいです。

50代男性 腫瘍内科医

早期胃癌で、「手術すれば間違いなく根治度A、5年生存率98%だな」と思える患者さんがいました。

しかし“がん放置療法”等を提唱する医師の書籍を読み、「私は手術も化学療法も放射線治療も受けない」とおっしゃいました。

何度もなんども、毎回2時間以上、詳しく説明しました。
しかし、修正不能でした。
大変残念ですが、本人の希望通りにすることにしました。

AMA(against medical advice)をちゃんと書面で残すことはしませんでしたが、カルテに詳細を記載して終了しました。
緩和医療すら受けないということだったのですが、のレベルはまだまだ先になるので、そのうち戻って来るかもしれませんね。

最終的には自分で決めることになる

医師のコメントにもあるように、とてもむずかしい問題だと思います。
しかし、治療を受けるにしても拒否するにしても、最終的には自分の判断です。

わたしの父も最後は根治を諦め、緩和ケアのみを受けておりましたが、家族としては複雑な気持ちでした。
今となっては、苦しむこともなく息を引き取ることができたので、良かったのだと思えるのですが。

自分で決めるにしても、家族とよく話し合い、また医師からの説明をよくきいて、勉強してから判断したほうが後悔せずに済みそうです。

  • 60代男性 整形外科
    整形外科の一般的な疾病では、治療拒否をする患者さんは日常茶飯事です。別に命に別条ないので、本人の好きにさせます。後で泣きついてくる患者さんも少なくありませんが……。その時によく「私は素人だからよくわからなかった。なぜもっと説得してくれなかったか」と泣き言をいいます。おもわず「素人なら素人らしく、専門家の意見をちゃんと聞いて欲しい」と思ってしまいます

具体的にどんな治療をするのか、その治療を受けると受けないとでどんな違いが今後生まれるのか、他に治療法はないのかなど、専門家である医師とよく相談するようにしましょう。

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