妊娠中にインフルエンザや麻疹になったら何科に行くべき? 医師1500名にアンケート調査

感染症に罹患した妊婦
6割弱の医師が「産婦人科と内科で連携して対応すべき」と回答しました。しかし現実にはなかなか難しい病院も多いので、「妊婦のことは産婦人科で対応すべき」と考えている医師が多いようです。まずはいつもお世話になっている産婦人科に電話などで相談するのが良さそうです。
妊娠・妊娠前
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徐々に暖かく感じる日も増えてきましたが、どのようにお過ごしでしょうか。

インフルエンザ1〜2月はインフルエンザの話題も多かったですが、3月も後半になり、流行は落ち着いてきたように思えます。
今シーズンはインフルエンザになることもなく、ホッとしている方も多いのではないでしょうか。

ところで、昨年8月、麻疹に感染した男性が千葉県でおこなわれた音楽イベントに参加していた事がわかり、多くの方への麻疹感染が危惧されるという事件が起こりました。
イシコメでもこの件に関連し、赤ちゃんのためにも、妊娠を望んでいる方は事前に麻疹のワクチンを打つことをおすすめする記事を公開いたしました。

参考:妊婦の麻疹による死亡率は通常の6倍!? 赤ちゃんへの影響と予防方法、ワクチンについて

インフルエンザにも麻疹にもワクチンが存在し、妊娠前に摂取することが推奨されます。
しかし、急に妊娠がわかって、ワクチンを打つことが出来なかった場合はどうでしょうか。
万が一、妊娠中にインフルエンザや麻疹に感染してしまったらどうすれば良いのでしょうか?

もし妊娠中にインフルエンザや麻疹になってしまった場合、はっきり言って自分でできることはありませ。
従って速やかに医療機関を受診する必要があります。

でも、どの病院に行けばいいんでしょう?
いつも言っている産婦人科?
それとも麻疹を専門にしている内科?
それとももっと大きい病院を受診するべき?

今回は以前メドピアで行い、1500名の医師が回答をした「麻疹やインフルエンザに罹患した妊婦は内科・産婦人科のどちらが診るべきか?」のアンケート調査の結果をご紹介したいと思います。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイト「MedPeer(https://medpeer.jp/)」にて2011年2月21日から同年3月6日にかけて行われ、1523名から回答をいただきました。

6割弱が「内科と産婦人科がともに対応するべき」

この調査は

1. 内科がみるべき
2. 産婦人科がみるべき
3. 両科がともに対応できる体制であるべき
4. その他

の選択肢の中から、自身の考えに最も近いものを選んでいただく形式で行われました。
その結果をまとめたものが下記の図1です。

図1 妊婦の感染症は産婦人科と内科のどっちが診るべき?

こちらを見ていただければ分かる通り、医師の6割弱が「内科と産婦人科の両方がともに対応できる大切であるべき」と回答しました。

次に多かったのが「産婦人科が診るべき」という回答で、全体の3割を占めました。

多くの医師が、妊婦がインフルエンザや麻疹を罹患した際は内科と産婦人科が連携して対応に当たるべきと考えているようですね。
次点で、普段から妊婦の診察を担当し、妊娠の状態も把握している産婦人科が対応すべきというところでしょうか。

産婦人科医「内科が診るべき」

しかし、両方の科が対応すべきという点は共通しているものの、産婦人科の医師は「内科が診るべき」と考える割合が高いことが分かりました。

図2 産婦人科医の回答

上記の図2は、今回のアンケート調査に協力してくれた医師のうち産婦人科を標榜する医師113名の回答の内訳をまとめたものです。

これを見てみると、「ともに対応すべき」とする医師の割合は共通していますが、「内科が診るべき」と「産婦人科が診るべき」との回答した医師の割合がほぼ反転していることがわかります。
つまり、産婦人科医の中では「内科が診るべき」と考えている方が多いということですね。

妊婦の治療は常に胎児への影響を考える必要がある

通常の治療と異なり、妊婦の治療は薬にしてもなんにしても、常に胎児への影響を考えて行う必要があります。
産婦人科医が対応にあたるべきとする医師は、その点を理由とすることが多いようです。

  • 50代男性 一般内科医
    妊娠してから最初の12週間は胎児の体が形成されていく期間です。この間の投薬や感染は、遺伝子レベルも含め、奇形児を生じる可能性があります。その後は基本的に奇形の問題は無くなりますが、流産・早産の問題が残ります。
    つまり一度妊婦となれば、胎児への影響を考えずに医療を行うことは考えられません。ですから、母体・胎児について専門知識を有する産科医が当然精通すべきです。
    必要に応じ感染症専門医(内科医)に相談する形は考えられますが、基本は産科医でしょう。また感染症専門医以外の内科医も大方の知識を持つように努力したい所です。
  • 40代女性 一般内科医
    インフルエンザや麻疹に限らず、妊婦の疾患については産科で診てもらえれば…と思います。
    薬の本を見ると、「(妊婦には)原則禁止」や「(妊婦への使用の)データなし」と書いてあるものがかなり多いです。となると内科では大変処方に困ります。
    しかし産科の先生は経験的に週数に応じて使える薬をご存知なので、産科で処方してもらう方が良いかと思います。胎児への影響なども患者さんに説明を求められた場合、内科では対応が困難です。
  • 50代男性 一般内科医
    妊婦に対する治療は内科医も婦人科医も同様にできるかもしれません。
    しかし、胎児に対する治療、介入は内科医では絶対に不可能ですし、全く手が出せません。妊婦に治療をするということは大なり小なり胎児にも影響が出るので、原則内科医が手を出すものではないでしょう。
    婦人科から依頼があった場合に責任を持てる範囲内で介入すべきです。

内科系疾患であり、他の妊婦への感染リスクも最小限にすべき

一方、「内科が診るべき」と回答した医師はどのように考えているのでしょうか。

  • 40代女性 産婦人科医
    隔離部屋を準備している所なら別ですが、他のさまざまな週数の妊婦と接する可能性があるので危険です。特に敏感な妊娠初期の妊婦にとっては、感染症は絶対に避けたいものです。
    確かに患者は妊婦ですが、診断・治療に関しては内科でしてほしいのが本音です。使用する薬については、問い合わせてもらえれば対応する婦人科の先生は多いと思います。感染したことによる胎児への影響に関する相談は、周囲への感染のリスクがなくなってからかかりつけの産婦人科受診でいいと考えます。
  • 50代女性 産婦人科医
    感染症患者が無防備に妊産婦と同じ待合室に入ってこられては困ります。近年は教育しても理解してくれない親が多くなってきています。
    ほとんどのインフルエンザ感染は妊産婦や胎児に異常は起こしません。通常の場合は治癒してからの受診で問題ありません。
    妊産婦というだけで風邪でも何でも産婦人科に紹介してくる内科医師が多すぎます。治ってから受診させてください!!
  • 50代男性 一般内科医
    (麻疹もインフルエンザも)内科系の疾患ですし、内科が治療するべきと考えます。インフルエンザについては、 タミフルの使用は問題ないとされております。また、産科では他の妊婦への感染の広がりなどの懸念もあるので、産科受診をするのは不適切であり、内科医が治療すべきであると考えます。

麻疹やインフルエンザを始めとする感染症は、基本的に内科で取り扱う疾患です。
また、産婦人科医院は待合室に他の妊婦さんがいることも多く、感染拡大のリスクもあります。

内科が診るべきとする医師は、こういった点を理由としていました。

両科がともに対応すべき理由

最後に、今回のアンケート結果の過半数を占めた「両科がともに対応できる環境であるべき」と回答した医師のコメントを見ていきましょう。

  • 50代男性 一般内科医
    妊婦の感染症は、母体保護・胎児保護の両面から、最も的確と考えられる対処を行わなければなりません。ところが、産婦人科医は妊婦・胎児の知識に詳しいものの感染症やその治療の知識が不十分。逆に、内科医は感染症やその治療に詳しくても、妊婦・胎児の管理の知識が不十分。
    感染症にかかった妊娠週数、かかった感染症の種類等により、かなり対応が変わってきます。両科でディスカッションして、その都度、ベストであると考えられる方法を決定していくしかないのではないだろうか?
  • 60代女性 産婦人科医
    産科には健康な妊婦が多くいますので、院内感染があったらパニックが起こります。感染者を一般から隔離するようなシステムはまずありません。
    内科はインフルエンザをはじめ、感染者の扱いには慣れているはずです。待合室に健康な方も少ないでしょう。
    従って内科優先と考えますが、感染症が重症な場合は胎児に影響がありますので、産科医の対応も必要です。両方の診療科で併診するべきと思います。
  • 60代男性 一般内科医
    胎児のことは内科には分かりませんし、産婦人科は、感染症には対応できません。やはり、両科が、患者のために情報交換して全力で対処すべきでしょう。
    患者の側からみれば、医者は一致団結して患者を守ってくれる者ですので、内科医・産婦人科医が連携して診療していくべきだと思います。
    やはり、専門領域の違いによる対応の難しさを内科・産婦人科の連携でカバーするべきとする意見が多くみられました。

まずはいつも行ってる産婦人科に電話相談

ご覧になった通り、感染症にかかった妊婦の治療に関しては、医師の間でも意見がわかれるところです。
従って、「こうすれば絶対大丈夫!」という方法はないのかもしれません。

しかし、お腹の赤ちゃんのためにも、放置するわけにはいきません。
インフルエンザや麻疹などの感染症が疑われる場合は、まずはいつもお世話になっている産婦人科に相談してみましょう。

ただしいきなり産婦人科に行ってしまうと、他の妊婦さんにも感染が拡大してしまう危険がありますので、必ず事前に電話などで連絡してみるようにしましょう。

そのうえで、いつもの病院で見てもらえるようであれば、受診するタイミングを教えてくれると思います。
感染を拡大させないために「裏口から入って」などの指示もあるかもしれません。

いつもの産婦人科病院では対応できない場合は、総合病院など、他の医療機関に紹介してもらえるようお願いするといいと思います。

病気になると赤ちゃんへの影響が心配で気が気じゃないと思いますが、赤ちゃんを守るためにも、冷静な行動を心がけてください。

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