「より優先すべき認知症対策は?」 医師3200人にきいてみた結果

認知症患者とそれを支える家族
認知症は現在の医療では治すことが出来ません。だからこそ、徐々に症状が進行する患者を支える必要があります。その役割を担うことの多い患者家族を支えるための仕組みづくりが重要と考える医師が多いようです。
医療の現場
イシコメ運営事務局

先日、認知症患者の運転に関する記事を公開しました。

認知症は症状の進行がゆっくりと進むため、「どの時点から認知症と診断するか」「どの時点から運転を禁止すべきか」といった専門医であっても難しい判断が必要になります。

車の運転は患者の住んでいる地域によっては移動の生命線になる場合もあり、QOLと直結しています。
従って、ただ運転を禁止するのではなく、運転中止後の生活を支えるための仕組みづくりが重要です。

そんな仕組みをつくるためにはどんな対策が必要になるのでしょうか。
今回は、より優先すべき認知症対策について医師3200名のアンケート調査からわかったことをご紹介します。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイト「MedPeer(https://medpeer.jp/)」にて2013年7月29日から同年8月4日にかけて行われ、3228名から回答をいただきました。

半数の医師「医療・介護の包括的なサービス体制が必要」

この調査は「今後の認知症対策として寄り優先して取り組まねばならない対策は何か?」と質問し、

1. 地域での生活を支える医療サービスの構築
2. 地域での生活を支える介護サービスの構築
3. 地域での日常生活・家族の支援の強化
4. かかりつけ医・訪問看護師・ケアマネージャー等の連携による包括的な医療・介護サービスの体制作り
5. その他

の中から自身の考えにもっとも近いものを選んでもらう形式で行われました。
その結果をまとめたのが下記の図1です。

図1 認知症対策で優先すべきものは?

結果、「かかりつけ医・訪問看護師・ケアマネージャー等の連携による包括的な医療・介護サービスの体制作り」という回答が最も多くなりました。
ここから、半数の医師が「介護と医療が連携したサービスの体制強化が重要」と考えていることが分かります。

ちなみに、認知症患者の診療に当たることの多い精神科・老年内科・神経内科の医師の回答に絞ってみても、回答の割合はほぼ同じでした。

図2 認知症患者をよく診る診療科の医師の回答
  • 40第男性 一般内科医
    とにかく家族に抱え込ませないことが重要です。また、逆に施設に押し付けてもいけません。認知症患者の介護に関わる人間を多くしつつも、「主人公は常に患者さんとご家族であるということ」「私たちはそのサポート役であるということ」を忘れずに立ち回る必要があります。患者家族は大変なストレスにさらされます。家族が逃げたくなった時。一時的な逃げ場を用意することが肝要です。
  • 50代男性 老年内科医
    認知症患者のケアに医療と福祉の取り組みは欠かせません。(最近の流れの通り)認知症患者のケアを病院や施設から、在宅にシフトする事に反対ではありませんが、在宅では施設より大きな手間がかかる事は事実です。介護を家族の負担に委ねるような、時代が逆行する事があってはいけないと思います。
  • 50代男性 精神科医
    在宅介護では介護の主体が家族になります。その結果、患者本人だけでなく、疲弊した家族までもが精神科に投げ出されているのが現状です。従って、家族の支援が必須となります。その為には医師を中心とし、医療・介護の連携が重要です。精神科病院に患者を死ぬまで入院させる、なんてことのみでは成立しません。
  • 50代男性 感染症科医
    認知症対策は、医療、介護サービス、家族の支援、いずれの単独でも対処不可能です。これらすべてが包括的に1つのグループで対応する必要があります。認知症の早期発見のためにも、地域を挙げての包括的な対応が求められるでしょう。

「医療と介護が連携した包括的サービスが必要」とした医師の中には、これらのコメントにあるように、患者と家族を支える仕組みづくりには医療・介護サービスの連携必要とする意見が多くみられました。

「医療に出来ることは少ない」

全体の2割を占めた、「介護サービスの充実が重要」と回答した医師はどのように考えているのでしょうか。

  • 50代男性 一般内科医
    現在の医療では、たとえ専門医が診ても、残念なことに認知症を治すことはできません。従って結局は(恐らく困難ですが)良い治療法が開発されるまでは、患者と家族の生活を支えるしかありません。そうなると医療に出来ることは限定的で、ケアの問題になり、私達医療者よりも介護に従事する方々のサポートが重要になってきます。
  • 50代男性 病理医
    認知症の介護は家族の負担が非常に大きく、共倒れになることもあると内科医をしている妻から聞かされました。(選択肢にある項目は)いずれも重要ですが、限られた資金などから考えると最も優先すべきは介護サービスかと思いました。
  • 50代男性 一般内科医
    認知症患者の介護負担が増えると、家族の生活自体も破たんしてしまう可能性があります。家族の介護の負担軽減を重点に置いた介護サービスの構築が最優先です。この点において私達医療者ができることは限られますので、医療サービスの充実はその後でしょう。

家族のサポートが最優先であるとし、その点で医療が出来ることは限定的だとする意見が目立ちました。
まずは介護サービスを充実させて、家族の負担を軽減し、支えることが最優先であると考えているようです。

「なにより家族の支援が最優先」

「地域での日常生活・家族の支援の強化」が重要と回答した医師は、患者の介護は家族が行うことを基本とし、そのかわりそのサポートを強化するべきという意見が多かったです。

  • 50代男性 精神科医
    認知症の患者さんにとって、住み慣れた環境から離れた施設での生活は大きな苦痛であり、認知症増悪の原因にもなりうると考えます。ですので、なるべく自宅での生活の維持ができるように、家族中心の介護と、それを支える仕組みづくりが必要ではないでしょうか。
  • 40代男性 一般外科医
    何でも医療の責任にすると医療費がかさんで大変です。自治会内で見守りなどできないか、もしくは子供が責任を持ってほしいです。医療や介護に丸投げするのは必ずしもいいこととは言えないと(個人的に)思います。
  • 70代男性 一般内科医
    認知症患者は永年慣れ親しんだ家族、つれ合いや子供、孫と暮らすのが一番安定し、満足しています。この家族を皆で支えることが重要ではないでしょうか。

共通して「家族の支援が最重要」

その意見にも共通していたのが「患者家族の支援が最重要」としている点です。

残念なことに今の医療では、たとえ早期発見したとしても認知症を完全に治癒することは出来ません。
従って、症状が徐々に進行していく認知症患者をどのように支えるのか、またその役割を担うことの多い患者家族のサポートをいかに行うのかが重要なのでしょう。

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