精神科・心療内科医は、新型うつ病をどう考えている?

新型うつ病って病気なの?
7割弱の医師が、新型うつ病は増えていると回答しました。また、8割の医師が、新型うつ病の診断は「難しい」「やや難しい」と回答しましたが、一方で、4割弱の医師が、そもそも「新型うつ病は病気ではない」と回答していました。今回、新型うつ病について色々な医師の意見を見ることができましたが、意見は分かれていて、はっきりこれという結論は言えなさそうです。
うつ病・躁鬱
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新型うつ病という言葉を耳にしたことはありませんか?
最近はテレビなどでも話題になることがあるので、何となく聞き覚えがある方は多いと思います。

新型うつ病(しんがたうつびょう)、あるいは、現代型うつ病(げんだいがたうつびょう)とは、従前からの典型的なうつ病とは異なる特徴を持つものの総称であり、正式な用語でもないが意味が独り歩きし、専門家の間でも一致した見解が得られていない。

引用元:新型うつ病 - Wikipedia

上記はウィキペディアからの引用です。
また、とある医療機関のWEBサイトでは下記の通り説明されています。

伝統的な従来のうつ病とは異なり、「好きなことをする時だけ元気になる」「自責感に乏しく他罰的」などの症状が特徴的な「新型うつ」という言葉が、マスメディアの影響により、広く社会に知られるようになりました。しかし、「新型うつ」の名称や定義について学術的な検討は十分になされておらず、その対応については混乱がみられています。

引用:同友会メディカルニュース 2015年4月号 うつ病について

これまでのうつ病の定義に当てはまらないため、「新型」と呼ばれるようです。
しかし学術的な検討がまだ十分ではなく、医学的知見の裏打ちもないため、医師によっても見解が異なります。

わたしたちが目にするテレビなどの報道では、新型うつ病が最近増えているような印象を受けますよね。
「やる気がない若者の病気」「現代病」などと言われているようですが、「そもそも病気なのか?」「ただの甘えじゃないのか?」といった議論もまだされているようです。

今回は、そんな色々と議論が巻き起こっている新型うつ病について、現場の精神科・心療内科医200人にアンケート調査を行いました。

「新型うつ病が増えているのか?」
「診断の難易度はどうか?」
「そもそも新型うつ病は病気だと思うか?」
など、新型うつ病についての考えを聞いてみました。

※ 本調査は医師専用コミュニティサイトMedPeer(https://medpeer.jp/)にて、2017年5月9日〜5月10日にかけて行われ、精神科・心療内科医210名から回答を頂きました。

「新型うつ病は病気」が6割

「新型うつ病はただの甘えだ!」という意見を見かけることもありますが、医師は新型うつ病を病気として認識しているのでしょうか?

図1 新型うつ病は病気か?

  • 40代女性 心療内科「病気である」
    病院に来ないといけない状態になる以上は、病気として扱うべきだと思います。ただし、普通の病気とは少し異なり、本人の自覚や努力がなければ治っていかないものであることも確かです。
  • 40代男性 精神科「病気である」
    少なくとも本人や周囲の生活に支障を来し、診療で一定の効果は得られる以上、病気であるか否かはともかく、病的であるとはして良いと思います。
  • 30代男性 精神科「病気である」
    新型うつ病と診断されているもののなかには、本当のうつ病であるものと適応障害であるものと病気ではないものが混ざっていると思われます。
  • 50代男性 精神科「病気ではない」
    嫌なことがあって落ち込んだり、身体症状化しているだけなので、病院を受診しなくても環境が変化すれば改善しますので、病気ではないと思います。
  • 40代男性 精神科「病気ではない」
    忍耐やストレス耐性、発想の転換ができないといった現代における弊害であり、病気や疾患ではないです。

「新型うつ病は病気である」とする回答が6割をしめました。
逆に言えば、精神科・心療内科の医師の4割は「新型うつ病は病気ではない」と考えているということですね。

「新型うつ病は病気」とする医師が多いという結果になりましたが、意見として割れている印象を受けます。

7割弱の医師が、新型うつ病は増えていると回答

病気かどうかは意見が分かれていましたが、いわゆる新型うつ病の症状を訴える患者さんは増えているのでしょうか?

図2 新型うつ病は増えているか?
  • 40代男性 心療内科「増えている」
    休職すると改善するが復職すると増悪するうつを時折見かけます。職場環境の改善を図ってもダメな場合は新型うつと判断しています。
  • 50代男性 精神科「増えている」
    仕事が億劫だとの主訴で来院されたのですが、休職中に恋人とディズニーランドに行って、お土産を買ってきた患者さんがいました。
  • 50代女性 精神科「増えている」
    従来のうつ病ではよく見られたのですが、不眠、焦燥、自罰的思考傾向はみられず、やる気のなさ、疲れやすさが目立ちます。
  • 60代男性 心療内科「増えている」
    話題になっているからなのか、こちらがその目で見てしまうのか、原因はわかりませんが、増えていると感じます。
  • 40代男性 精神科「増えている」
    月曜日になると調子を崩し会社を休んでしまいやすく、休日はふつうに趣味・遊びを楽しめるようです。

「増えている」と回答した医師からは、「従来のうつ病とは違う」「休日や休職中は普通に楽しめる」「やる気がなく、疲れやすいと」いった新型うつ病の特徴に関するコメントが多く届きました。

一方で、「増えていない」と答えた医師はどのように考えているのでしょうか?

  • 20代男性 精神科「増えていない」
    そもそも新型うつという言葉自体がマスコミによって作られたものであり、非定型うつとしても当地域では明らかには増えていません。
  • 40代男性 精神科「増えていない」
    一時期増加している印象でしたが、最近はあまり変わっていない印象です。
  • 40代男性 精神科「増えていない」
    昔からいる適応障害をこのような病名で呼んでいるだけで患者自体は増えていません。医療にかかりやすくなったので、見かけ上増えているかもしれないですが。
  • 60代男性 精神科「増えていない」
    うつ病全体の症状が多彩となり、定型例は減少しているように感じます。

「増えていない」と回答した医師は「新型うつ病は適応障害のことである」「非定型うつのことである」といったコメントをする方が多く、意見が分かれている印象でした。

さて、そんな新型うつ病ですが、診断をつけることは難しいのでしょうか?

8割の医師が、新型うつ病の診断は「難しい」「やや難しい」

図3 新型うつ病の診断の難易度
  • 50代男性 精神科「やや難しい」
    新型うつ病と診断名をつけて患者さんに説明したことは皆無です。だから、選択肢を選ぶのは難しかったのですが、新型うつ病の診断基準自体がないものと考えるので、そういった意味で「やや難しい」を選択してみました。
  • 20代男性 精神科「やや難しい」
    抑うつ症状自体は合致することが多いのですが、操作的には抑うつエピソードには合致せず、あっても軽症のうつ病もしくは非定型うつになります。
  • 40代男性 精神科「難しい」
    新型うつ病というより適応障害と診断したほうが適切な方が多かったです。治療に乗りにくく、うまく適応できなかった方もいました。
  • 60代男性 精神科「難しい」
    自分からは積極的に新型うつ病とは言わないようにしております。言うときにはいわゆる新型うつ病と言います
  • 60代男性 心療内科「やや易しい」
    まじめで「自責の念」が有る方は本来のうつ病で、「自責の念」が無い方が新型うつ病だと判断しています。
  • 50代男性 精神科「易しい」
    人間関係で悩む、仕事が合わないなど症状出現の契機となる環境要因がはっきりしているので診断は簡単です。

アンケートでは、新型うつ病の診断は難しい、やや難しいを選択した医師が8割にものぼり、「(新型うつ病には)診断基準がない」「新型うつ病以外にも考えられる病気が多くあり断定できない」「共感することが難しい」などがありました。

新型うつ病は、医師にとっても難しい病気

半分以上の医師が病気だと考えているものの、まだまだ意見は割れている状態です。
しかも医師の8割は新型うつ病の診断を「難しい」と考えています。

そんな新型うつ病ですが、「増えている」と感じている医師が7割もいます。

医師の中でも意見がまとまっていないので、「新型うつ病は〜〜な病気で、治療法は〜〜です!」といった明確なアドバイスはなかなか難しいです。
ですので、医師にとっても扱いが難しい病気とも言えるのではないでしょうか。

しかし新型うつ病に悩む方が増えているのは間違いないようです。
もし心当たりがあるようでしたら、まずはお近くに医療機関に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか?
 

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